男ひとり旅の美学

[旅の恥は書き捨て]ってことで。あと、BMWと読書感想文も。

2006年09月

崩壊した家庭、昨日の親友たちが一転して敵性集団となる学校、傍観者から被害者への転落、転校、新たな悩み、母親への期待と、思い過ごし……。違う人種との邂逅、ふっきれた人生……。

「それほどお互いを好き合っているわけではないけどあたしたちは無意識下、青春のおままごとに憧れを持っていてありもしない友情に縋って仲良し劇を演じ……」

「あたしたちを動かしているものは本能ではなくいつも世間体だった。その中で唯一と言ってもいい、本能に従って自分の意思でしていることがいじめだ」

「怒り方も泣き方も笑い方も、人はどこまでもありふれている生きものだ。そんなあたしたちが世に放たれるとき、破壊されるものはなんだろう。あたしたちの心が守るものはなんだろう。この銃口はどこへ向かうのだろう」

現代高校1年生の重すぎる日常を描いた本作品、石原慎太郎が「太陽の季節」でデビューしたときも、こんな感覚を味わえたのでしょうね。
著者は1990年生まれ。本作で文藝賞を受賞したのが15歳ですか、期待できますぞ。

平成マシンガンズ
著者:三並夏、河出書房新社・2005年11月発行
2006年9月22日読了

バブル騒ぎに参加できず、凄まじい受験競争に晒され、就職は超氷河期。いざ実社会に出てみたら、平成大不況で下流社会の仲間入り。自然と目線は下向きになり、内向き志向と悲観論が世代の共通認識となる。イチローや中田は、特別な存在……。

団塊ジュニア世代に多く見られる、消費欲の減退(他の世代と比較して)、生きる目標の喪失感、内向き思想とその反動である超越志向等が、精神医学の現場に携わる著者の視点から分析されます。
団塊ジュニア世代の関心がマイホームとマネーだけに向かい、自分の狭い趣味に埋没するのではなく、社会全体の問題に目を向けさせるためには、何をすればよいのか……。

あと、夏目漱石の「こころ」の友人Kと先生。その決意と行動(自殺)に対し、男子学生と女子学生の受け取り方に大きな隔たりがある件は、興味深かったです。

貧乏クジ世代 この時代に生まれて損をした!?
著者:香山リカ、PHP新書・2006年1月発行
2006年9月15日読了

著者には珍しく勧善懲悪ありの企業ミステリー。

13歳。多感な年代の仲良し3人組の25年後。大手広告代理店に勤める営業マンの主人公、大手電機メーカ御曹司と結婚した元アイドル歌手、そして「主人公と性格が似ている様は、まるで二連星のシリウスのよう」と揶揄された「勝哉」……。
世には明るい話題なく、大手都銀による貸し剥がし、大手製造業による中小企業いじめ等を背景に、中島みゆき「地上の星」が登場します。

キーワードは「思い出、覚悟を決めた青年」そして「潔さ」でしょうか。

著者はかつて大手広告代理店に勤務していただけあって、勤務先の描写がリアルです。また、著者躍進の作品となった「テロリストのパラソル」のキーパーソンも登場し、思わずニヤリとさせられます。

シリウスへの道
著者:藤原伊織、文藝春秋・2005年6月発行
2006年9月10日読了

2002年に一方的に宣言された、アメリカのことだけを考えた米国の新戦略=ブッシュ・ドクトリン。そして、国連での手続きをボイコットして強行された2003年のイラク戦争。史上最強の軍事力を背景に遂行される"21世紀初頭のアメリカの行動"が、中東諸国と世界にどのような影響を与え、必然的に失敗するであろうことが解説されます。

軍事力に裏打ちされた"帝国主義への誘惑"。かつて19世紀の欧州が推進した「啓蒙主義」政策は、その歴史的な拡張志向と合わさり、21世紀の米国によって本格的に推進されつつあること、しかし一国の価値観を押しつけるには力不足であり、米国の孤立する可能性すら現実味を帯びる、と。
一方で、テロ組織はアラブ・イスラム諸国の理解を得られず衰退の道をたどること、現在の頻発するテロは、その最期の足掻きであることが解説されます。

金融・仲介サービス業等で成功したカタール等を除き、中東の社会・経済状態は深刻です。エジプトですら食料輸入率が80%を超え、食料・水不足に悩まされている……。
皮肉にも、医療技術の発達(死亡率減少)が急激な人口増加をもたらし、それが一人当たりGDPを年々悪化させました。たとえばサウジアラビアの場合、石油で潤う豪勢な生活を楽しむ8000人の王族以外は、衛生的な住居の確保すら困難なほど貧窮しているという……。サウジからイラクへ米軍基地の移転が完了した暁には、サウジの独裁政治体制も、転覆させられるのは間違いありませんね。

それにしても、上空5,000mの無人偵察機から発射・誘導される対戦車ミサイルと、ステルス爆撃機B2による"大量破壊兵器"の投射による地上殲滅戦……。従来の戦車戦等が急速に時代遅れにされる感じがします。

アメリカのグローバル化戦略
著者:福島清彦、講談社・2003年7月発行
2006年9月4日読了

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