虚偽の報道で利益を得る者、訂正されない誤報とメディアの責任。ジャーナリストの矜持と個人の見得と名声。中盤までの展開からこのようなテーマを想定していたが、"レベル"が違った。終盤の圧倒的な展開に著者の凄みを思い知らされた。

それぞれがジャーナリスト個人の姿を追う連作短編集の形式で物語は進行する。巨大新聞社の体質、虚報がもたらす被害者の悲劇の人生、ネットの出現と新聞離れ、記者という仕事のやり甲斐以上の誇り(p115)、テレビの堕落、司法権力とメディアの結託・特権。そして、匿名性とネット時代の人権。

新しい時代の、得体の知れない大波(p270)に抗うこと。
タイトルの「歪んだ波紋」の意味は、最終章で明らかになる(p272)。そしてその処方箋も。

フェイク・ニュースとレガシーメディアとの関係。テクノロジーが引き起こす新しい"社会革命"。これが真実なら恐ろしい事態が進行していることになる。メディア・リテラシーが問われて久しいが、彼らはその上を行く。厳しい現実だ。

歪んだ波紋
著者:塩田武士、講談社・2018年8月発行
2018年10月6日読了
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歪んだ波紋
塩田 武士
講談社
2018-08-09