20年以上前に読んだときは先生に同情したが、今回はその身勝手ぶりが微妙に感じられた。残された「お嬢さん=妻」は何も知らずに、このさき何十年も一人で生きていく身となる……。
・私と先生の年齢差は10年程度だが、世代間の格差は大きいとされている。社会的には明治の10年は現在の10年よりも進歩が激しかったんだろうなぁ。
・生きているうちに両親を安心させてあげたい、喜ばせてあげたいとの気持ち(両親と私 一)。僕もいまになってよくわかるようになった。
・奥さんが先生を脅かしたという何気ない言葉。確かに、瞬時に心が凍えるな。(先生と遺書 四十七)
・自分も、自分を裏切った叔父と同じ類の人間だと気づき、先生の矜持はガラガラと崩れ去る。前後不覚に陥ると、生死の判別さえつかなくなるのか。(先生と遺書 五十二)
いつページを開いても味わいのある文章は絶品。年月を経ても色あせず、読む時期によって多様な読後感を得られることが漱石作品の魅力だ。

漱石全集第九巻
心 先生の遺書
著者:夏目金之助、岩波書店・1994年9月発行
2019年2月16日読了
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こころ (新潮文庫)
夏目 漱石
新潮社
2004-03