明治から戦前昭和までの間に、旅行手段(徒歩から鉄道)も旅行先(空間的な広がり)も大きく変化した。
本書は、明治・大正・昭和に日本で発行された旅行案内書を約600点におよぶカラー写真と解説文で紹介し、急速に変貌する近代日本の姿を浮かび上がらせる。眺めるだけでも楽しい一冊となっている。
・江戸時代中期より明治初期に各種発行された、徒歩旅行を前提とした道中記と名所図会。とりわけ図絵の豊富な名所図会は日本独特のスタイルとなる(p10)。たしかに、文章+地図のベデカーやマレーよりは楽しいかも。
・寛永4年(1851年:ロンドン万博の年)に発行された『淡路国名所図会』が昭和9年(1934年)になっても再版されていたのは驚きだ(p24)。
・江戸期の風景が残る日本橋。天秤棒を担ぐ物売りと洋装の人物、馬車が併存するなど、明治初期の名所図会の図版は楽しい(p24)。
・明治期の鉄道旅行案内書(鉄道路線図)を追ってゆくと、特に明治20年代に急速に路線の拡大したことがわかる。官設鉄道よりも私設鉄道のほうが多かったようだ(第3章)。
・大正期に鉄道院・鉄道省より発行された外国人向けの『An Official Guide to Eastern Asia』は日本、満州・朝鮮・シベリア、支那を紹介するものだが、完成度の高さがうかがえる。復刻版を販売してほしいくらいだ(第4章)。

個人的には「海上旅行と外地・植民地・外国の旅行案内書」のパートを興味深く読めた。
旅行案内書は実に多岐にわたるが、その系譜と内容の変遷をたどると、日本が急速に近代化する過程と、世界の距離が近くなる過程が輻輳する様相がよくわかる。歴史縦断的な旅行を追体験できた気分。

近代日本の旅行案内書図録
著者:荒山正彦、創元社・2018年5月発行
2019年3月7日読了
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近代日本の旅行案内書図録
荒山 正彦
創元社
2018-05-25