出張先の近くにある中華料理店で偶然、コミックスを手にし、夢中になって数巻を読んだ。過去にアニメ化されたことも知って気になっていた作品だ。
先日機会があり、DVD-BOX初回限定版全5セットを大人買いした。
4話収録DVDが20巻。ドイツビール"レーベンブロイ"を片手に、さっそく1巻から観賞開始だ。
天才脳外科医、テンマ。単独西ドイツへ渡り、感銘を受けた論文の著者である病院長の下で働く日々。すぐに頭角を現し、外科チーフとして腕を振るう毎日。
手術の順序、命を序列づけて考える病院の姿勢に疑問を抱く。そのテンマに病院長の娘、婚約者であるエヴァは言った。「当たり前じゃない、人の命は平等じゃないもの」
ある日、東独から亡命した家族の惨殺事件。その生き残りである少年の手術が、彼の人生を変えてゆく。
頭部に銃弾を残す少年の手術を前に、後から運ばれた市長の手術を行うよう命令されたテンマ。"病院長のいいなり"ではなく。自らの意志で少年の手術を断行する。その決断が、病院での彼の地位と名声を剥ぎ取ることになる、
病室で絶望するテンマ。何気なく放った病院長への悪言が、少年の耳に届く。
一変した環境。外科部長として充実した日々を過ごし、本当の医者として患者に慕われて暮らすテンマの元に、成人した少年が姿を現す。
モンスター。その意味は回を重ねるごとに明らかになる。
ニナ・フォルトナー。いわば本作品のヒロインだが、少年の双子の妹である彼女の運命も残酷だ。
本作品、いわゆる萌え要素はなく、視聴者に媚びを売る作品ではない。ドイツの街並みと生活、風俗を忠実に再現し、その中で繰り広げられるミステリーは、一級のエンターテイメントだ。
声優陣はいわゆる洋画吹き替えのベテランが多く、実に観賞しがいがある。
その中にあって若手の能登麻美子の演技が特筆ものだ。(アンゴル・モアの声の人なんだなぁ。)
それにしても、かつての婚約者エヴァの変わりよう。一言で表すと"ワガママ娘"なのだが(こんな女はイヤだなぁ。)、破綻した生活と精神が、テンマへの愛情を復讐心へと転換する。
24話「男たちの食卓」で一区切り。テンマへの復讐に燃えるエヴァは、最後はテンマを狙う組織の男を裏切り、そのために撃たれる。最後の食卓のシーンでは、エヴァは落ち着きを取り戻した表情。山荘の主と会い、自分に足りなかったものを悟ったのだろうか。
次はミュンヘン編だ!
浦沢直樹さんの作品はYAWARA!しか知らなかったのだが、20世紀少年やPLUTOも読みたくなってきたなぁ……。