男ひとり旅の美学

[旅の恥は書き捨て]ってことで。あと、BMWと読書感想文も。

2008年12月

著者はインド系アメリカ人。2000年に「停電の夜に」で華々しくデビューし、長編「その名にちなんで」は映画化された。この短編集も、アイルランドはフランク・オコナー国際短篇賞を受賞と言う、注目の作家だ。
表題作のインド移民2世の娘と父の物語をはじめ、ジワっと胸に残る中・短編が詰められている。

文化のまるで異なる新天地で無口な夫と過ごす日々。遠い故郷であるインド・ベンガルに思いを馳せる何もない日々。突如現れた年下の同郷人との楽しい日々は、新たな恋人の出現によって終焉を迎える。落胆する母を横目に、7歳の"私"と血縁のない叔父さんとアメリカ人の"おばさん"との刺激的な毎日はそれでも楽しくて……。(Hell-Heaven)

特筆するべきは、やはりヘーマとカウシクだろう。30年の時から切り取った三つの時間の、二人の物語。"Once in a Lifetime"は少年と少女の邂逅と、少年から打ち明けられた秘密がヘーマの口から語られる。語り先は現在のカウシクだ。"Year's End"では成長したカウシクが語る。大学の寮にかかってきた"父親の再婚"を告げる電話。新しい母と二人の妹への接触。必然的に起こった衝撃的な事件。ヘーマを思い出しながら語る彼は、それでも冷静だ。
"Going Ashore"は39歳の報道カメラマン=独身のカウシクと、37歳の女性博士=ローマ研究者であり、見合い結婚に踏み切るヘーマの物語。ローマでの出会いは必然か、偶然か。
タイでの津波が、すべてに終止符を打つ。

本書に収められた作品に通底する概念、それはアイデンティティだろう。
アメリカで生まれ育ったインド系米国人。親の世代とは異なり、彼あるいは彼女の自我はアメリカ人そのものだ。祖父や母親からはインド人の風習を教えられ、"はしたない"米国人と付き合うことを咎められる。移民の宿命として、成功なき者は日陰者として生きるしかない。そして一歩でも外の世界へ踏み出すと周りからは「インド人」として扱われる現実……。イギリスに生まれ育った著者の体験が生きていると思う。

神戸新聞の書評欄で知り、しばらくして明石のジュンク堂で買ってきたんだが、納得の出来だ!

Unaccustomed Earth
見知らぬ場所
著者:ジュンパ・ラヒリ、小川高義(訳)、新潮社・2008年8月発行
2008年12月31日読了

前からブルーレイが気になっていたが、冬のボーナスが出たのを機に、思い切って購入することとした。
そうなると自室のアナログ17インチテレビでは役不足だろう。一緒に買い替えることとした。
Blu-ray HDDレコーダは前から決めていたパナソニックDMR-BW830だ。楽天で109,800円で購入。
20V型液晶TVはシャープのAQUOS LC-20D30-Gで、これも楽天で56,800円で購入した。

2008年にもかかわらず、わが家のテレビ・ビデオ関係は総アナログ環境。しかも明石海峡大橋の影響により、通常のUHF/VHFアンテナでの電波受信が困難となっており、行政の用意した共同アンテナ経由で視聴している。
地デジ対応製品は初めてだが、以前、近所の人に教えられた「地デジも共同アンテナ」の言葉を頼りに、そのまま接続した。

うん、映る。NHKが感動的にきれいだ。ところが……だ。
4chや8chはブロックノイズの嵐。どういうことだ?
アンテナレベルを確認すると、基準値60に達していない。
考えうる対応策は
その1:ブースターを付ける?
その2:まさか、ケーブルテレビに加入しなければならない?

意気消沈。2011年以降はテレビを見るな、と? 地デジ移行を強行する政府が憎らしく思えてきた。
どうしようかと悩むうちに休日は終わり。結局、20型AQUOSは親に徴用され、居間のテーブルに置かれることとなった。

理由は不明だが、時によっては民放も綺麗に映る。こうなると欲が出る。居間の26型テレビは1995年製。13年も使ったんだから買い替えても良いだろう。ボーナスも出たし。

と言うわけで、32V型液晶TV、シャープのAQUOS LC-32DS5-Bを買ってしまった。
フルハイビジョン、倍速駆動液晶だ。
ブラウン管TV引き取りとリサイクル料金を含めて122,885円はお買い得だろう!

最初はHDD録画の可能な東芝32H7000を考え、家電量販店で下見したのだが、ピンとこなかった。高級機種売り場へ足を伸ばし、LC-32DS5の映像を見て「全然違うやないか!」と衝撃を受け、購入を決意したのだ。(で、これも楽天で購入した。)

それでも、ブロックノイズの問題は残ったままだ。もしかして、並行フィーダー線を使っていることが間違いなのか?

ホームセンターをうろつくと……いいものがあった!
300オーム並行フィーダー線と75オーム同軸ケーブルを中継する整合器、マスプロ電工のMAT10F-Pだ。同軸ケーブルは使わずに、テレビ推奨の付属ケーブルを接続することとした。

効果テキメン!
これまで不調だったNHK教育、4ch毎日、6ch朝日、10ch読売がウソのように綺麗に映る。テレビ大阪も(アナログだけど)ノイズが激減した。
アンテナレベルを確認すると、基準値60に対し、どの局も80以上ある。

これで快適な年末年始を過ごせるぞ!

[余談]
MAT10F-Pのパッケージには「マスプロの規格表に絶対うそはありません。ご理解と信頼あるデータにご期待ください」なんて書いてある。一般の人は規格表なんて読まないと思うけどなぁ。

アメリカ同時多発テロにより、その存在がクローズアップされた「イスラム過激派」。本書は、20世紀初期からの複数の水脈から、60年代から80年代にかけて中東、中央アジア、アフリカ、東南アジアに拡散し、90年代に大きく変貌したたイスラム・テロ・コネクションの姿を明らかにする。

イスラム・テロリズムの起源として、血の復讐の掟を持つエジプト・上ナイル地方の、英国植民地支配に対抗する中で勢力を伸ばしたモスレム同胞団、殉教思想を持ち、イラン・イスラム革命によって力を得たシーア派イスラム、インド亜大陸で日常的にヒンドゥー教徒と対立したムスリム聖職者集団が上げられる。

モスレム同胞団は、元々互助会のような組織であるのだが、一部の強硬派がそれまでの「イスラムの敵を殺せ!」から「イスラム回帰を邪魔する者は皆殺しにせよ!」へと思想を進化(?)させ、現在のイスラム過激派の思想の拠り所となった。政教分離国家の元首をも暗殺の標的にし、イスラム原理主義国家のサウジアラビア、革命後のイラン、スーダンがこれを経済面で支援し、移動等の面で便宜を図っている。

イラン・イスラム革命の熱波はレバノンに飛び火し、そこで結成されたのが神の党=ヒズボラだ。殉教思想を武器に自爆攻撃を繰り返す「狂信者集団性」と、外国人誘拐等の「犯罪者集団性」の融合したテロリスト集団であり、その活動はイスラエルやアラブ諸国にとどまらず、南米にまで及ぶ。

インド・カシミール地方のゲリラ組織。彼らは、反インド活動を目的にパキスタン軍統合情報局が設立されたとされる。インドからの分離独立当時から政治、軍事、経済に強い影響を持つパキスタンのイスラム協会を背景とするISIは、決して表面に出ることなく、彼らを指揮し、カシミールとインド国内に争乱を引き起こしてきた。

これらの系譜が、ソ連の崩壊後、アフガニスタンとパキスタンを舞台に融合、再編成され、アルカイダを中心とする強力なテロ・ネットワークへと発展した。

エジプトの最強硬組織「ジハード」の首魁、アイマン・ザワヒリと、アサマ・ビン・ラディンが手を結び、前者は事実上、アルカイダのナンバー2となった。パキスタン、バングラディシュ、カシミール、フィリピン等のイスラム組織が加わった強大な組織は、90年代後半になり、いよいよアメリカに牙を剥いた。アフリカでの大使館爆破事件、駆逐艦爆破事件……。
その流れの延長に、世界貿易センタービルへの攻撃が行われたのだ。
警告はあった。イエメンの米軍艦艇は沖合に避難したし、中東各国、東南アジア各国、そして日本にもテロへの警戒が呼びかけられた。しかし、まさか米国本土で大規模なテロが実行されるとは、思いも寄らなかったのかも知れない。

さて、2008年11月にムンバイ同時多発テロを引き起こしたのは、ラシュカレトイバ(Lashkar-e-Taiba ラシュカル・エ・タイイバ=純粋な軍隊)とされている。カシミール地方でヒンドゥー教徒を殺戮してきたこのテロ集団も、活動拠点はパキスタンにあるとされる。アルカイダの関わりも取り沙汰され、インドとパキスタンの軍部の動きも穏やかでは無い様子。ほんの数十人のテロ集団が国際政治に及ぼす影響は計り知れないものがある。

イスラムのテロリスト
著者:黒井文太郎、講談社・2001年10月発行
2008年12月7日読了

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