20世紀初頭から戦中・戦後、大阪万博まで、京都工芸繊維大学美術工芸資料館の有する美麗なポスター229点。全ページフルカラーの美麗な図版と解説を楽しめる。

・飲食、ファッション、化粧品・薬、趣味・嗜好品、船舶・鉄道、博覧会・映画、戦争プロパガンダ、ポスターの未来の全8章から構成され、大正・昭和初期を中心に明治~昭和30年代までのポスターが紹介される。それぞれの章の解説がわかりやすく、ポスター図版をより楽しめる仕組みとなっている。
・江戸伝来の引き札、明治の美人画・絵画から、西洋由来のデザイン重視・商業美術ポスターへの変遷は、なるほど、印刷技術が発達し、杉浦非水に代表されるデザイナーが登場する1920~1930年代なのか。
・化粧品のポスターは華やかだ。デパートとともに、女性の新しいライフスタイルを牽引したとある。資生堂やクラブ化粧品のポスターは現代でも通用するかも。
・交通関係では『東洋唯一の地下鉄道』(1927年:p175)がやはり秀逸だな。朝鮮総督府の金剛山、華北交通のポスターも珍しい(p193)。
・真っ赤でシンプルな富士山の図章を用いた「紀元二千六百年記念 日本万国博覧会」のポスター(1940年)は、とても印象深い(p216)。
・掲示され見られるポスターだけではない。家庭に配布され、見られるマッチのラベルも、昭和には多彩なデザインのものが登場したことがコラムで解説される(p156)。当時の風俗のみならず、ランドマークや地下鉄開通などのトピックスもわかり、興味深いな。

本書はコンパクトな文庫本サイズだが、1ページに一葉のカラーポスターが掲載され、十分に楽しむことができた。
まぁ、欲を言えば、もう少し大きな版で鑑賞したいところだが。

日本のポスター
編著者:並木誠士、和田積希、青幻舎・2018年3月発行
2018年7月8日読了
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