著者デビュー10周年ということで、買って放置していたデビュー作を読んでみた。
冒頭から最終章までぐいぐいと引き寄せられる展開に、登場人物の意志や性格のあふれ出る骨太の文体。納得の本屋大賞受賞作だ。
・だれしも護りたいもの、信じる者がいて、その思いが叶わなかったときの衝動は千差万別。そこに連綿性が顕われたときに生じた悲劇は、さらに悲劇を生み出す。
・「自分が直接裁いたことをどう思っていますか?」(殉教者)は、社会通念と隠された自己の思いを秤にかけること。重いなぁ。
・「信奉者」の章が秀逸。幼稚にして天才的な少年犯罪者の心理の深淵を覗くことは、われら大人にどのような責任を突きつけられることだろうか。
・「やればできる」のではなく「やることができない」には痛みを感じたぞ(聖職者)。

更生の第一歩。重すぎる一歩を、彼は踏み出せるのだろうか。翻って自分ならどうしただろうか。そんな思いを抱いて最終章を静かに閉じた。

告白
著者:湊かなえ、双葉社・2008年8月発行
2018年6月17日読了
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