国家が国際社会のアクターとしての役割を減少し、世俗主義に統治され、ナショナリズムも抑制された世界。これがEUモデルであり、西欧世界を中心に世紀を超えた努力によって実現を目指してきた。一方でアジア・アフリカ・南米では国家も宗教も民族的ナショナリズムもいまだに国際政治の主要な原動力であり、たとえば社会主義市場経済なる暴力的な中国モデルが幅を利かせつつあるのが現実だ。そこでは民主化の努力は放棄され、国民が「居住国」を変える方法が選択されつつある。エスケープ、すなわち先進国への移民。EUは格好のユートピアだ。

2010年代になって移民問題は変化した。大挙してEU外から押し寄せる移民に対し、東欧は門戸を閉ざし、ドイツ、オーストリアは大量の移民を受け入れた。税金が使われ、職を競合しあうことなるため社会下位層を中心に不満は募る。「国が乗っ取られる! 自分たちの生活が脅かされる!」 その結果が社会多数派の右傾化、ポピュリズム政治の台頭であり、民主政治の性格の変化である(p30)。英国民が選んだ「EUからの離脱」はその象徴でもある。

・この世界で階級間の不平等は問題ではない。諸国民の間の不平等こそが重要であり、インターネットでEU社会の豊かさを知った第三世界の民が「移動」を始める(p35)。
・EU内の経済格差に端を発するユーロ圏の危機、英国のEU離脱の衝撃(Brexit:ブレグジット)、ロシアの暴力にEUの無力さを露呈したウクライナ危機。1993年の理想は彼方に遠く、そしていま「難民危機」によりEUの分裂が現実のものになろうとしている(p48)。
・民主主義が不安定化を招くジレンマ。そして、招かれざる移民から欧州を守る「独裁者」は歓迎される(p41)。
・「移民の時代において、民主主義は包容ではなく、排除の手段として作用しはじめつつある」(p17)
・選挙の変貌。かつての左派と右派の対立は、国際主義(リベラルな人々)vs民主主義(排外主義的な人々)の対立に代わってしまった(p77)。なるほど、日本の現状を鑑みても納得できうる。
・やがて、ポピュリストは直接民主制を謳って国民投票を、すなわち議論ではなく、感情に訴えての秩序破壊を手段とする(p99)。

オーストリア=ハンガリー二重帝国の実験、すなわち平和的な民族間協力、民族主権の自主的な制限、独自の文化を保ち継続させる民族集団の結束と発展は、そのままEUの実験でもあった。これが失敗しつつある現在、秩序の失われた世界が姿を現そうとしている。

翻ってこの日本はどうなのか。スピード可決された移民法が2019年4月に施行される。最長5年と謳ってはいるが、現在でも問題となっているように、姿をくらませた移民は半永久的に日本にとどまることができる。貧困ゆえに集団犯罪に走る彼らの姿が目に浮かぶ。特に農村部の未来は真っ暗だな。
「アフター・ジャパン」
根本的に道徳観念と文化が異なるだけでなく、反日教育を受けた若いC国人やK国人が大量に流入する将来を思うと……ああ、この国のナショナリズムに火がつき、社会がさらに右傾化するのは時間の問題だ。
……それが目的で移民法案を強硬成立させたのなら、右寄り現政権の手腕はお見事というほかない。

移民問題は、民主主義を市民統合の手段から、他者排除の手段へと変化(ヘンゲ)させる。日本にとっても対岸の火事ではない。和解と妥協の精神を忘れないようにしたい。

AFTER EUROPE
アフター・ヨーロッパ ポピュリズムという妖怪にどう向き合うか
著者:Ivan Krastev、庄司克宏(訳)、岩波書店・2018年8月発行
2019年1月9日読了
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