オールカラー絵画32点を収録。マネ、バーン=ジョーンズ、ルーベンス、ブリューゲル、ゴーギャン、ベラスケス、ターナー、ティツィアーノ、クリムトなどなど。
一枚の絵画に秘められた神話・歴史的史実・文学的要素。中野京子さんの解説を頭に入れて鑑賞すると、作品がここまで面白くなるのかと唸らされました。

・どの章も興味深く読めたが、『選択』『マクベス夫人に扮したエレン・テリー』による世紀末大女優の物語が特に印象に残った。
・『アンコレ橋のナポレオン』『死刑囚の監房』作品が認められ、底辺から身を起こして成功することは称賛されるべきだが、富と地位を得ると人間はかくも変わるのか。
・「相手の個人的事情も正義も悪も立場もいっさい考慮しない」女神フォルトゥナ(p30)、女性を次々に毒牙にかける天空の支配者ゼウス(p128)、半獣人マルシュアスの生皮を平然とそぎ落とす太陽神アポロン(p180)、「人間ごときを歯牙にも」かけない女神アテナ(p185)。神々の力=大自然と運命に翻弄される人間と動物の物語は哀しくも力強い。

個人的な話で恐縮ですが、2014年4月にコートールド美術館でマネ『フォリー=ベルジェールのバー』を鑑賞し、数日後にパリのFOLIES BERGEREを訪問しました。その時は漠然としていましたが、華やかなミュージックホールの裏側、うつろな目でこちらをみる彼女の思い、時代の残酷さと可能性など、本書の「若さと綺麗な顔だけを武器に」によって作品世界が拡がった気がします。

中野京子と読み解く運命の絵 もう逃れられない
著者:中野京子、文藝春秋・2019年1月発行
2019年2月5日読了
DSCN4179DSC_0358