貧しくとも幸せかつ心豊かに人々が暮らすルップマイゼ共和国で、マリカは生まれる。生後一日目にして与えられたのは小さな赤い手袋、ミトンだ。そう、この共和国の人々にとって、ミトンが生きる象徴であり、気持ちを伝える媒介でもある。恋をして、一生懸命に生きたマリカの生涯が、ここに綴られる。
ロマン・ロラン『ピエールとリュース』、テニスン『イノック・アーデン』を彷彿させる、美の香り豊かな文章。そして温かな挿画が物語を惹きたててくれる。

・共和国にはYESの言葉が存在しない。プロポーズの返事にミトンを心を込めて編み、自然の中で結婚式を迎える……なんとも素敵じゃないか。
・氷の帝国に支配される共和国。長い長い年月、人は耐えて、明日を信じ、そして旅立ってゆく。
・一日だけの長生きを神に願う描写が良い。(p115)
・最終章。「だって、泣いていても何も生まれないじゃないですか」(p188)この強さを、そっと胸に刻みたい。
・巻末にカラーで紹介されるは、モデルとなったラトビア共和国だ。1991年、ソビエト連邦の崩壊と前後して独立を取り戻した彼らの喜びは、報道を見て聴いていた僕にも伝わってきた。そして、マリカも最愛の夫と「手をつないで」静かに旅立つ(p191)。最後は涙なしでは読めなかった。

第6章、そのラストを読み返すのは辛い。胸に希望の灯のともる時、人は明日を信じて生きてゆくことができる。きっと、良い明日を信じて。

ミ・ト・ン
著者:小川糸、平澤まりこ、白泉社・2017年11月発行
2018年11月12日読了
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ミ・ト・ン (MOE BOOKS)
小川 糸
白泉社
2017-10-27