日本シャーロック・ホームズ・クラブの創設者にして著書50冊を超える著者夫妻による、ホームズ像とヴィクトリア朝の解説書。

・ロンドンを歩いてホームズの足跡を辿るは楽しく、ダートムーアで「犬」を思うも良し、モリアーティとの最終対決の場、マイリンゲンの滝壺を覗くも一興。人物と時代に思いを馳せつつ、聖地を巡る楽しさが存分に伝わってくる。

・2010年5月、僕もベーカー街のホームズ博物館を訪問した。求龍堂発行の「写真集 シャーロック・ホームズの倫敦」を直前に読んでいたこともあり、同書の図版がそのまま展示されていたことに気付いたが、そうか、これは無断で使われていたのか。。。(p16)

・「わが友、シャーロック・ホームズ」(p47)では、音楽に文学的要素を投入しようとしたワグナーのドイツ・ロマン派の音楽劇(p95)への愛着、古典から英独流行作家に至るまでの文学的知識、最先端技術(当時は化学実験)への並々ならぬ関心と実践(これ大事!)、それでいて、変人とも誤解されかねない独特の癖など、ホームズの人物像が愛情を込めてに解説される。

巻末史料が充実している。
「ホームズ事件簿」(p126)は、事件名とホームズ活動時期、事件の概要が年代順に掲載され、わかりやすい。
「作品訳名対照リスト」(p136)は英文原題と原作発表年月に河出、新潮、光文社、ちくまの邦文表題が対比され、各社ごとの特徴が滲み出ていることを覗わせる。
「ホームズ関連年表」(p132)は、1847年(兄マイクロフト生誕)から1914年までのホームズの動き、英国の動き、日本の動きが掲載され、時代的な俯瞰を行える。
「そうか、江戸、明治、大正までがホームズの時代だったんだな」と、より身近に感じることができた。

写真と図絵満載で気軽に読むことができた。ヴィクトリア時代に興味があるなら、お薦めの一冊になると思う。

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図説 シャーロック・ホームズ 改訂新版
著者:小林司、東山あかね、河出書房新社・2012年2月発行
2014年4月14日読了