男ひとり旅の美学

[旅の恥は書き捨て]ってことで。あと、BMWと読書感想文も。

2010年11月

本書を読み終えての素直な感想。それは、人文書を主要な対象とする研究者の世界と、文芸書あるいは新書等を主な購読対象とする一般読者の乖離を感じたことだ。

人文書、特に大学等研究機関に軸足を置く学術書の著者にとって、いわば出版物はキャリアを彩る研究成果のひとつになる。この類の出版物はまさしく公共の益に還元されるものであり、国あるいは公共機関により管理と幅広い公開、それも無償公開が望ましいだろう。
一方、現行の著作権制度に依存する、いわば印税生活を営む作家にとっては死活問題だ。現在の図書館にしても、幅広い層に著書を知らしめる効果は期待できるものの、その実、書店での売り上げを妨げる側面を持つアンビバレンスな存在だ。これが「公共の益」を前面に出されたらたまらない。ならいっそのこと、AmazonなりGoogleのシステムに依存するほうがマシというもの。

で、将来的にはこうなるのだろうか。

人文書(発行部数3,000部でベストセラー)は公共機関に買い上げてもらう。
その利益を出版社は次の企画の原資とできる。

文芸書、あるいは書店ならびにコンビニの出版物売り上げの大半を占めるであろう雑誌類は徐々に店頭から姿を消し、電子書籍にとって代わられる。電子書籍は従来のテキストだけでなく、映像、音声データが融合された出版物となる。
(10年くらい前のゲームの一分野を築いたサウンドノベル、ヴィジュアルノベルを思い出したぞ。)

漱石全集(岩波書店)にしろ、最近入手した「モダンガールの誘惑」(平凡社)にしろ、その素晴らしい装丁と、手にしたときに重みというか実物感は、電子書籍(Android版スマートホンね)では得られない充実したものがある。これを味わえなくなるのはもったいないなァ。

書物と映像の未来 グーグル化する世界の知の課題とは
編者:長尾真、遠藤薫、吉見俊哉、岩波書店・2010年11月発行
2010年11月30日読了

ニューヨークやワシントンではない、進歩から取り残されたような現代アメリカの架空の田舎町、フランコーニア。この町には退屈な日常しかない。かつてのアメリカの夢は失われ、モラルの崩壊した、生と死の狭間で平凡な愛憎劇が今日も繰り広げられる。

両親の離婚と父親の再婚、母親の乳ガン、エリートコースから転落して麻薬で自滅した兄。親しかった祖母の死。高二で妊娠して退学した親友。真実の愛のハズだった初恋にも破れた高三の夏。これでもか、とたたみかけるような事態を10代のグレーテルを襲う。彼女は耐え抜き、閉塞感に覆われた故郷を抜け、ニューヨーク、ロサンゼルスへと羽ばたき、自立した女性の道を突き進む。

高二で妊娠、そして結婚を選んだジル。夫と三人の子どもに囲まれ故郷に根を生やし、今日も平凡な日常を生きる。

グレーテルとジルの相互の羨み。決して表面化しないそれは、自分にないものへの憧れを長年の友に今日も見い出し、胸にしまい込まれる感情だ。

「グレーテルはこれが人生の決定的な瞬間であることを意識した。ここにとどまるか、逃げ出すか。自分の一番求めているものに背を向けて、そのあとずっと後悔しながら生きる、わたしはそういう人間だろうか」(124頁)

本作のキーワードは"運命"だ。運命=環境と言い替えても良いだろう。数年後のジル会話に登場する、自殺した二人の少女は運命を甘受した結果としての象徴であり、グレーテルは運命に抗って人生を切り開いた新時代の女性の象徴。著者のメッセージは連作短編を経て最終話に凝縮されている。

LOCAL GIRLS
ローカル・ガールズ
著者:アリス・ホフマン、北條文緒(訳)、みすず書房・2010年8月発行
2010年11月26日読了

いつか食したいと思っていた「生野ハヤシライス」。昭和30年代の鉱山で働く職員の社宅で誕生した、ご当地B級グルメらしい。

史跡生野銀山のレストランマロニエで注文した。(2010年11月27日)

■ポークカツ&ハヤシライス
1,280円也。ポークカツは200g、サラダ付き。

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美味でした。

■生野ハヤシ・オムライス
こちらは950円。クリームコロッケ付き。

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オムレツはフワフワ:一口食べた感想。

甘すぎず淡泊すぎず、絶妙な味付け。玉葱は地元産らしい。また来たくなったぞ。
(もう少し価格が抑えられると嬉しい。

生野銀山 レストランマロニエ
http://www.ikuno-ginzan.co.jp/omiyage/omiyage02.html

世紀末芸術を図版で紹介するシリーズ本。本書では著名なポスター画家、ミュシャの芸術性と同時代のパリに視点が置かれる。

ロンドンに始まってブリュッセル、ナンシー、パリに広まったアール・ヌーヴォー。それは1890年代を代表する芸術様式であり、建築材料としての"鉄"と深い関係にあった。自在曲線で表現される"文明"はベル・エポックの象徴でもあったろう。

チェコからミュンヘンを経てパリへ出てきた青年、ミュシャは印刷工房で働く。運命の一夜。サラ・ベルナールの演劇ポスター"Gismonda"を制作したことがミュシャを一躍スターの座に押し上げる。石版印刷技術の確立と大衆向け商品の消費の増大が、ポスター芸術の振興を後押しした。

"ジャポニスム"が印象派絵画やロートレックのポスターに影響を与えただけでなく、工芸品、日用品へも新たな技法をもたらしたことは興味深い。
浮世絵にも興味が沸いてきたぞ。

世紀末のモード。装飾に凝りすぎたオートクチュールの全盛期は過ぎ去り、"お針子"の作業着だったブラウスとスカートが、20世紀の女性の服装の主流となるとは、面白い。

1900年のパリ万博は電気による"モダン・ライフ"を前面に打ち出した。大理石とブロンズに代わり、鉄とガラスが建築の主役に躍り出る。科学技術と芸術の日常への浸透。生活が、そして人生が変わる予感。躍動への期待。
そう言えば当時の何かのポスターで、すでに自動販売機が登場していたことを思い出した。

今度パリに出向いたときは、19世紀末の繁華街=ムーラン・ド・ギャレットやムーラン・ルージュのあるモンマントルや、ルネッサンス座のあった界隈を歩いてみよう。

アール・ヌーヴォーの世界1 花園の香り
ミュシャとパリ
学研・1987年6月発行
2010年11月21日読了

2009年6月に津田塾大学で開催された対談「21世紀の国家とアイデンティティ」を収録。

・国家とは物理的な強制力を背景にしながら集団的な意志決定を社会の中に貫徹しようとする組織体である。この定義は揺るがない一方で、"意志決定"の主体が問題となる。

・ナショナリズムとは、国民が国家の主体を成すと主張する政治原理であるととともに、国民主権の"国民"とは誰を差すのか、国民となりうる要件は何か? を探究するアイデンティティの問題を提起する。特に後者は、他者の排除や特定行為の強制が伴う場合がある。(2010年フランスで制定された、ムスリム女性に対する公共施設でのブルカ禁止法もこの一環だな。)

・ネーションは、すでにまとまりのある統一体ではなくなっている。同じ日本人であっても東京都の中間層と地方過疎地の貧困層では別世界の様相を呈しているように。=国民性の解体。(僕自身もそのように感じている。)
これは国民の普遍性や同一性を破壊してでも市場原理を導入しないと、資本主義世界で国家の生存が危ぶまれる状況にあるためで、グローバル化の進展に基づく避けられない事態だ。
一方で"国民"基盤の崩壊を防ぐために国家主義の導入が不可避となる。フランスで極右政党が躍進したように、西欧でも似た状況にある。→ 国民主義なき国家主義へと向かわないと、社会の統一性を保持できない事態が生じている。
(2010年11月のアメリカ中間選挙でTea Partyが躍進したのも、その流れなのだろうか?)

・大日本帝国憲法では日本人民は"臣民"とされる。この言葉は明治以前に無かったことから、日本古来の天皇を中心としたアイデンティティに疑問が提起される。
(日本では人民との言葉は使わない。主権在民だから"国民"だ。中国では国民とは呼ばない。なるほど、共産党一党支配に従属する"人民"か。)

・世界の他の国と異なり、日本の場合、国民を定義するのは国籍ではなく「戸籍」だったし、現在もそうだ。かつての内地戸籍、朝鮮戸籍、台湾戸籍の区別が、日本国民の中に別の地位を形作っていた。

・大日本帝国から日本国への転換に際し、アイデンティティも変化した。臣民から国民に昇格した一方で、帝国支配民族としての地位を喪失した。潜在的に沖縄を植民地として扱っているのは、帝国意識の残像だと言える。
また、内地に残された朝鮮人や台湾人は"在日"として空白の扱いとされ、旧植民地の日本人"=残留孤児もあえて見えない態度を取ってきた。これは単一民族的なナショナリズムを維持するためであるが、すでに虚構に陥っている。日本語も、すでに日本人だけのものではない。

・戦後アイデンティティは明確な土台がない。そのため種々の日本人論が生まれ、日本人とアメリカに向けて発せられてきた。戦後日本人の自己意識の不確かさ、不安定さを象徴するものだ。

・世界のフラッット化は国民の消滅を意味しない。異動の自由、富の分配度など、グローバリゼーションの進展により、国籍の違いがより非対称に明確化される。

表題の"国家とアイデンティティ"の関係を定義しきれないまま議論が終息した感がぬぐえない。続編を希望する。

近代国家の統一性の保持するには、比較・敵対できる外部勢力が必要と言われる。中国にとっては日本あるいは米国か。日本にとってかつて旧ソ連がそうだったが、現在では"外部勢力"が失われている。国としてまとまりがない原因がそこにあるのなら、"対中国共産党一党支配国家"で一致・邁進するのが手っ取り早いようだ。(いつか来た道?)

岩波ブックレットNo.772
国家とアイデンティティを問う
著者:C・ダグラス・スミス、姜尚中、萱野稔人、岩波書店・2009年12月発行
2010年11月18日読了

ベル・エポック。近代文明社会が本格的に幕を開け、西欧文化が爛熟した時代。アール・ヌーヴォーの華が満開となり、絵画芸術、哲学、文学の世界でも革新が起こり、21世紀にも強い影響を残す、まさに現代文化の源泉だ。

本書では、電信・電話技術の急峻な発達と実用化、内燃機関と石油化学工業等の発展に触発され、西洋人個々の生活と意識、社会集団を近代化に適応させてゆく様がわかりやすく著される。

日本でも"文明開化"以降、1930年代まで連綿と続く文明・文化のオリジナルでもあり、現代の目から見ても"良い時代"だったと感慨深い。

一方で、帝国意識の増大と社会ダーウィニズムの正当化など、19世紀後半から第一次世界大戦にかけての西欧文明主観主義は、まるで米国で急成長した"ティーパーティー"と、その独りよがりな愚劣さを想起させる。彼等がアジア・アフリカ諸国を植民地化し、収奪し、荒らすだけ荒らして去った傷痕は、21世紀のいまも深いままだ。金融・資源面での帝国主義は残ったままだし、西欧支配の構図は当面、変わらないか。

世界史リブレット46
世紀末とベル・エポックの文化
著者:福井憲彦、山川出版社・1999年11月発行
2007年3月18日読了、2010年11月15日再読了

兵庫県明石市の明石港と淡路島・岩屋港の間を結ぶ小型フェリーが運行している。その名も「たこフェリー」だ。
かつてはGW期間中の乗車に3時間以上待ちなどの活況を呈していたが、明石海峡大橋の開通・値下げ、ETC休日割引の実施により、利用者が激減した。そして宿命なのか、2010年11月15日に運行が休止される。事実上の航路廃止だ。
これが最後ということで、土日の駆け込み需要の前に乗り納めてきた。(2010年11月12日)

乗船する車両は20台未満。乗船時間が迫ると人が増えてきた。う~ん、"人のみ利用"が多いと。なるほど、これではフェリーはいらないな。

13時20分に乗船。車載甲板は70%程度が埋まった。乗客デッキへ上る。結構混んでいる。この日は快晴に恵まれ、明石海峡大橋がよく見える。一方で朝霧から舞子にかけての対岸は霞んで見える。黄砂の影響みたいだ。

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航海時間は約20分。岩屋港では鳥が迎えてくれた。

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唯一の国道28号線を南下。寂れる一方の淡路島だが、風情があって小旅行には良い。

ついでに"あわじ花さじき"へ行ってきた。サルビアだけ咲き誇っていた。シーズンオフだから仕方がないか。(ここはGW期間中か8月初旬に来ないといけない。)

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ハイウェイ・オアシスの活況と道の駅淡路の寂しさも対照的だ。
明石へ戻る頃には日が暮れていた。ライトアップされた大橋はいつ見ても良い。

たこフェリー。これまで船を3隻から1隻に減らす等の経営努力を重ねてきたが、再起にはつながらなかった。
明石市も援助の期待をにおわす姿勢も見せたのだが、裏切られたカタチだ。(明石市長の"あっさりと見捨てる"ようなインタビュー記事を神戸新聞で読んだ。質問にも「それは会社に訊いてくれ」等と深入りを避けるような態度だし。読んで不快になった。)

これまで何度も乗船し、そのたびに旅行気分を味わってきた。ありがとう、たこフェリー。

26歳OL、独身。彼氏いない歴=年齢なのは中学2年以来の片想いのせい。言い寄る身近な男には本気になれず、それでもずるずるつきあって、道は狭められてゆく。

友人の名を騙って主催した同窓会で片想いの彼氏と再会でき、その後も逢うことが出来た。
行動は運命を変えるのだ。

だが行動は残酷な真実を見せもする。12年の恋が冷める、真実の瞬間。長年想っていたのは彼の幻影だったのだ。

言い寄る身近な男との再接近。そして親友の裏切り。破綻寸前の自分を救ったのは……。

ある意味勝手な、しかし純粋な女性の揺れ動く心情、事件を経て熟成される自分の意識。最後まで一気に読ませてくれた。
それにしても「偽装妊娠」とは思い切った展開だ。次回作も楽しみだぞ。

勝手にふるえてろ
著者:綿矢りさ、文藝春秋・2010年8月発行
2010年11月9日読了

まんがくらぶ、まんがライフMOMOに連載中、佐野妙さんの「森田さんは無口」がアニメになります。お気に入りの作品なので素直にうれしいです。
コミックス3巻・特装版に附属のOVA。購入決定です。

http://4koma.takeshobo.co.jp/cat01/2032/

関係者にはぜひ頑張っていただき、TVアニメ化を実現してほしいですね。

竹書房4コママンガ誌オフィシャルサイト | 4コマ堂
http://4koma.takeshobo.co.jp/

日常絵茶飯事
http://www.otemoto.jp/byroad/

いまごろになって鑑賞した。評判は二分しているが、僕は「あり」だと思う。古代進38歳の声は合っているでしょう。設定も現代風で良いと思う。ただし古代雪(森雪)の声はピンとこないし、移民船団の護衛艦がすべて戦艦クラスってのはありえないでしょう。

幼少の時に観た第一作(イスカンダル!)からの普遍のテーマ、いや、魂は、変わらずに存在していると思う。

続編を希望! なんですが、プロデューサーの西崎さんが亡くなられたそうで、ご冥福をお祈りします。

「宇宙戦艦ヤマト」プロデューサー、西崎さんが船から転落死
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101107-00000561-san-ent

宇宙戦艦ヤマト オフィシャル コミュニティ ヤマトクルー
http://www.yamatocrew.jp/

Blu-rayディスクを購入しようかな?

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