男ひとり旅の美学

[旅の恥は書き捨て]ってことで。あと、BMWと読書感想文も。

2014年07月

"ぶら歩き"で遭遇した小さな発見がその街の魅力となる。
見開き半分を飾る著者撮影のすてきなカラー写真の力と相まって、ページを繰るものを街歩きへと誘う。

・「巴里の細道」(p22) 建築物に囲まれた小路の魅力が語られる。19世紀末に道幅が法令で定められる以前の生活の道。最少はなんと、幅60cmのだそうです。
・個人的には「植民地時代の遺産」(p48)に興味が惹かれた。フランス海外領土博物館(アジア・オセアニア博物館)向かいのマルシャン遠征隊顕彰碑にかけられたペンキが、複雑な感情を物語っている。
・"ZEN"は心安らかな、くらいの意味で濫用されているのか。(p66)
・赤信号の車道を"自主横断"するのが当たり前のパリ。その根底には「信号なんかより自分の意思」(p88)を優先する精神があり、周りに合せる日本とはずいぶんと異なっている。
・「ボウ・ウインドウ」(p106)の由来はなるほど、屋敷の温室なのか。
・この春にパリを歩いて、女性をかたどった柱の多いのには気づいていたが、その由来は「カリアティッド」(p130)によると、ギリシャ神話なのか。

上品な駄洒落(そうじゃないのもあるけれど)も本書の魅力です。まるでパリ紳士淑女の魅力が凝縮されたよう。

パリ右眼左眼
著者:稲葉宏爾、阪急コミュニケーションズ・2007年10月発行
2014年7月12日読了

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本書は、街を彩り、民衆を沸かせ、貴顕を虜にした時代の寵児を軸に据え、3世紀から20世紀までの歴史の劇場としてのパリを”観る”エッセイであり、ガイドブックである。

・前半はやはり「偉大な軍人が、すぐれた統治者であると同時に、明確な歴史観」(p34)を持った人物、ナポレオンの章に引き込まれる。ルーブルの「戴冠式」に覧られる絶対的権力者としての自信と、時代の精神を前進させた手腕はとても魅力的だ。いまもパリの随所に残る彼の足跡は、フランス人の誇りでもあるのだろう。

・ユゴー『ノートルダム・ド・パリ』、椿姫その人、マリー・デュプレシの波乱の生涯、オスマン様式を決定づけたシャルル・ガルニエ。時代は下って、ジョセフィン・ベーカーにジャンゴ。彼らの熱い生涯とパリとは切り離せない関係だったとわかる。

・写真の革命家、ナダールのエキセントリックな人生には興味が沸く。それにエッフェルの太い人生!

・ロートレック、ユトリロ、プルースト、ダリ、ヘミングウェイ、ココ・シャネル。彼らの愛したカフェとキャバレーのいくつかは現存し、同じ雰囲気を味わえるとは!

・ひとつ不満があるとすれば、サラ・ベルナールの章の無いことだ。考えられないんだが。

・後半1/3は「パリ歴史歩きガイド」として、本文に登場した人物と事跡を巡るモデルコースと解説が記される。地球の歩き方とは違った解説であり、複合的視点から有意義なガイドとなる。

パリを生きた彼らの魂に共鳴し、名所の由来を識れば観光の楽しみは倍増しそうだ。
この夏、二度目のパリを楽しむぞ!

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Chronicles of Old Paris, Exploring the Historic City of Light
二度目のパリ 歴史歩き
著者:John Baxter、長崎真澄(訳)、ディスカバー・2013年6月発行
2014年7月5日読了

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