男ひとり旅の美学

[旅の恥は書き捨て]ってことで。あと、BMWと読書感想文も。

2006年04月

政治・経済が表面だけの改革に終わり、前例と慣例に従う官僚主導のまま、世界の動きから取り残された日本。財政赤字だけでなく貿易収支も赤字となり、さらに全企業収益も赤字に陥る2017年の日本。資源・食料危機に翻弄され、円安を背景に一人当たりGDPがシンガポールや台湾に劣る「中進国」となった日本を舞台に、産業情報大臣となった織田氏の大改革が進められようとしていた……。

1980年代に代表される「過去の日本の栄光」を知る者(僕もそうです)にとっては実に辛い「没落街道まっしぐらの日本」と、その流れを変えようとする「新世代起業家兼政治家」の奮闘する姿が、好意的に描かれます。

「職縁社会が崩壊しても血縁社会や地域コミュニティが生まれるでもない。二十一世紀の日本人はみな、孤独なんだ……」

「国の重要な選択が、国民の選挙で決まると考える官僚はいない。官僚の発想では、選挙の結果はせいぜい、行財政がやり易いかやり難いかの違いだけである」

主人公の高級官僚・木下課長をはじめ、登場人物のほとんどが戦国武将、特に織田信長とその家臣のパロディとなっており、ニヤリとさせられる場面もあったりします。
15年以上前に読んだ「黄金の日々」よりも面白かったです。

平成三十年(上) 何もしなかった日本
著者:堺屋太一、朝日新聞社、2002年7月発行
2006年4月23日読了

平成三十年(下) 天下分け目の「改革合戦」
著者:堺屋太一、朝日新聞社、2002年7月発行
2006年4月29日読了

時代と場所を縦横に巡り、戦争を正当化する権威と進歩的理論、ローマ時代の「良心的兵役拒否」にはじまる平和を追求する人々の希求が、あくまでも学術的に記述される。

自民族中心主義が限度を超えると、戦争に雪崩れ込んでゆく。時代ごとにそれを克服する努力がなされ、幾多の人柱が犠牲になってきた。

国と国、もっと言えば人と人の交渉こそが重要であり、ここ数十年の国連にしても、主体はあくまでも国家と地域であり、あくまでも国連は「場所」にすぎないことを、つい忘れがちになる。

戦争犯罪に対する考えも変遷し、第二次世界大戦までは正当な戦争行為とされてきたことも、昨今では人道に対する罪、「戦争を始めた罪」として国際刑事裁判の対象とされるようになりつつある。(抵抗する某自由主義大国の姿がみっともなく映る。)

で、平和の条件とは何か?
資本主義社会の実現では不十分。民主化を達成しても十分ではなく、ナショナリズムの克服こそが重要である。当たり前のようだが、本書を読んで再認識した。

岩波講座 世界歴史25巻
戦争と平和 未来へのメッセージ
著者:油井大三郎、最上敏樹、長崎暢子、大久保桂子、他
岩波書店、1997年12月発行、2006年4月19日読了

2012年頃の東京と仙台を舞台に、特殊能力を手にした兄と、その弟の物語が展開します。
冒頭から期待させてくれるのですが、何かを成し遂げようとする半ばで物語は終わります。
目に見えない絆、受け継がれた「何か」、流れに抗う"意思"が本作品の主題なんでしょうか?

現代日本の閉塞感と庶民の諦観、小さな希望が現れた奇跡への、何も考えない大衆の"ベクトル"の恐さ。永遠に変わることのない「日本人の習性」が見事に描かれています。

「消灯ですよー」 第一部のラストでも効果的に使用される、この何気ない言葉が印象に残りました。

魔王
著者:伊坂幸太郎、講談社、2005年10月発行
2006年4月12日読了

4月10日からNHKで新しいアニメが始まった。
宮中料理人を目指す"少女チャングムの夢"物語だそうな。
http://www3.nhk.or.jp/anime/yume/

韓国で視聴率50%を記録したお化け番組「宮廷女官チャングムの誓い」の姉妹番組で、韓国MBCの製作だそうですが……。う~ん。あの顔は完全に子供向け番組。抵抗感あるなぁ。
それにしても若殿様とその護衛(従卒?)は凛々しいですな。女性視聴者狙いが"見え見え"ですが、お約束なんでしょう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E5%BB%B7%E5%A5%B3%E5%AE%98%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A0%E3%81%AE%E8%AA%93%E3%81%84

名探偵ポワロとマープルはそこそこ面白かったけれど、その後はヘタレ番組ばかりでした。(不思議の海のナディア、みたいなヒット作はもう生まれないのかな?)
ヨーロッパでもなく中国でもなく李氏朝鮮を取り上げた本作。その大胆な試みが功を奏し、注目されるかな? "反日"韓国メディアはどう報道するかな?

北朝鮮と並んで東アジアの平和を脅かす一大要因、共産党専制独裁国家である中華人民共和国。しかしIMFへの加盟を果たし、2008年にはオリンピックが開催される。上海万国博覧会の先には、力強い発展による揺るぎない経済大国・軍事大国の地位を中国にもたらす。結局は民主主義の片鱗も受け付けないまま、中国は国際社会に受け入れられたのか?
しかし、これがアメリカの長期戦略であること、すなわち中国の解体を目的としたものであり、確実にその方向に向かうであろうことが明快に記されます。(詳しくは本書で。)

それにしても日本"国"がすでに死に体であり、政府部門の積極的な民営化が必要であること、個人は世界をフィールドに生きるべき、等、大前研一先生の主張に通じるところがあります。井の中の蛙たちを"外"から俯瞰したら、やはりこのように見えるのでしょうね。

本書の収穫は他にもありますが、自らのアイデンティティを守りながらグローバルな自分を育む、すなわち自分自身を持つことを意識して上を目指したいと思います。
(人に言えない目標ってありますよね。)

今がどん底 這い上がるしかないじゃないか
著者:落合信彦、青春出版社、2003年4月発行
2006年4月10日読了

イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、アラブ諸国、中国、韓国で日本に関する事項がどう報道され、それがどう影響を及ぼすのか?

イラク戦争の事例。われわれ日本人は「自衛隊をイラクへ派遣はしたが、それでもアメリカとは違う」と思いがちだ。だが小泉首相とブッシュ大統領がクロフォード牧場で握手して微笑む写真がワシントンポストとニューヨークタイムズにデカデカと掲載されたことで、「日本とアメリカは一蓮托生」だと世界は認識した。無論、テロリスト側も。その帰結が外交官二名の殺害であった。

ノー・モア・ヒロシマの事例。イスラエルと対立を続けるアラブ世界では、ヒロシマ・ナガサキの意味をこうとらえている。「二度と過ちを繰り返しません」とは「二度と核攻撃を受けないよう、われわれは力を蓄えなければならない。そうだ、核武装しなければならない」
1998年に核実験に成功したパキスタン。当時のシャリフ首相はこう言った。
「ヒロシマとナガサキに起こったことは、日本が核兵器を保有していれば回避できたのだ」「だから(パキスタンの)核武装は当然の選択だ」
インド=パキスタンが一戦交えたカルギル紛争でもNPOと学生団体が「ヒロシマ精神による平和」を訴えたが、同じように受け取られたのだろう。

結局、われわれ自身が積極的に「正しい情報」を提供しないと、思わぬ方向へ話が進むんですね。

日本はどう報じられているか
著者:石澤靖治、池内恵、土生修一、他、講談社、2004年1月発行
2006年4月9日読了

マスコミ報道によれば「そろそろ景気が回復してきた」そうだが実感が沸かない。実はその正体は、加熱する中国特需によるものであり、日本が自主的に獲得したことではない。それでは、これまでの「デフレ」とは何だったのか……?
その答はグローバル経済の浸透による価格の正常化であり、世界的にまだまだ「バカ高い」日本の物価は、さらに下落することが明らかにされます。
いまや「年収600万円以下の下層中流世帯と下層世帯」が日本国民の80%に達するが、それでも世界的には十分な富裕層と言える。では何故、余裕が感じられないのか? それは、ありあまる公務員とごく少数の一次産業従事者、既得利権者を優遇する政治体制から脱却できないためであり、現在の経済システムがサラリーマン世帯の多大な犠牲の上に成立しているためである……。

日本経済は"不景気"などではなく、長期的な衰退に入っていること、すぐにヒト、モノ、カネを世界中から受け入れる準備をしないと「犯罪が蔓延し、老人ばかりが無気力に生きる2025年の没落した日本」が訪れることが明言されます。

本書の真骨頂は税制改革の抜本的変更の提言です。
現行のフロー課税からストック課税に変更しないと、近い将来に日本そのものが破綻し、以降、永遠に立ち直れないことが何度も何度も説明されます。
個人金融資産も雲散霧消し、最貧国に没落する悪夢……。

わずか1,600円です。買って読みましょう!

ロウアーミドルの衝撃
著者:大前研一、講談社、2006年1月発行
2006年4月8日読了

侵略者に対して勇敢に戦う、または果敢に抵抗するのではなく、あくまでも家族を護ると言う観点が新鮮でした。トム・クルーズも良い味を出しているし。

でも、ラストはありきたりの免疫オチでした。興ざめ。
それに、何か物足りないなぁ……そうか! ヒロインがいないんだな。
(10歳の娘さんではヒロインとは言えないでしょう。)

かつての勢いを無くしつつあるトニー・ブレア英国首相ですが、従来の社会主義の「良い部分」と自由経済の長所を生かそうとする政治手腕は評価できるものと言えます。1980年代のサッチャリズム、レーガノミクスに代表されるニュー・ライト、すなわち新保守主義路線からの脱却を説いた本書が、イギリス労働党に与えた影響が大きいとされています。

不平等の是正、すなわち資本主義をどう統御するかについては様々な議論が行われていますが、結局は野放しの自由経済は「弱肉強食」でしかなく、それが1990年代の経済危機(南米、ロシア、東アジア)を招いたこと、国別・地域別の貧富の差がますます拡大することは明白です。
本書では、資本主義の利点を生かしつつ、人間的に作り替えることが社会民主主義の目標の一つであり、魅力であることが明らかにされます。
第二次世界大戦終結後の政治の主流となった社会民主主義=高度福祉社会体制も、石油ショックを経て新自由主義に取って代わられます。冷戦の終結が社会主義を過去のものとしたこともあり、社会民主主義を立て直す議論が欧州で行われてきました。本書はその集大成とも言えます。

日本にも二大政党政治が根付くと期待されていますが、強者=自民党の政策を部分的に借用・改変し、あたかも自分たちの政策であるように振る舞う民主党=小自民党ではあまり期待できそうにありません。投票率の低下も納得できるというものです。
小沢さん、鳩山さんには耐えられないかもしれませんが、社会民主主義の考えを取り入れた政策を前面に押し出してはいかがでしょうか? 小泉さんに幻滅したサラリーマン世帯の支持率を確保できるかもしれません。

The Third Way : The Renewal of Social Democracy
第三の道 効率と公正の新たな同盟
著者:アンソニー・ギデンス、日本経済新聞社、1999年10月発行
2006年4月1日読了

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