魅力あふれる「響け!」シリーズの集大成。これで最後かと思うと読むのを躊躇するが、ああ、それでもページを開かずにはいられない。フィナーレに向かって一行一行を大事に読み進めます。
・みぞれの通う音大でのコンサート会場。「いいよ。わたしはこのままで」と、首を横に振る希美の姿がとても切なかった(p84)。
・関西大会出場前のオーディション選考結果発表は地獄絵図。自身の結果にうろたえるヒマもなく、「百人分の喜怒哀楽」(p123)を背負って、久美子は部長としてすべてを受け止めなければならない。彼女の、部内に芽生え始めた不協和音を吹き消す様はみごとだ。
・宇治川の堤防を眺めながらの麗奈との口論は、久美子にとってどんな意味を持つのだろう(p186)。このシーンはきついなぁ。
・「手のひらににじむ汗」(p231)、関西大会の終盤、全国大会出場三校の発表の場での緊張感は尋常ではない。ここは僕も手のひらに汗を感じた。
・「正しい人」(p322)、僕もこうありたいな。
・久美子のメッセージは群を抜いており、感動的ですらある(p325~)。後悔をしないという選択。そして、最高の舞台へ……その先へ……。

瞼の裏で涙をぬぐう。そんな青春を超えて未来へつながるハーモニー=久美子たちの物語に最高の称賛を送りたい。著者様に感謝の思いを込めて「金賞」です。

響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章・後編
著者:武田綾乃、宝島社・2019年6月発行