明治開闢以来の150年間、外国人は何を求め、日本人は何を披露したがったか。その「魅力のギャップ」と外国人の「再発見」を含めて日本観光の近現代史を俯瞰し、今後の観光立国を考える一冊。
・幕末から外国人が愛した「古き良き日本」の姿は、明治中期に急速に失われてゆく。富国強兵なのだから仕方ないが、他に方法はなかったのかと今では思う。
・明治期の二大外国人別荘地、日光、箱根の開発に際しては地元民間人の志の高さが目立つ。「日本人ではなく外国人から金をとる」と言い切るホテル経営者がいれば、自分たちで道路建設を行い、当時無きに等しかった水力発電所や火力発電施設まで自前で整備したのか(p94)。
・吉原遊郭の記述に関しては日本側の視点(『公認東亜案内』)、アメリカ人の視点(『テリーの日本帝国案内』)、現在の視点(『ミシュランガイドJAPAN』)それぞれに違いがあり、なかなか興味深い(p140)。
・いまでいう観光立国、クールジャパンの推進に政府が乗り出したのは1930年(国際観光局」設立)とかなり遅かったんだな(p163)。
・昭和12年の時点で「訪日外国人のリピーターに何を見せるか、あるいは体験させるか」「湘南に外国人向けカジノを設けるべし」等の有識者見解が飛び出し、まるで昨今の観光立国政策をみているようだ(p186)。歴史は繰り返す?
・O・MO・TE・NA・SHI。金谷ホテルのサービスが例として挙げられるが、確かに外国人に感動を与える親切さだ(p188)。
・第8章「現代の観光立国事情」には、増え続ける外国人旅行者とその趣味趣向(人気スポット)の分析が行われ、今後の打ち手が明確に提案される。国ごとに異なる人気度、訪問率(広島平和記念資料館等が顕著)、観光地としての魅力(気候と治安、文化・歴史、食、「自然」:p244)、外国人の考える「日本食」を踏まえての泊食分離、江戸城〇〇計画、日本人として観られること、観光公害への対応、マーケティング戦略等、観光立国・日本の実現に向けての多大なヒントが述べられる。

「日本人が外国に見せたいもの」と「外国人が日本を深く識るために見たいもの」のギャップは、明治の世から現代まで確かに存在する。また外国人旅行者の増大に伴って、日本人が知らなかった日本の良さを外国人が発見する事例(遠くは軽井沢、近年では佐賀)も増えるだろう。僕もときおり街で外国人旅行者を見かけるが、もし請われたら「相手の興味」に寄り添って、わが日本を案内するようにしよう。

外国人が見た日本 「誤解」と「再発見」の観光150年史
著者:内田宗治、中央公論新社・2018年10月発行