男ひとり旅の美学

33の国と地域、南極を含む七大陸を踏破! 海外旅行歴28回の「旅の恥は書き捨て」です。愛車BMW M3と読書感想文も。

2010年04月

キップリングとほぼ同時代に活躍した英語作家、コンラッド。実は彼は没落したポーランド貴族であり、船乗りでもあった。文壇デビューは実に37歳。これまで「闇の奥」以外読んだこと無かったが、短編集を手に入れたので開いてみた。

「文明の前哨地点」An Outpost of Progress(1897年)
アフリカの支配に乗り出すイギリス人。確保した地所を拠点に貿易を行い、富を本国へと集約するシステムは、帝国主義の特徴のひとつだ。現地人の協力者は、内心では当然、支配者を利用することで、我の勢力を維持することに関心がある。
雇われ白人は、つい自分の立場を忘れるときがある。本当の支配者にこき使われる自分の立場を。異質の境遇、半ば見捨てられた僻地での任務は、精神に破綻を求めるのか。壊れていく白人たちを見つめる現地人の協力者が、実は一番強いのではないのか。

「秘密の同居人」The Secret Sharer(1910年)
疎外感を秘めて任に当たる新米船長。前代未聞の"船長による当直"を遂行中、夜中の船外に全裸の男の姿を発見する。
タイを出港してカンボジア近海の小島までの短い期間の、自分以外に所在を知られていない逃亡者との同居生活。孤独者同士の連帯感。孤独な船上で孤独な存在の自分たち。この辺りの感情が良く表現されている。
最後の"帽子"の使い方がうまいな。

「密告者」The Informer(1906年)
無政府主義者の悲しい物語。
どんなに強固な"信念"も、最後は恋心に道を譲る、か。そのために身を滅ぼしても、本望だったんだろうな。

「プリンス・ローマン」Prince Roman(1911年)
プロイセン、ロシア、オーストリアの三大帝国に分割支配されながら、独立の夢を捨てきれない悲劇の国、ポーランド。そんな幻想国家の貴族階級にできることは、占領国を影で罵る大衆の意見に同調するぐらいだ。
その中にあって、断固、民衆の側に付き、ツアーリの近衛を辞職し、ポーランドの反乱に参加した若い貴族の、作中とはいえ、その尊い人格には感嘆させられた。そして、その後の苛烈な運命も、されに乗り越えたあとの「さらなる挑戦」は、偉人の在り方を教えてくれる。国が分割され、抑圧され続けたポーランドの民だからこそ書けた作品か。
ローマン・サングスコ公爵=実在の人物をモデルに書かれたと言うから、感動もひとしおだ。

「ある船の話」The Tale(1917年)
男の語る「部隊長」の決断が、実は本人である「男」に執拗に後を引く。自分の殺害した多数が無実の衆であったのか、犯罪者集団であったのか、いまもってわからない。
人間の信心と気高い行為を信じるあまり、正義、礼節、慎み深い感情を嘲笑う偽善者を決して許しておけない、一軍人としての自分。
最高指揮官としての決断の是非が、死ぬまでのしかかる。現実から逃げる術はなく、ただ女に語って聴かせるだけの日々。この苦悩、分かるような気がするなぁ。

それにしても、コンラッド。反乱に荷担した貴族の息子として、人生のスタート地点から足かせ付きだったとは知らなかった。船員として流れに流れ、最後にイギリス国籍を取得するまでの、まさに波乱の人生。船員生活での多彩な経験が、その著作にも独自の暗い影=罪人、孤独人、国家の圧力を感じさせるようで、実に味わい深い。

池澤夏樹=個人編集 世界文学全集の第Ⅲ集に「ロード・ジム」が収められるようだ。楽しみだぞ。

コンラッド短篇集
著者:ジョウゼフ・コンラッド、井上義夫(編訳)、筑摩書房・2010年1月発行
2010年4月4日読了

コンデジを新調した。
愛機Kodak V570。特徴ある広角23mm相当レンズが風景写真で性能を発揮し、晴天時には鮮やかな色調の写真を得られる。それでいて携帯電話より小さい。まさに観光旅行にベストな選択だったのだが、夕方以降は冴えないのだ。
・ロンドンの夕焼けに染まるセント・ポール大聖堂
・闇夜に鮮やかに浮かぶニューヨークの摩天楼
・美術館の仄かな灯りでも圧倒的な存在感を放つ、ルーベンスの重厚な絵画
これらが、どうしてもイメージ通りの写真にならず、何度、忸怩たる思いをしたことか。

したがって、次のカメラは軽量かつ、夕方以降も使えるレンズの良いカメラと決めていた、

S90はF値2.0と小型なわりに良いレンズを持つようだ。だが触ってみると、欲張って機能を詰め込んだ感じがあり、買う気になれなかった。

G11も気に入ったのだが、ポケットに入らないので今回はあきらめた。いつかは買いたいが。

DMC-LX3のポテンシャルは抜群に高いようだが、レンズカバーの脱着が面倒なのは、CONTAX TVSでイヤというほど経験済みだ。

SONYのHX5Vの評判は良いが、動画はあまり撮らないし、バッテリーの持ちが悪いようだ。V570の前のSONYデジカメは、2年目を過ぎたあたりから、すぐにバッテリ切れを起こすようになった。新品でも持ちが悪いのに、この先の状態は目に見えている。
それに現物をみると、結構分厚い。店員さんの説明では、裏面照射CMOSのせいらしい。

最後はリコーのCX3だ。夜景に強いと歌うコンデジらしいが、SONYの裏面照射CMOSデバイスに頼っている。入口であるレンズ性能はどうだろう。それに故障も多いと聞く。デザインと持った感じは良いんだが……。

で、Nikon COOLPIX S8000に決めた。ケーズデンキで27,000円だ。ニコンのオリジナルポーチ付き。
キムタク表紙のカタログには詳しく書いていないのだが、EDレンズというのが良いらしい。
コンデジの主流デバイスであるCMOSは急激に進化し、Sonyが開発した裏面CMOSは性能は良いが高く、価格押し上げの要因になっているそうで……。
で、CCDかつレンズ性能に重きを置いたCOOLPIXにしたのだ。なにより実際に触ってみて、一番「ピン」ときたのがこれだ。デザインも好みだし。(これ、重要。)

最終的な購入を決定づけたのは、店員さんの丁寧な説明だ。
実は下見だけしてネットで買おうか、とも思っていた。コンデジレベルの裏面CMOSとCCDでは画像に大差ないこと、広角25mmと高倍率ズームの両立を歌うコンデジは、肝心の画像が期待できないことも聞いた。僕のカメラ・スタイルは、旅行で街の風景と建物、美術品を撮影するのが主体で、少し動画を撮影するくらい。高級コンデジは素晴らしいが、それだけの価格のする芸術品を使いこなせるのだろうか。
で、各機種を触りながら、話をしながら、迷いながら……よく40分もつきあってくれたもんだ。

ストロボ発光部がポップアップするギミック(笑)も購入を後押ししたかな。

よし、これで来週の上海旅行も面白くなりそうだ。

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