男ひとり旅の美学

[旅の恥は書き捨て]ってことで。あと、BMWと読書感想文も。

2008年09月

出張先の近くにある中華料理店で偶然、コミックスを手にし、夢中になって数巻を読んだ。過去にアニメ化されたことも知って気になっていた作品だ。
先日機会があり、DVD-BOX初回限定版全5セットを大人買いした。
4話収録DVDが20巻。ドイツビール"レーベンブロイ"を片手に、さっそく1巻から観賞開始だ。

天才脳外科医、テンマ。単独西ドイツへ渡り、感銘を受けた論文の著者である病院長の下で働く日々。すぐに頭角を現し、外科チーフとして腕を振るう毎日。
手術の順序、命を序列づけて考える病院の姿勢に疑問を抱く。そのテンマに病院長の娘、婚約者であるエヴァは言った。「当たり前じゃない、人の命は平等じゃないもの」

ある日、東独から亡命した家族の惨殺事件。その生き残りである少年の手術が、彼の人生を変えてゆく。
頭部に銃弾を残す少年の手術を前に、後から運ばれた市長の手術を行うよう命令されたテンマ。"病院長のいいなり"ではなく。自らの意志で少年の手術を断行する。その決断が、病院での彼の地位と名声を剥ぎ取ることになる、
病室で絶望するテンマ。何気なく放った病院長への悪言が、少年の耳に届く。

一変した環境。外科部長として充実した日々を過ごし、本当の医者として患者に慕われて暮らすテンマの元に、成人した少年が姿を現す。
モンスター。その意味は回を重ねるごとに明らかになる。

ニナ・フォルトナー。いわば本作品のヒロインだが、少年の双子の妹である彼女の運命も残酷だ。

本作品、いわゆる萌え要素はなく、視聴者に媚びを売る作品ではない。ドイツの街並みと生活、風俗を忠実に再現し、その中で繰り広げられるミステリーは、一級のエンターテイメントだ。
声優陣はいわゆる洋画吹き替えのベテランが多く、実に観賞しがいがある。
その中にあって若手の能登麻美子の演技が特筆ものだ。(アンゴル・モアの声の人なんだなぁ。)

それにしても、かつての婚約者エヴァの変わりよう。一言で表すと"ワガママ娘"なのだが(こんな女はイヤだなぁ。)、破綻した生活と精神が、テンマへの愛情を復讐心へと転換する。

24話「男たちの食卓」で一区切り。テンマへの復讐に燃えるエヴァは、最後はテンマを狙う組織の男を裏切り、そのために撃たれる。最後の食卓のシーンでは、エヴァは落ち着きを取り戻した表情。山荘の主と会い、自分に足りなかったものを悟ったのだろうか。
次はミュンヘン編だ!

浦沢直樹さんの作品はYAWARA!しか知らなかったのだが、20世紀少年やPLUTOも読みたくなってきたなぁ……。

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18世紀フランス文学なんて、スタンダールの赤と黒しか記憶にない。
マノン・レスコー。この名前を初めて目にしたのは、篠山城近くの大正ロマン館で買ったメモ帳、竹久夢二が描く「マノン・レスコーの唄」イラストだ。
しばらく買ったことすら忘れていたが、2008年8月24日の神戸新聞「豊かな読書 鴻巣友季子さんの一冊 マノン・レスコー」を目にし、急に読みたくなった。幸い、本棚を漁ると出てきたので、アイスコーヒー片手に重い文学全集を開いた。

マノン。このわがままで贅沢を知り尽くし、それでも男を夢中にさせる女!
貴族の息子である主人公はたちまち恋に溺れ、学業も将来も投げ捨て、移り気な女に夢中になる。犯罪に手を染め、友を裏切り、幾度かの投獄も苦にせず、マノンに夢中だ。
警視総監の言葉がすべてを語る。
「ああ、恋よ、恋よ! おまえはついに思慮分別と和解することはないのか?」
情欲に溺れることを望むのか、名誉の感情を選ぶのか。監獄へ迎えに来た父親の嘆きもむなしく響き、主人公はマノンと数回目の逃亡を図る。

囚人としてアメリカへ送られる主人公とマノン。偽装結婚がばれたあとの転落人生。権力=総督の前に人権の尊厳もむなしく、ただ逃亡の日々。
最愛の人を亡くした主人公は、神との対話を通じて精神を保つ。最後に現れるのが、ただ主人公を捜しに危険を冒し、単身アメリカへ渡ってきた友人であり、すべてを超越した友情が物語を締めくくる。救いようのない人生でも、持つべきものは友、か。

HISTOIRE DU CHEVALIER DES GRIEUX ET DE MANON LESCAUT
マノン・レスコー
(シュヴァリエ・デ・グリュとマノン・レスコーの物語)
著者:アベ・プレヴォ、集英社・1990年9月発行
集英社ギャラリー[世界の文学6] フランスⅠ所収
2008年9月14日読了

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