日本の古典を底本とする小品と翻訳を中心に初期の34作品を収録。

『クラリモンド』(クレオパトラの一夜、1914年)
ゴーチエ作La Morte Amoureuse(死霊の恋、Clarimondoe)の芥川訳。「こめかみの上へ二つの漣立った黄金の河を流してゐた」(p82)「わしは夜よりも暗く、夜よりも更に語なく」(p124)など、フランスのエスプリそのままに、和文の雅さを加味した作品となっている。

『芋粥』(新小説、1916年)
漱石の推薦を受けた芥川の出世作。ゴーゴリ作『外套』の臆病な小役人アカーキエビッチを彷彿させる主人公が切ない。「人間は、時として、充たされるか、充たされないか、わからない欲望の為に、一生を捧げてしまう。その愚を哂ふ者は、畢竟、人生に対する路傍の人にすぎない」(p229)なるほど、欲望への執着は大事だな。

『野呂松人形』(人文、1916年)
アナトール・フランスの言葉を引き合いに「僕たちは、時代と場所との制限をうけない美があると信じたがってゐる」(p221)との思いを吐露する芥川。その思いは現在まで受け継がれている。

『羅生門』(帝国文学、1915年)
『鼻』(新思潮、1916年)
平安時代にあって雅さとは無縁の非情な世界観が顕わにされる。

『父』(新思潮、1916年)、新渡戸稲造の或る一日に発見した「女の武士道」を描いた『手巾』(中央公論、1916年)も印象深い。他に『バルタザアル』『大川の水』『青年と死と』『虱』『酒虫』『仙人』等を収録。

芥川龍之介全集 第一巻 羅生門 鼻
著者:芥川龍之介、岩波書店・1995年11月発行
2019年2月10日読了
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