1920年代のカリスマ挿絵作家!ってことで買ってみた。
大正から昭和初期にかけてのファッションリーダーとして、講談社の少女・婦人誌の挿画で大人気を博した華宵。その画は現在でも魅力を失っていないことが、本書を通読・鑑賞してわかる。
銀座、便箋、モダンデザイン、浅草オペラなどのテーマ別に、華宵世界が紹介される。
・大正ロマンと昭和モダン。二つの時代をまたがり、若い女性の服飾小物の流行を仕掛けた点で、現在のファッションデザイナーの先人とも言えよう。
・当時の銀座を歩いた女性の90%が和装であり、華宵もその挿画で積極的に着物のデザインを手掛け、それが実際にデパートで販売されていたという。
・さらにすごいのはその挿画、雑誌口絵、便せん画などにおいて、同じ図柄の着物は一枚たりとも存在しない事実だ。画家のプライドここにあり。
・個人的には「渚の風」(p17)、「光」(p53)、「ニューファッション」(p61)、「胡蝶」(p92)がお気に入りだ。
意外なのはその生い立ちだ。若き日に実家を勘当され、神保町の救世軍労働宿舎に寝泊まりしたこともあるという(p107)。この時代の労苦も挿画に活かされているのだから、何事も経験だな。
機会があれば、文京区の弥生美術館に行ってみようと思う。