帝国主義とその崩壊が残した歴史的風景。帝国主義の時代~ブルジョワジー自由主義と革命の世紀~を反芻することで、現代社会を考察する一助とする。
中産階級の価値観と思想、女性の進出。文化と科学技術。革命と戦争。2巻では、ブルジョワジーの世界を中心に帝国主義時代の諸相を描き出す。

・ブルジョワジーの勢いは古くからの貴族を警戒させるほどに。1900年から20年間に創設された159の爵位のうち66件が実業家、34件が専門職に授けられたという(残りは地主と軍人)(p9)。
・社会価値の崩壊を未然に防止することが期待された社会科学だが、革命と戦争は雪崩をうつように到来したのだった。
・南アフリカ戦争では45万人を派兵し、うち4万5千人が戦死または病死したという(p188)。
・列強を第一次世界大戦に引き込んだのは何か。戦争を利益と考えた資本家か? 否(p201)。資本主義的集中のもたらした巨大軍需産業か? 否。ましてや道徳的・政治的判断の所産である「敗戦国の戦争犯罪」などではない。結局は、列強を軍備競争に駆り立てた国際情勢そのものであった(p193)。ドイツ対フランス。対するフランスとロシアの同盟。ハプスブルグ帝国への全面的な協力に関するドイツの決意、多民族国家ハプスブルグ帝国の崩壊の危機。そして国際外交ゲームの拡大とルールの変更(p200-207)による、予想しえなかったイギリスのフランス・ロシア陣営への加担。これらが実にスマートに記される第13章は秀逸だ。日英同盟と日露戦争のもたらした影響=イギリスとロシアの宥和は無視しえないものだったんだな。
・その上で、「中央・東ヨーロッパ社会において、民主主義諸勢力が軍国主義分子に対する統制力を確立するに無力だったこと」(p210)が1914年6月のヨーロッパの悲劇的な崩壊の主な原因であると、著者は結論付ける。ハプスブルグ帝国の軍事的ギャンブルはまさしく悲劇的だったのだ。
・第一次世界大戦により、自由主義世界システムと19世紀的なブルジョア社会は崩壊し、民主主義、あるいはファシズムの胎動へとつながる。

「ナショナリズム」のイデオロギーは大小問わず、あらゆる民族集団に国民国家の概念を使用可能とした(21世紀には東チティモールまで)。非ヨーロッパの政治がナショナリズムに同化された限りにおいて「帝国の時代」の遺産は存在し続けるというわけか。

THE AGE OF EMPIRE 1875-1914 2
帝国の時代1875-1914 2
著者:E.J.Hobsbawm、野口健彦、長尾史郎、野口照子(訳)、みすず書房・1998年11月発行
2018年1月24日読了
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帝国の時代 2――1875-1914
E.J.ホブズボーム
みすず書房
1998-12-09