男ひとり旅の美学

33の国と地域、南極を含む七大陸を踏破! 海外旅行歴28回の「旅の恥は書き捨て」です。愛車BMW M3と読書感想文も。

ヴィクトリア朝時代に流行した絵画を題材に当時の社会と人々の生活を詳しく眺める一冊。後世に名を遺した作家や作品でなく、当時流行した作品を扱うところが本書の特徴となる。なかでもヴィクトリア朝時代に名を上げたものの忘れ去られ、近年再評価されるに至ったウィリアム・パウエル・フリスとエドウィン・ランシアの二人の作品が際立っている。
・第二章ではプラットホームに蝟集する多様な階級・職業の人々が魅力的に描かれた作品、ウィリアム・パウエル・フリスの『駅』が取り上げられる。1850年前後の英国の経済的繁栄は労働者の生活上の不満を吸収し、彼らの政治上の要求は革命ではなく従属を選ぶに至り、繁栄の余波を楽しむこととなる。労働者といえども近郊への日帰り旅行を楽しめる時代になったのだ。貴族様と労働者の混交する『駅』の情景はこんにちと変わりなく猥雑であり、表層の繁栄と群衆の中の孤独がみられる。
・二つの国家。ヴィクトリア朝英国を二分する「ミドルクラス以上」と「ワーキングクラス」。後者の中でも貧困を極めた人々が行き向かうのが国の貧窮院であり、公営の臨時宿泊所であった。困窮をテーマにした絵画作品がロイヤル・アカデミー展に出品されると、「自らと違った人々の姿」を観ようと人々が押し寄せたことが第十章で述べられる。「理想美」からかけ離れた時事的なテーマの作品は批判されるも、社会問題を扱う報道写真的な作品=新しい歴史画の出現は、美術史上の一大事件だったとわかる。
・もうひとつの英国の分断が男と女だ。男尊女卑なんてレベルではない当時の常識は、哀しみに暮れる数多くの女性を生み出すこととなる。オーガスタス・エッグの『過去と現在』(p94~95)に描かれた女性たちの悲運は、のちの過激な女性権運動をすら正当化するものであろう。
・第十八章、ウィリアム・パウエル・フリスの『ロイヤル・アカデミー展の招待日、1881年』が興味深い。ヘンリー・アーヴィングとエレン・テリー、リリー・ラングリー、オスカー・ワイルドに、唯美主義者のドレス(エステティック・ドレス)をまとう若い女性と多彩な参加者の熱気が目前から伝わってくるような圧縮された画面構成は圧巻だ。そのエレン・テリーの生涯も第十二章に詳しい。
・こころを奪われる絵というのは存在する。『ジェイン・グレイの処刑』(p252,なんどもナショナル・ギャラリーで鑑賞した)、『同情』(p219)、『選択』(p135)が僕にとってのそれだ。後ふたつは、いつか現物を観たいな。

「選り抜きの情報だけを伝える絵画芸術の雄弁さ」(p195)が、ヴィクトリア朝社会における関心ごとをあからさまに甦らせてくれる。いわば時代を追体験するという楽しい時間を得ることができた。

ヴィクトリア朝万華鏡
著者:高橋裕子、高橋達史、新潮社・1993年11月発行
2020年6月2日読了
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ヴィクトリア朝万華鏡
達史, 高橋
新潮社
1993-11T


いつのころからか天より降り出した桜の花弁、アマザクラ。数少ないアマザクラの降る町である九重町で、私、神屋敷ツバサは幼馴染である環木ヒヨリの秘密を知っていた。疎遠となっていた彼女との関係は、高校2年の初夏、紫々吹ルカの転校してきたことによって少しずつ、少しずつ変わってゆく。
・第Ⅰ章「空と君の秘密」の丁寧な進行には好感が持てる。そしてバイク少女のいきなりの問いかけ「アマザクラの秘密を知ってるな?」から、物語は大きく動き出す。
・カラオケボックスでの心の探り合い、過去のメールに発見するキーワード「峰山」、絶妙なタイミングでのルカからの電話。第Ⅱ章「花屑抱きしめて」の終盤から、物語は俄然盛り上がる。
・愛里。そう、大切な人のためなら、人は何でもできるんだな。
・フライさんの挿画がなんともいえない味を醸し出しています。ライトノベルの醍醐味。(ただしp192のイラストは? 3年前の出来事なら、中学校の制服のはずだが……。)

そして友情は、世界の色を塗り替える(第Ⅵ章「101個目の願い事」)。その色が「希望」につながれば、なお良いな。
ヒトを知り、痛みを知り、こころが谺(コダマ)する瞬間、少女は強くなる。ベタな展開といえなくもないが、心地良い読後感を得られた。

サクラの降る町
著者:小川晴央、イラスト:フライ、京都アニメーション・2020年5月発行

アニメ版はBlu-rayディスク全巻を揃えている。『リズと青い鳥』を含む劇場版4作も観に行った。しかし、まだ何かがもの足りない。そこで作品の原点=小説を読んでみることとした。
・部室の外での「あがた祭」への誘い合いは、まさに青春だな。「え、何その反応。感染したかのように、久美子の顔にまで熱が集中する」(p183)この秀逸なシーンはアニメ版よりも感情が凝縮されているな。
・麗奈の挑戦的な言動、特にソロパート発表の後の音楽室でのそれは、孤独さと強さを強調する。「ねじ伏せたるわ、そんなもん」(p262)にはしびれるな。
・蒸気→上気した彼女の頬(p258)。この誤字は修正されないのかな?
・あすかの、常人を超越したような態度も印象的で、キャラが立っている。「あの分厚い仮面を剥ぎ取るのは……」(p290)

音楽への情熱に気づく青春劇、そして訪れる感動。京都府大会本番前の秀一との「邂逅」シーンは素晴らしい。
続編も読み込まなくては!

響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ
著者:武田綾乃、宝島社・2013年12月発行

2011年式BMW M3(E90型、V型8気筒4,000cc、420馬力)を購入しました。
9年落ちの中古車を、国産ミニバンの新車価格で買うなんて正気の沙汰じゃない? でも僕は正気です。
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正直、15年乗り続けた320i M-sports(E46型、直列6気筒2,200cc、170馬力)を2016年9月に330e Celebration Edition (F30型、電気Motor+直列4気筒2,000ccターボ、252馬力)に買い替えた後、ドライブが楽しくなくなったのです。

330e特別仕様車のホワイトレザーシート、ステッチのあしらわれたレザーダッシュボード等の素晴らしいクオリティの内装に、タンザナイトブルー色のボディは僕自身とても気に入りましたし、乗り心地の良さは同乗者(おばさまたちが多い)にも好評です。でも、"大きすぎる"ボディ・サイズ、過給機の力によって"作られた"中低速域の加速、"平凡な"エグゾースト・ノート、"お行儀のよい"走り……。わくわく感がありません。
僕がBMWに求めているのはこれじゃない!
E46の快感(手ごろなサイズ感に、名機M54エンジンの咆哮)を取り戻したい!

で、(ローンが残っているのに)一念発起して、一世代前のE90型M3の購入となりました。
ぱっと見は白い4ドアセダンなので「ステキなおじさま」らしくジェントルに走ることも可能。アクセルを踏めばトルクwith爆音での加速を楽しめる車なのです。

・巨大な4リッターエンジンを収めるためのボンネットの出っ張り、パワーバルジが特徴的です。たんこぶじゃないよ。
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・前後のオーバーフェンダー(タイヤハウスの横方向の突出)がお気に入りです。
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・スピードメーター表示は330km/H。僕は法定速度厳守なドライバー(笑)なので関係ありませんが。
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・エンジンルーム。詰め込みかたが、なかなかスパルタンです。
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・セダンだから5人乗りです。内部はE46よりずっと広くてF30より若干タイトな感じ。
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・V8のエグゾースト・ノートは「 快 感 」。エンジン始動時(cold start)の力強い音がお気に入りです。
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駆けぬける歓び、再び!
これからは楽しい休日になりそうです。(燃費は4km/L。トホホ。)

15年乗り続けた320i Mスポーツ(E46型、直列6気筒2,200cc、170馬力)の車検を終えたその足(タイヤ?)で、ディーラーへふらりと寄ったのが2016年9月。そこに誇らし気に陳列されていた330eセレブレーションエディション(F30型、電気Motor+直列4気筒2,000ccターボ、252馬力)に一目ぼれし、購入したことを憶えている。
・新世代BWWエンジンのスムーズな加速は「快適」の一言で、
・タンザナイトブルーの塗装色は満足感を与えてくれ、
・高級車のなんたるかを教えてもらった。
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白のレザー内装もお気に入り。オーディオも充実、ホイールは19インチだし。
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明日、愛車とお別れです。3年半、どうもありがとう。

チャールズ・ディケンズ23歳。身に付けた速記術を駆使しての新聞記者の手腕を唸らせて、ジャーナリズムの草分けとしての名声を確実に得てゆく。教区篇、情景篇、人物篇の三部で構成される"スケッチ"は、まるでその場で見て聞いているかのような臨場感あふれる筆致でロンドンの昼と夜を描写する。
・1830年代ロンドンの悲惨極まる庶民の暮らし。わが物顔で街を跋扈する教区委員と民生委員のお歴々。差し押さえ業者の下僕だった(激しい選挙戦を勝ち抜いた)新任役人の生々しい話、紳士たちの所業、中流家庭のミス/ミセス率いる複数の婦人会の競争の激しさ。『我らが教区篇』の描写は悲喜こもごもだ。
・人もまばらな早朝の街角、高級住宅街もいまは貧民街の『セブンダイヤルズ』の昼間の喧噪、等、『情景篇』はロンドンの街と人々の生の姿を描き出す。それにしても一着の古着、少年用のスケルトン・スーツから一遍の哀しい家族の物語を紡ぎだすディケンズの想像力は大したものだ(『モンマス・ストリート瞑想』)。縁日に群がる老若男女の様子をおもしろおかしく縦横無尽の筆で語りつくす『グリニッジ・フェア』は、その場の喧騒がダイレクトに伝わってくる。
・『人物篇』では下層ミドルクラス、ワーキングクラスの労苦と楽しみがあぶりだされる。現代日本とあまり変わらないな。

短編小説は12編を収録。
・『Mr Mins and his Cousin 決断の時』犬と子供嫌いのミンズ氏のもとにやってきたのは……。ディケンズ21歳のデビュー作。一流のドタバタコメディは強烈におもしろい。
・『Horatio sparkins 然るべき人物』投機で成り上がった中流階級一家の「貴族趣味」を語彙豊富に語る小喜劇。小説の面白さここに極まるといったところ。
・『The Steam Excursion 晴れのち曇り、こともなし』テームズ川を下る船上パーティでの二つの家族の見栄の張り合いに、ギター演奏に歌曲に、揺れる船内でのディナーに、泣き叫ぶおぼっちゃま。ニヤニヤさせられた。
・『Passage in the Life of Mr.Watkins Tottle 結婚、ああ結婚』ワトキンス・トトル氏に振りかかった難儀』は50代独身男の求婚話をめぐるコメディ。こうはなりたくないなぁ。
・『The Drunkard's Death憐みの祈りもなく』家族を抱えながら酒に走り、悲劇は悲劇を呼び込む……。散り散りになった家族の哀れさが涙を誘う。本書随一の悲しいストーリー。

他に『The Bloomsbury Christening 二つの戒め』『Mrs. Joseph Porter 'Over the Way'幕は上がった』など。
やはりディケンズ! 人物や情景の描写力は群を抜き、話の展開も面白すぎます!

Sketches by Boz
ボズのスケッチ
著者:Charles Dickens、藤岡啓介(訳)、未知谷・2013年6月発行
2020年5月18日読了
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ボズのスケッチ
チャールズ・ディケンズ
未知谷
2013-06-19


イギリスの伝統的なファッション。それは世紀末から1920年ごろにかけてのモダニズムの時代に生まれたものであり、いつしか「伝統」が加えられた。
本書は、トレンチコートとレインコート、乗馬服と女性用スーツ、メイド服、プリント柄のコットン・ドレスを取り上げ、国民性と時代背景から、それらがどのように「伝統的なブリティッシュ・ファッション」へと昇華していったのかを探る興味深い一冊となっている。
・マッキントッシュ(雨がっぱ)、アクアスキュータム(ラテン語で"水を通さず")、バーバリー(ギャバジンを発明)。当時の最先端技術を駆使した男性用防水トレンチコートとゴム引きコート(僕も愛用。蒸れるけど)によって英国を代表するブランドが、1830年代~1850年代の技術革新によって顧客、それも王室を含む上流階層の支持を得て、世界的に発展する様子が、シャーロック・ホームズ作品を交えて解説される第二章が興味深い。「イギリス人が国民性と自負する実用性の重視、発明の才と工夫の結晶である」(p44)
・V&A美術館に1920年代の男性用「グレシャム・レインコート」および女性用レインコート「パーフェクタ」のカタログが保管されているという(p46)。いつか現物を見に行こう。
・ホームズ作品によると、19世紀末にはファッショナブル性を併せ持つwaterproof(アクアスキュータムとバーバリー)はミドルクラス以上の男性が、mackintoshはそうでない男性が愛用したことがわかる(p50)。
・著者によれば、イギリス紳士とはすなわち「技術革新と知性に裏打ちされた男性服の美学を実践する人」(p63)である。その現代的なダンディズムは、いまも廃れることを知らないように思える。
・メイド服はなぜあそこまでシンプルで無装飾なのか。そこにはミドルクラスの価値観(女性は働かず家庭の天使とされる)と要求(プライベートでも慎むべき)が多分に現われ、しばしば女性労働者(ワーキングクラスは男女問わず働く)との軋轢を生みだしたことが実例を交えて解説される(第四章)。
・1875年創業のリバティ商会(リージェント・ストリートのリバティ百貨店)の活躍、特にエステティック・ドレスでの成功は、イギリスのテキスタイル産業に「芸術的特徴」を組み込み、それをパリやイタリーのそれに並ぶブリティッシュ・ファッションにまで昇華させた点で著しいとある(第五章)。ジャポニスムや中国趣味、インドのカシミールなど帝国のデザインを大胆に取り入れ、綿業の機械的発展と相まって、"正統派"ファッションにアンチテーゼを突きつけた点は面白い。

機能的な乗馬服が求められた背景(乗馬スクールへ通うミドルクラスの増加)、21世紀では当たり前に服飾に求められる「健康・衛生」の観念が19世紀のミドルクラスの精神(規律・道徳)によるものなど、ファッションの変遷には理由がある。そして「ジェンダー規範、社会階級、仕事とレジャー、アートと消費社会」(p180)とフランスに対するコンプレックスが、現代にも通底するブリティッシュ・ファッションの哲学だと理解できた。

メイド服とレインコート ブリティッシュ・ファッションの誕生
著者:坂井妙子、頸草書房・2019年2月発行
2020年5月16日読了
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大正3年から昭和21年にかけて発表された7編を収録。欧州旅行を体験し、20世紀の日本で存分に生きた野上弥生子による造形確かな人物たちの共演を楽しめる短篇集だ。
・『死』既婚30女の集う会合の話題に、今夜は自分たちの見て経験した人の死が取り上げられる。少女時代の遊び仲間の死。老女のたくましいまでの生への執着。だが地方から上京した「わたし」の経験、すなわち祖母の死は、それは死と呼べるものであったろうかと自己に問うこととなる。
・「家風に合わない」ただそれだけの理由で女が離縁を強いられた時代が長らく続いた日本の家族制度に強い憤りを感じたのだろう。『或る女の話』では、15歳で商家に嫁いだ「おせん」の奇特な半生を、野上弥生子は深い愛情をもって描く。日清戦争、肺病、狂気、極端な村の選挙運動……夫を五度も変えるという運命に翻弄された女には「自覚」が芽生えるのか、実家に居場所すらない「おせん」は新たな縁談よりも女中奉公を選ぶが、それも悲しい結末に終わり……。人が自立することの意味を考えさせられる。
・『茶料理』青年と少女の淡い淡い恋ごころ。15年後の逢瀬は何を思い出させてくれるのか。
・軽井沢の避暑地を6月から11月まで一人で過ごす初老の"渡欧歴のあるへぼ作家"、和子。昭和16年1月、何もかもが急激に変わる世の中で山中の自然を満喫しながら、限られた地元民との淡い交流を美しく過ごそうとする和子。サブちゃん、おせきの半生も泣かせるし、ラストの「これからの世の中」を予感させる短い日記も素晴らしい。『山姥』は本当に美しい一遍だ。
・『明月』死に目に会えなかった母の通夜のシーンが涙を誘い、またすがすがしさにも包まれる。亡き人を囲んで一同が集い、話を話として語るを楽しむ。そう、的確な記憶を持つおしゃべりこそ、「まことに私たちの上代の歴史や芸術が、いいつぎ、語りつがれて来た」(p242)歴史的資産であることに、東京に住まう"私"は気づくのだ。そして灰となった母の一部を"私"は軽井沢の別荘に埋葬する。「まどかなる月のもとに眠りませ」(p250)は名言であろう。
・『狐』肺病の治癒のため、東京の三菱銀行を辞職し北軽井沢に移り住んだ萩岡は、ふとした縁で狐飼いの道を歩む。満州「事変」から泥沼の様相をみせる日中戦争に真珠湾攻撃。ミッドウェイを経て当然の負け戦へ。急変する世の中と異なって平穏な萩岡夫妻の生活にも、やがて肺病の死の影が迫る。佐々木との友情、複雑な実家との関係、そして愛する妻、芳子に何を残すのか……。殺しあう人間社会の性とはかかわりなく狐たちは活動する。美しい自然の描写も実に良い。

どの作品も甲乙つけがたい、個人的には"当たり"の一冊。本書ピカイチの一遍を選ぶとすれば『茶料理』だろうか。

太陽が雲に隠れ、周囲の情景が急速に魔を伏す様子(p14)といい、赤裸々になった恋心(p118)に、青空(p207)。野上弥生子の表現力には舌を巻く。
近代文学を手にすること。それは日本語の豊かさ=人間描写のあらゆる可能性を実感できるということを実感した。

野上弥生子短篇集
編著者:加賀乙彦、岩波書店・1998年4月発行
2020年5月9日読了
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野上弥生子短篇集 (岩波文庫)
野上 弥生子
岩波書店
1998-04-16


APS-C用のTouit 2.8/12(換算18mm)はコンパクトで良いのだが、オートフォーカスのジージー音が気になる。それにどうしてもフルサイズ用が欲しくなり、Batis 2.8/18を購入しました。
SONY α7RⅣへの装着感も良い感じ。そして軽い!
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明石海峡大橋を試写。思った通りのきめ細かな描写に満足です。
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次の旅行が楽しみになってきました(しばらく先のことでしょうが)。


戦中、戦後の市井の日本人の姿。生きようとする魂が浅田次郎の筆によって、目前に蘇ったように描かれる。
・天の河の見下ろす富士の裾野で、「帝國陸軍上等兵」と「陸自士長」が出会う『不寝番』は、短い会話の重みが男の胸に響く。「ジャングルの中や船倉の底や、凍土の下に埋もれていった日本人を、外国人のように考えていた自分」(p164)には刮目させられた。
・『歸郷』は帰還兵の悲劇と、それでも生きようとする小さな希望を、街の娼婦の人生を絡めて描く。「もしかしたら、あんたが、三人目の神様かもしれないな」(p47)
・皇軍の証である金色(コンジキ)の鵄(トビ)を、染井軍曹は焼け跡の銀座にみる。『金鵄のもとに』は衝撃的な内容と相まって読むのが辛い。あまりにも辛い。「あんなところに四万人の兵隊を送り込んで、食料は現地調達しろってんだから、はなっから敵はアメ公じゃねえや」(p206)「……もうお国の勝手で飢え死んじゃならねえんだ」(p212)これが戦争の本質だといわれれば、その通りか。

世代を超えて語り継がれるべき「非戦文学」。日本人の魂のあからさまな姿をみた。
「お国のためも糞もねえ」(p29)。
家族のためにできること、生きることを考える。僕も昨今の"自粛ムード"に安易に流されないようにしよう。

帰郷
著者:浅田次郎、集英社・2019年6月発行
2020年4月16日読了
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帰郷 (集英社文庫)
浅田 次郎
集英社
2019-06-21



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