男ひとり旅の美学

[旅の恥は書き捨て]ってことで。あと、BMWと読書感想文も。

2006年06月

第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制とその矛盾、金=ドル本位制とその崩壊後の為替の動静が語られます。
結局、持てるもの(資源と金、軍事力と政治力。要は米国)の欲しいままに翻弄されてきたことがよくわかります。
GATT(今はWTO)にしても、自由貿易を目指しながらも、EUと米国の農業保護を聖域にしてしまったし。

それにしても「今は昔」ですね。本書が著された1995年~1996年当時は、老いたりとはいえ日本経済の世界に占める位置づけは大きなものがあり、米国と東南アジア地域の貿易シェアに占める割合も日本がダントツでした。中国が日本に取って代わることを予想する向きもありましたが、それが現実になることを本気で予想した人はどれほどいたでしょうか。
すでにユーラシアではロシアとタッグを組み、中心国の地位を固めつつあります。やがて東アジアと東南アジアも日本から中国へと優先順位を変えるのでしょうね。
手をこまねいてきたのは我々日本人自身ですし、まぁ、自業自得か。

国際経済体制の再建から多極化へ
著者:石見徹、山川出版社・1996年10月発行
2006年6月26日読了

もはや既定路線である「米国一辺倒」に加速し始めた日本政府と国民意識に対し、メディアから距離を置き、知性と良心を働かせて深く考えることを説く寺島氏の、九・一一からイラク戦争終了後半年経過までの著述集。

三井物産時代にイランと米国に長く赴任し、特に米国の深層を知り尽くした著者の主張は、なるほど、耳を傾けるべきものが多々あります。

「"テロ撲滅と民主化推進のための戦い"とは、米国の国際責任を自覚した孤立主義脱却の現れなのか? 否、経済力と軍事力を背景にした米国の価値観の押しつけであり、ねじれたユニラテラリズムである」

「(イラクやアフガニスタンなどの)屈服しそうな都合の良い悪役に攻撃を加え、勝利を演出するだけの、本当の敵を見失った戦争である」

「瞬間風速的には米国の力の論理が突出しているが、世界は着実に国際法理と国際協調システムが機能する時代へと向かいつつある」」

「日本が長年唱えてきた、国連中心の国際協調主義、武力を行使しない平和主義は、結局は米国の都合により、いかようにも変更される程度のものだ。所詮、日本は米国の周辺国でしかない。そう世界の国々には映った」

「広く世界から敬愛される日本。それは武力を紛争解決の手段とはせず、大量破壊兵器の廃絶を、アメリカを含む全世界へ堂々と主張する日本である」

「日本人は時代と向き合うことを止め、ただ漂流していないか?」

米軍と自衛隊の一体化が進んでいますが、裏を返せば自衛隊のすべてを米国に掌握されると言うこと。いまでは考えられませんが、もし将来「米中同盟v.s.孤立した日本」の敵対関係が成立した場合、日本は最初から降伏を余儀なくされるわけで、長期間、国防を(実際には外交も)米国の力に頼り切った"ツケ"としては、あまりにも大きいと言えます。
無論、夢物語で済むようにしなければいけませんが、現況からすると「世界情勢」と言う名の米国の意思に流されて漂流して、気付けば「罠に嵌められた!」なんてことになりそうです。

本書の半分はイラク戦争と対峙した米国と日本の姿勢を質すものですが、「重心の低い知性、歴史軸と時間軸に裏打ちされた本物の脳力」、「市井の人の理性や品格が、その時々の判断に滲み出る」等々、味わい深いエッセイが新たな気持ちにさせてくれます。

これからも寺島氏の発言には、刮目して対峙したいと思います。

脳力のレッスン 正気の時代のために
著者:寺島実郎、岩波書店、2004年12月発行
2006年6月17日読了

その素直な感想です。

・小さくて良い。
・その分、ブレやすい。
・広角撮影は強力。だけど被写体を選ぶなぁ(月並みなものを撮ってもしかたがない)。
・SDカード挿入口がチャチで、すぐにイカレそう。
・PCへ取り込むための附属ソフトは、まるでタコ。期待させといて実はダメダメちゃん。
・青空と川面は想像以上に綺麗。
・デュアル・レンズはやはり話題になる!

ウダウダ並べるよりも、お写真をば。

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帆を閉じた海王丸。手前は進洋丸、左奥は神戸メリケンパーク・オリエンタルホテル。
神戸港・中突堤より撮影。

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実験船、ヤマト1。知る人ぞ知る、超伝導電磁推進船ですぞ! 今となっては展示されるだけですが、かつては海を進んだんですよ!

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これぞ23mmの醍醐味! 同じ場所からの撮影です。
ヤマト1と神戸海洋博物館。奥はホテルオークラ神戸。

次は、六甲山から撮ろうかな~~。

紛争を和解へと導くためには、価値観の転換が必須であることが身近な問題を例に取り上げて解説されます。なるほど、紛争当事者が個人や家族等、小規模であれば有効かもしれません。しかし、内部に様々な利害関係者を抱える国家間の紛争では、妥協一つとっても難しいのに、新しい価値観の容認と発想の転換を示して導くのには、よほど強力なリーダーシップが必要でしょう。

たとえばエジプトの故サダト大統領のように。
たとえばイスラエルの故ラビン首相のように。
たとえばアメリカの故JFKのように。
たとえば英領インドの故ガンジーのように。

彼らの共通点……和平へと向けて相手を信頼し、自国民を説得し、そして暗殺された……。
志を継ぐものがいれば、幸せというものですね。

和解の向けての第一歩が、自分と相手のことをよく知ることであり、当たり前のようで実は難しいのです。その一助として、深層文化の探求が提示されます。なるほどなぁ。

その他、経済(GDP至上は人生を破綻させる)、報道(戦争報道に偏る商業報道。実はNHKも似たようなものだが)の平和的な在り方、指導者の対話(議論ではなく!)の重要性が語られます。

国家レベルの大きな話ではなく、個人レベルから実践していきたいですね。(すぐ感情がでてしまいそうですが。)

平和を創る発想術 紛争から和解へ
著者:ヨハン・ガルトゥング、岩波書店、2003年8月発行
2006年6月7日読了

1947年、長く過酷な植民地支配から抜け出した英領インド。しかしマハトマ・ガンジーの理想を追い求める努力は実を結ばず、非宗教国家インドと、ムスリム国家パキスタンとに分離しての独立となった。そのパキスタンは、インドを挟んでの東パキスタンはベンガル人、イランに近い西パキスタンはパンジャブ人を中心としており、その風習、風土、主食は異なり、イスラム教以外の結びつきは皆無であった。
やがて東パは西パに支配される構図となり、かつての連合王国内における独立前のアイルランドのように、自国内植民地の立場に追い込まれていった。必然的に敵意は高まり、軍事政権による弾圧が火に油を注ぐことになった。

本書は、1970年代初頭にインドに駐在したNHK特派員の筆によるもので、ダッカ大虐殺の現場記録、東パキスタン独立運動、インドの介入とパキンタンとの戦争、そしてバングラデシュの独立までが克明に写し出されています。同時にソ連邦、米国、中国の動きと、国連の無力さが浮き彫りにされます。
米国の中国への接近によって転機を迎えた東西情勢と、この戦争へ及ぼした影響が明確に描かれており、興味深く読むことができました。

それにしても厳しいのは、貧困国家パキスタンイスラム共和国から独立した「最貧」国家バングラデシュ人民共和国の現実です。その国民一人あたりGDPは、1998年でなんと350ドルでしかなく、33000ドルの日本から見ると、まるで別の惑星の住民であるかのごとく感じてしまいます。
豊かな生活を楽しむことが当たり前になってしまった現代人は、ときおりテレビで伝えられる「第三世界のかわいそうな」状況に心を痛めることで、贖罪感から無意識に逃れている。もちろん、僕を含めて。そんなことを再発見した、日曜のうららかな午後でした。

第三次インド・パキスタン戦争 バングラデシュの独立
著者:高橋貞雄、日本放送出版協会・1973年9月発行
2006年6月4日読了

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