男ひとり旅の美学

[旅の恥は書き捨て]ってことで。あと、BMWと読書感想文も。

2006年11月

三菱グループの始祖、岩崎家の本宅として明治29年に建築された重要文化財。出張の空き時間を利用して行ってきました。

上層階級の大邸宅です。設計を請け負った英国人のコンドル氏による洋館の設計図は石造りだったのですが、岩崎氏の強い要望によって木造二階建て+地下室に変更されたらしいです。(そのため、当初計画の三分の二のサイズになった。)

洋館2階には広いベランダがあります。これ、日本初のベランダだそうです。欧州にはベランダはなく、東南アジアの様式を模倣して設計されたとか。

すべての洋室に暖炉があり、すべて異なるデザインでした。凝ってますね。明治29年に建築された後、明治41年にガスが引かれ、暖炉はガスストーブに改造されたそうです。個人の邸宅にガスを引く。これも日本初だそうです。

2階の客室(12畳以上が4室)には大鏡が据え付けられています。ガラスは波打っていたのに、これは現在の鏡と変わらない! これも日本初。当時のガラス工芸技術の粋で、姿見ではなく装飾の一種とされたそうです。シャンデリアみたいなもん?

2階の客室の壁紙は、明治の技法で2003年に復元されました。和紙に錫を塗り、ワニスを塗ると、黄金色に。凹凸の凹部に塗料を塗り、豪華絢爛な壁紙の完成です。すべて手作業になるこの芸術品、日本では参議院、一部の大臣室にしかなく、パンピーが見ることができるのはここだけだそうです。

サラリーマン(サラリーマシン?)には時間がありません。1階はゆっくりと見られませんでした。残念!
小貫さん(ボランティア・ガイド。初老の紳士)、丁寧な解説をどうもありがとう。

それにしても、周囲のマンション群と国の合同庁舎が景観をぶちこわしです! 近くの湯島神社には外国人観光客が訪れていたが、なんて思っただろうか?
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(奥に見えるのは東大病院)

決して景況感の良くない日本が、なぜ発展途上国とその国民に援助を行う必要があるのか? 高い税金を払っているのだから我々に還元するべきなのに、外国の援助を行うのは何故か? 本書はこれらの問いに簡潔に、そして説得力を持って答えてくれる。
援助の目的。それは慈悲や愛からではなく、日本の国益のためだ。日本の国益とは「相対的に自由な世界経済体制の維持であり、そのためには、発展途上国の持続的成長の確保が必要」であり、それが「第三世界の安定につながり」長期的に見て日本国民の国益になると著者は説く。
また、ODAの金額ばかり増やしても片手落ちで、農産物の輸入障壁を撤廃する、あるいは低減する等の政策が伴わないために、政策一貫性の無い自己満足の世界に陥る危険性も指摘される。
「日本国内の既得権益をこわしても自由貿易体制の進展に日本は血を流すべき」であり「公正なグローバリゼーション・日本モデルを打ち出すべき」との主張には拍手を送りたい。

著者は、長期的視野に立った国益に基づく援助こそ中心にするべきで、積極性な人道的援助は得策ではない、との立場だ。日本の政治的能力と影響力が貧小であることがその理由だ。そして憲法解釈上・能力上の問題からPKO、国連平和維持活動への参加には反対の立場だ。唯一、この点だけが不満に思った。
たとえ能力で劣っていても、積極的に参加するべきだと僕は思う。経験の積み重ねが貴重な財産となり、やがて政治的能力に転化することに望みをつなぐために。

日本の国際貢献
著者:小浜裕久、剄草書房・2005年11月発行
2006年11月26日読了

2006年3月の米国防総省の報告書に「中国がアメリカを攻撃する能力を持った」と明記され、太平洋における米軍"トランスフォーメーション"が、明らかに中国軍を意識して編成されていること、すでに南米、中央アジア、中東、アフリカ大陸で米中の「冷戦」が始まったことが、著者の豊富な人脈からの情報と重要人物へのインタビューによって示されます。
しかし、この新「冷戦」は米ソ間のそれと異なり、イデオロギーではなく国益を巡る争いであることが大きな違いである、と。何より看過できないのは、日本はアメリカによって積極的に「護られない」ことです。たとえ尖閣諸島が中国軍によって占領されても、日本が積極的に奪回を試みない限り、米国は動かない。この冷徹な「近い将来」が本書に記されます。
北朝鮮・韓国はもちろん、政治的・軍事的圧力により、すでに東南アジア諸国は「親中国」と成り果てたこと。日本・米国と共同歩調をとれる民主主義国家はオーストラリ、ニュージーランド、台湾を残すのみとは……。

先日2006年の11月に米国で行われた中間選挙では、勢いに乗る民主党が勝ちました。ヒラリークリントン上院議員をはじめ決して魅力的な政策があるわけでなく「イラク戦争は失敗」の1点だけが争点となり、この結果です。(それでも、どこぞの国の「郵政民営化」選挙ショーよりマシですが。)
ブッシュ政権中枢、具体的にはチェイニー副大統領に代表される保守強行派路線の事実上の敗退であり、その「顔」ラムズフェルド氏は更迭されることが決まりました。
さて2008年の大統領選挙で民主党政権が誕生するとしましょう。クリントン大統領時代の「日本は素通り、中国は戦略的パートナー」世界が再現するわけで、これは我々日本人にとってはありがたくない状況です。中国は徹底した「日本陥れ」キャンペーンを世界に対して行うでしょうし、弱々しい日本の政財界に対する「親中国化、見返り付き取り込み」戦略を実行することでしょう。そのうち国会ではなく、テレビ番組で国民への刷り込みを謀る先生が現れるやもしれません。「冷たいアメリカではなく、母なる中国と同盟を結ぼう」なんて具合で。気をつけないと。

米中冷戦の始まりを知らない日本人
著者:日高義樹、徳間書店・2006年6月発行
2006年11月12日読了

冷戦終了後、「911」以前の国際関係学の書。
自分の生活の場から国際社会を見据え、逆にグローバルな視点から生活者としての自分に光を当てる、か。なるほどなぁ。
第一次世界大戦の衝撃は国際政治の芽を生み、第二次世界大戦の焦土は植民地経済を崩壊させ、国際経済の進展を促すこととなった。では、冷戦の静かな終結は何を生み出したのか? 徐々にではあるが、"国際法理"の枠ができつつあるのではないか? 現在の傲慢な米政府では無理としても、次の「ヒラリークリントン政権」で推進されるのではないか、との期待が膨らみます。

国際関係学講義
編著者:原彬久、有斐閣・2001年3月発行
2006年11月6日読了

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