男ひとり旅の美学

33の国と地域、南極を含む七大陸を踏破! 海外旅行歴28回の「旅の恥は書き捨て」です。愛車BMW M3と読書感想文も。

アンヌ・カペスタン。離婚したばかりの37歳はパリ司法警察の凄腕女性警視正……だった。左遷された先はデスクすらない古ぼけたアパルトマンの一フロア。自らを筆頭に新しく組織されたばかりの「特別捜査班」は、まともに出勤する部下を片手で数えるだけの問題児の吹き溜まり。それでも義務感は頭をもたげ、廃棄された事件の段ボール箱から、彼女たちは未解決の二つの殺人事件を見つけ出す。
それは未解決の強盗殺人事件なのか? 故意の迷宮入り事件なのか?
第26章のラストで二つの事件が接触し、第28章で一気に加速する様子はゾクゾクする。そして流れるように収束する終盤は、意外な人物にフォーカスが当たり……。
・まぁ、これだけ個性的な人物を集めたものだと感心するような、とんがったメンバーたち。でも腕は確か。だから掃きだめに寄せられたのかも、と思わせて……。なるほど、フランスでベストセラーになっただけのことはある。
・作家兼警部は、なるほど、煙たがれるだろう。彼女のしぐさも言葉尻も、そして愛犬も、楽しくて良い感じだ。死神と恐れられた男も、カペスタンと組むことで徐々に変わる様子がほほえましい。
・第42章のカーチェイス(?)はなかなか。パリの中心街でこれをやられたら始末書ものか、あるいは勲章ものか……。
・事件解決後のどんちゃん騒ぎもまた楽し。犬の思いは、パーティ参加者の思いでもあるのか。

最終章。「彼」の涙は、その息子にどう映ったのだろうか。犯罪者であっても理由と理性と愛は確かにそこにある。新しい人生への道があるなら、それはどんな色とかたちを示すのだろうか。その道が彼に与えられることを願って、本書を閉じた。
続編も発売されるようで、実に楽しみだ。

POULETS GRILLES
パリ警視庁迷宮捜査班
著者:SOPHIE HENAFF、山本智子・川口明百美(訳)、早川書房・2019年5月発行
2020年9月6日読了
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猛々しく暑い2020年の夏、城崎温泉と城崎マリンワールドへ出向いてきた。
旅先ではひとりの外国人とも遭遇しなかったが、こんなのは初めてだ。

【参考データ】
宿泊先:三國屋(1泊)

■2020年8月11日(火)神戸から出石を経由し、城崎温泉へ

今回はマイカーでの旅行となる。8時に自宅を出発。お盆だからか、第二神明道路、加古川バイパス、姫路バイパスは結構混んでいる。播但有料道路に入り、市川サービスエリアで小休止。アメリカンドッグを食す。

第一の目的地、出石には10時50分に到着。大手前駐車場(一日500円)に駐車し、大手前通りを少し歩いてみる。
出石皿そばのお店が多いが、お盆の時期だけあって休業しているところも。
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出石のシンボル、辰鼓楼。
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引き返して。出石城跡へ。それにしても暑い。「豊岡37℃」は伊達じゃない。
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出石永楽館へ。
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この時代がかったムードが良いなぁ。
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昼食は「手打ち出石皿そば 玄」に入店。結構待たされたりする。
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この少量でこの価格設定は……(どこの店も同じだったりする。)

■城崎温泉 三国屋

暑いさなかを再出発。車の中は快適だ。

播但道路、を経由して14時30分に三国屋へ到着。裏面の駐車場へ。このあたりの道路は極めて狭いので運転には中止しないと。
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小休止して、さぁ、温泉街を歩いてみよう。三國屋はJR駅に近いが、その分、中心街までは少し歩くことになる。
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有名な一の湯だ。
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裏道を歩こう。少し雨が降ってきた。
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城崎文芸館へ入る。涼しくて良い。
ここは志賀直哉はじめ、城崎ゆかりの作家・著名人の城崎とのかかわりとその足跡を追う博物館だ。城崎温泉の紹介にも力が入っている。
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大正時代の城崎。当然、ロープウェーなんてものもない。
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旅館でもらったお土産クーポン券(4,000円分)を使い切り、三國屋へ戻ります。
夕食を但馬ビールとともに楽しみます。但馬牛ステーキがジューシー。
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宿内の温泉は貸し切りだから、独り占め。コロナの時代にはうれしいです。

■2020年8月12日(水)城崎マリンワールドへ

翌日は快晴。旅行には素晴らしい天候に恵まれた。
朝食はちょうどよい分量だ。
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チェックアウトの際に「GoToトラベルキャンペーンの」宿泊証明書をもらえた。思わぬ嬉しさに小躍りです。

ロープウェーに乗って大師山の山頂へ。朝いちばんだから空いていて良かった。(11時を超えるとダダ込みになる。)
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カフェで小休止。
山頂からは城崎市街を見下ろせる。
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11時に下山。そして、城崎マリンワールドへ。
駐車場が……遠い……。(700円)
あらかじめ入館予約しておいたので、スムーズに入館できた。入場料2600円はさて、安いか高いか。
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南極訪問以来、アザラシは僕のお気に入りです。
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それにしても、水槽の中の魚群の撮影は難しいなぁ。
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但馬海岸。
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イルカたちのショーは楽しめました。
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よくなついているなぁ。
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ペンギンの散歩は、数が少ない。
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う~ん。楽しめたぞ。愛車M3もご機嫌です。
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16時20分に城崎マリンワールドを出発し、朝来サービスエリア、明石サービスエリアで休憩・食事しながら20時40分に無事に帰宅できました。

車での旅行もまた楽し。

今年はコロナ・ウィルスのせいで海外旅行に行けないし、飛行機に乗るのもイヤだし、近場をうろつくことにしました。

最後まで拙文にお付き合いくださり、ありがとうございました。

単焦点レンズCARL ZEISS Batis 2/40CFを購入しました。
SONY α7RⅣへの装着感も良い感じ。そして軽い!

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神戸・六甲山で試写。きめ細かな描写に満足です。
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ああ、はやく大手を振って遠くへの旅行に行きたいなぁ。

クラスの軟派の女王クレオパトラこと相庭陽子、硬派の大将である佐伯一枝、主人公は個人主義者の弓削牧子。とある東京の女学生たちの日常、ちょっとした冒険と心のやり取りを同時代的に描いた吉屋信子の昭和七年発表の作品。当時の女学生の言葉遣いや時代背景も新鮮にうつる。
・何でもない一枝とのノートの貸し借りに端を発し、お誕生日会への招待、夏の水泳学校、秋の横浜冒険旅行、と派手な陽子に振り回される牧子。こころのどこかで現状を打破したい、との気持ちを抑えての行動だが、残された弟の気持ちに気づくこともない。
・謹厳な父から母亡き後の自分の宿命を告げられた牧子は、心の中でイヤだと叫んでしまう(p155)。「教育的」でない、こういった描写が当時の読者の共感を呼んだんだろうな。
・夏の終わりに大切な母を亡くし、自暴自棄になって新学期を迎えた牧子は、陽子の誘いに乗ってしまう。しかし陽子はモダンガールはだしの活発な娘だな。赤バイ(昭和11年より前の白バイ)との夜のカーチェイスなんて、親が知ったらたまげるだろうに。それにしても戦前の横浜と神戸は、別格の国際港湾都市だったことが物語の端々からみえてくる。
・弟の失踪事件を受けての家族の和解、一枝姉妹との邂逅、そして「魔法の輪」の外へ。クライマックス『家の灯』は実に心温まるエピソードだ。湘南の浜辺でのラストシーンも実に良い。同じ勿忘草の香りでも、心情によってこうまで変化するものなのか。
リアルな心情の吐露も人間関係の難解さも、計算しつくされた構成とわかりやすい文章で読ませてくれる。時代を超越して読み継がれるべき作品は、やはり一味違うな。

吉屋信子乙女小説コレクション1
わすれなぐさ
著者:吉屋信子、国書刊行会・2003年2月発行
2020年8月16日読了
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ある犯行者の意識と行動を追う異色のミステリー。完璧と思われた行為が次々と暴かれてゆく様子は当事者でなくとも恐怖感を味わえる。『樽』に登場したフレンチ警部の活躍も見もの。
・冒頭、被害者の孫がロンドンからパリはル・ブルジュ空港行きインペリアル航空の乗客として飛行する描写が秀逸だ。祖父とその執事と父親との小旅行。事故にあった母に会いに行くためとはいえ、10歳のローズにとっては大冒険だったはずだ。ときに1932年9月、クロイドン空港からフランス・ボーヴェ空港(霧のために行き先が変更された)への航空旅行を終えたとき、祖父が死亡していたことが明らかになる。検視尋問の結果、自殺の線で決着がつくが、ここから甥のチャールズの犯行への長い旅程が語られる異色の構成となっている。
・倒産寸前の小型発電機工場を救うための、遺産の前貸し要請に耳を貸さない叔父への憎悪。「ひとりの命V.S.多数のいのち」「ひとつの悪V.S.ふたつの悪」チャールズの犯行へのきっかけは単純なものだが、そこに人の弱さが潜んでいる。一方的な熱愛を傾注するユナ嬢への恋慕は、行動を決定的にするのだ。
・練りに寝られた計画に則って「行動」は成し遂げられる。後日あらわれた目撃者も、これも消してしまえば恐ろしいものは何もない。
・安堵と高揚感。愛にあふれる未来の予感。だが、明晰な頭脳を持つスコットランド・ヤードのフレンチ警部の執念による捜査は、チャールズの意図を看破する。順風満帆な日々は、深夜の逮捕状をもって永久に崩れ去るのだ。
・法廷に立った瞬間、チャールズは八方から注がれる視線(p284)におののき、訴追側の主任弁護士(検察側)の驚くような追及に精神的に耐え、「恐怖に恐怖が積み重なって」感覚の麻痺する状況(p344)に陥る様子は、臨場感あふれる描写力によっていっそう恐怖感がひきたつ。
チャールズが苦境の日常を変革するために行動に移るまでの日々、犯行後の恐怖感の毎日、みごとな公判の大きく三つのシーンから構成される。人間なるがゆえの弱さ、そして自らの心のスキへの対峙を考えさせてくれる傑作長編といえよう。

THE 12.30 FROM CROYDON
クロイドン発12時30分 
著者:Freeman Wills Crofts、霧島義明(訳)、創元社・2019年2月発行
2020年8月10日読了
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クロイドン発12時30分【新訳版】 (創元推理文庫)
F・W・クロフツ
東京創元社
2019-02-20


神戸を代表する坂道、トアロードの中腹に、芝居の建物のように赤く塗られたそのホテルはあった。昭和17年の冬、逃れるように東京を出でた西東三鬼は、数名の外国人と十余名の夜の女ばかりが長期滞在する国際色豊かなホテルに落ち着く。怪しげなエジプト人、亡命ロシア人、トルコ人、台湾人、朝鮮人たちの驚愕の生業、三ノ宮のバーのマダムたちの生態、半狂人の豊かな精神、俳句仲間との邂逅……「鬼畜米英」「欲しがりません勝つまでは」のスローガンはどこへやら、過酷な戦中・戦後にあってハイカラ・コスモポリタリズムな神戸の街と人々が織りなす稀有な物語が赤裸々につづられる。
・あやしい生肉を仕入れてくるエジプト人、20歳の紳士な台湾人、夜のお相手として日本女性を駐留ドイツ兵に斡旋する白系ロシア人女性ブローカー、もちろん、心身たくましいバーのマダムたち。彼らひとりひとりにまつわる哀しい人生は思わず涙を誘う。
・大正時代に渡仏してパイロットとなり、第一次世界大戦に従軍した日本人、その老境が語られる第七話「自動車旅行」が秀逸の出来だ。
・「当時の官憲、なかんずく軍部という狂人共に、強い嫌悪を感じていた」(p75)、そして「自由を我らに」を信仰する住人たちは、戦時色というエタイの知れない暴力に最後まで抵抗した(p111)。ファシズムへの神戸らしい対抗心は良いなぁ。
・「悪いのは日本軍部。国民は被害者だ」との認識が米軍兵士の間に浸透していたという(p142)。まだ救いか。
・終戦後の広島でのどがカラカラに乾いた「私」。「月もなく、星もなく、何もない。あるのは暗い夜だけだ」(p170)原子爆弾。すべての人間の悪を一心に凝縮して、三鬼は神戸への帰路に就く。
・焼け野原の神戸は悲惨だ。肥え太った中国人に不動産を買い占められて追い出される痩せた日本人。傍若無人なアメリカ兵の夜の振る舞いに日本人女は泣かされる(現代沖縄の悲劇はここに端を発する)。きれいごとではない実態があっけらかんとした筆致でつまびらかにされる。「敵愾心などは通り越して、私は人間そのものがいやになった」(p174)
大本営発表など信用せず、商人のうわさ話や、ドイツ水兵やイタリア兵士のもたらす真実の話などなど、市井の人々が独自に情報を仕入れ、たくましく生きていた記録は想像を超えてすごかった。
自分の力で生きてゆくこと。
空爆で焦土にされるまでの国際都市とそこに住まう人々のあり方は、実に生きにくい令和=コロナ時代を生きるわれわれにとってもおおいに参考になる。

神戸・続神戸
著者:西東三鬼、新潮社・2019年7月発行
2020年8月2日読了
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神戸・続神戸 (新潮文庫)
西東 三鬼
新潮社
2019-06-26


1920年代後半のニューヨークを舞台に、やる気に満ち溢れた田舎娘が新聞記者として成長してゆく姿を、当時の世相と合わせて垣間みる……な物語。日本でいえば昭和ヒト桁にあたるのか。
・グレタ・ガルボ、サーカス団、フォード自動車工場、禁酒法、ギャング団……。時代のテーマがてんこ盛りです。
・自動車工場の非人間的なライン作業の描写はキツイ。仕事を離れることでホッとしたジョーの姿がけなげ。
・「ここは〇〇〇ですか?」(p115)には笑わせてもらいました。『マンハッタンの休日』は肩ひじ張らずに読める面白さ(某映画作品に似ている? そこは御愛敬)。「かぶりつくのよ」(p123)も良いなぁ。そしてチャールストンがステキです。

「マンハッタン、私の街!」(p154)そしてジョーは真のニューヨーカーになる。
華やかな表舞台だけでなく、この時代の負の側面を隠すことなく物語に盛り込み、愉しい世界観に昇華させていることは特筆できます。
楽しい物語をありがとうございました。
「ベルと紫太郎」とのコラボも読みたいな……。
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冒頭から強烈な印象を放つ少女。いや、存在感ではない。はかなさと、投げやりな、せつなさ。全編モノローグの「哲学のシッポ」な語り口から生まれるオリジナルの世界観は、実は誰しもが持っているものの象徴か。
・父親を失った家……女学校に通える身分ではあるが、家には女中もいないから、夕食の準備もお風呂番も、すべてが娘の役割。思惑が思惑を呼び、人との付き合いに倦み、だが将来を悲嘆するでもない日々を送る、私。
・「過去、現在、未来、それが一瞬のうちに感じられる様な、変な気持」(p12)「女のキリストなんてのは、いやらしい」(p15)「頼れるだけの動かない信念を持ちたいと、あせっている」(p25)若さゆえの感受性の高さは、やはり貴いものだ。
・「嘘をつかない人なんて……その人は、永遠に敗北者だ」(p26)
・「美しさに内容なんてあってたまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で、無道徳だ。きまっている。だから、私は、ロココが好きだ」(p59)
・起床から、通学、午前と午後の授業、帰宅、夕食の準備と客人の接待、入浴、就寝まで。私の一日を綴るは多感な世代の持つ感受性か、哲学のシッポか、思い込みか。華麗な文体と語り口に魅せられること、幾たび。

実は、今井キラさんの作品を手にするのは初めてだが、リリカルで強烈なイマジネーションを起こさせてくれそうなカラー・イラストレーションはとても気に入った。

乙女の本棚
女生徒 
著者:太宰治、今井キラ、立東舎・2016年11月発行
2020年7月26日読了
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女生徒 (立東舎 乙女の本棚)
最果 タヒ
立東舎
2016-11-25


慶応時代に遡る外国人居留地の誕生から、モダンでハイカラな神戸の歴史は始まった。外国人によって「発見」・開拓された六甲山と海港に挟まれた風土は、自然と異国情緒豊かな都市文化を生み、それが生活に深く浸透し、150年の時を重ねてこんにちの神戸を育んできた。
本書はデザインの観点から、著者の膨大なコレクションをもとに40のテーマに沿って神戸の特徴を探る一冊となっている。
・欧米人だけでなく華僑、ユダヤ人、トルコ人、インド人など多様な人種と隣接する毎日。明治の曙からトア・ロードには英語と中国語が飛び交い、当たり前のように異国人の衣食住文化と接してきたコスモポリタンな神戸市民にとって、ミナトの船から次々と出現する新しい「舶来モノ」に興味を示すのは当たり前。洋風建築デザインの商館が林立した海岸沿いの街を闊歩し、東洋一とうたわれたオリエンタル・ホテルで舌鼓を打ち、世界中の商船の船員と盃を交わし……。いつしか進取の精神が育まれてゆく。
・世紀末のアール・ヌーヴォーから1920年代のアール・デコへ。当時のポストカードやパンフレットに描かれた神戸のデザインは、どれも美しい。旧居留地や、すずらん灯のともる元町商店街には英語看板が立ち並び、景観にもハイカラさが目立つ。
・滋賀と並んで、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの遺産の多いのも神戸の特徴か(34章)。

著者は警鐘を鳴らす。現在の神戸は、イメージ先行的な「神戸ブランド」に胡坐をかき「ミニ東京」への道を歩んでいないか、と。そうだ、文化はわれわれが誠意をもって育み、次代に継承していかねばならないのだな。「暮らしの中での自然な異国情緒」(p117)という神戸らしさを大切にしよう。

神戸レトロ コレクションの旅 デザインにみるモダン神戸
著者:石戸信也、神戸新聞総合出版センター・2008年11月発行
2020年7月24日読了
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国家に煽動された男たちが軍国主義にのめりこんでいった時代に、蕗谷虹児が渡仏した1925年に『令女界』誌上でパリのアール・デコ文化がリアルタイムで日本の女学生に紹介され(p7)、宝塚と松竹の歌劇団が活躍しはじめ、優雅で上品で凛とした内面の強さを持つ(p4)少女たちをはぐくんだ女学校文化が花開いた。華やかな文化は確かに存在したんだな。
・テレビもネットもない時代、彼女たちの心のよすがとなったメディアが『少女倶楽部』『少女画報』『少女の友』『令女界』の四大雑誌である。川端康成、吉屋信子、中原純一、加藤まさを、高畠華宵による詩に小説にグラビアに、読者投欄。ビッグネームの揃う紙面はさぞは楽しかったんだろうな。
・恋愛どころか異性との接触も禁じられた女学生にとって「エス」と「靴箱に忍ばせる秘密の手紙」がどれほど重要だったかがわかる。
・女学生ライフ(p75~)、女学生言葉エトセトラ(p85)、乙女の悩み相談(p93)は時代と世相が伝わってくる。

大正・昭和初期の高等女学校。その優雅・可憐にして悩み多き生徒たちの生活を垣間みられた気がする。興味深く読ませてもらった。

女學生手帖 大正・昭和 乙女らいふ
編著者:弥生美術館、内田静江、河出書房新社・2014年12月発行
2020年7月23日読了
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