江戸東京博物館で開催され、とうとう見に行けず終いだったのだが、大阪で開催されていることを知り、大坂城まで足を延ばした。(2012年6月29日)
外観は巨大なオフィスビルのようだ。NHK大阪放送会館と隣接していることもあり、博物館らしくない。
金曜は夜8時まで開館。とてもありがたいのだが、チケットブースで驚いた。受付事務員は6人もいて、みんなヒマそうだ。さすがは大阪市の施設だと感心した。
■直通エレベータで6階展示室へ。入場してすぐ、tower 塔の起こりと意味を解説するプロローグエリアが現れる。
西洋での原型はなんといってもバベルの塔だが、その源流はメソポタミアの"ジックラット"にあるという。ピラミッドにも通ずる方形かつ段状の、煉瓦造りの巨大建造物。イランのウルに再建されたらしいから、いつか現物を見に行きたいな。
東洋ではヒンドゥーの"ストゥーパ"、すなわち、釈迦の遺骨を納めた逆さお椀状の墓が"卒塔婆"となり、中国や日本に渡って多層塔となる。薬師寺の伏鉢(大きい!)や、1910年にロンドンで開催された日英博覧会展示品(薬師寺の縮小模型)が展示されていた。なるほど、五重塔なんかも構造は同様か。
■江戸期から明治20年頃まで
愛宕公園と愛宕塔を描いた『東京名所愛宕山公園見晴』が良い。文明開化を満喫する1897年の光景がありありとわかる。世は展望ブーム。公園の高台に設けられた5層の西洋式展望台と中世からの日本の「おやすみ処」が並立し、西洋館の街並みの向こう、沖合には帆船が浮かぶ。
その時代を歩く中流層の風俗が、いま見ると微笑ましい。和服に革靴とパナマ帽、着物に西洋傘を拡げる若い女性連れ、フロックコートに身を包んでステッキを持つカイゼル髭の紳士など、活気が伝わってくる。
『東京築地ホテル館』と『新吉原江戸町壱丁目五盛楼五階之図』も気に入った。
■エッフェル塔
世紀末からベル・エポックへ。
『エッフェル塔のサーチライト』(リソグラフ1889年)が良い。電飾の塔の絶頂(当時の言葉だ)から万国博覧会場を煌々と照らす"電気"は技術の枠を超え、世界帝国フランスとパリの栄華を象徴するに至った。
それにしても、明治22年に私費を投じて洋行し、万博会場に赴いた日本人がいるとは知らなかった。京都日報に連載された久保田米僊氏の『巴里随見録』、読んでみたいな。
■浅草十二階
『浅草公園凌雲閣之図』(大判錦絵1891年)が良い。オリエント・ツアーを催すスペンサー氏が皇居で気球飛行を行い、その余興で浅草公園で飛行ショーを開催したが、凌雲閣はその見物客で満員だったとか。50mの高さを誇りエレベータを有する塔は、現在のスカイツリーのような存在だったんだな。
哀しいかな、煉瓦造りの凌雲閣が八階で折れて燃える写真が遺されている。あらためて、1923年の関東大震災がもたらした甚大な被害を想う。
■東京タワーと通天閣
天王寺の10万坪の敷地で開催された大規模なイベント、第五回内国勧業博覧会。外国人女優ショー、ウオーターシュート、電飾など娯楽要素が満載。当初の産業化啓発目的から性格は変化したが、その技術のもたらした「興味深さ」こそ、日本の産業立国化を後押ししたに違いない。
その延長線上に通天閣が、そして東京タワーがある。
ザ・タワー ~都市と塔のものがたり~
2012年7月16日まで開催
大阪歴史博物館
http://www.mus-his.city.osaka.jp/