1890年代にイギリスで出版された「THE DESCRIPTIVE ALBUM OF LONDON」を再編集したもの。当時の生活風景を映し出す70枚の写真と記事は興味深く、いまでは失われたクリスタル・パレスやアールズ・コートの観覧車などの記述はとても新鮮だ。

・冒頭の鳥観図は貴重だ。またAldwychオールドウィッチの半環状道路は、当時はまだ整備されていないことがわかる(p13)。
・トラファルガー・スクエアに面して建つ「THE GRANDO HOTEL」(p3,77,79)、その華やかなホテルとしての姿を垣間見られるのはうれしい。建物だけは現在でも見ることはできるが。
・セント・ポール大聖堂、タワー・ブリッジ、ロンドン塔、ビッグ・ベンと国会議事堂、シティ界隈の石造建造物など、観光対象でもあるロンドンの主要建築物は100年以上前からその姿を変えていないとわかる。
・セント・トーマス病院も、現在の殺風景なビルと違って、ドイツ軍の空襲によって全焼する前の美しい姿を見せてくれる(p57)。
・コヴェント・ガーデンの賑わい(p69)。ディケンズやドイルの作品等に登場するニューゲイト監獄(p45)。写真を見るのは初めてだ。
・ハイドパークのロットン・ロウは当時は「馬車専用道」だったんだな(p127)。

夏目漱石、牧野義雄、少し時代は下って長谷川如是閑の見て歩いたロンドンがどのような光景だったのかを想像するは楽し。本書はその強力な一助となってくれた。

100年前シリーズ 100年前のロンドン
マール社・1996年4月発行
2019年2月6日読了
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100年前のロンドン (100年前シリーズ)
マール社編集部
マール社
1996-04