■ルノワール展 その色彩は「幸福」を祝うために。
2016年6月19日(日)曇り
印象派時代の最高傑作「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」初来日!ということで、この日は、年始から楽しみにしていたルノワール展を観て愉しむのだ。
http://renoir.exhn.jp/
ルノワール展 オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵
国立新美術館 2016年8月22日まで。
9時30分にチェックアウトし、地下鉄千代田線・日比谷駅から乃木坂駅へ。10時15分に入場。ものすごい人だかりだ……。
オーディオガイド500円。こういった展示会では必須だ。
お気に入りの作品を何点か。
「ぶらんこ」(1876年)
木漏れ日の光がドレスの上に咲いた蝶結びの紫の花に降り注ぐ(ゾラ「愛のページ」)、そのイメージそのものだ。
僕は、端の少女の「私も乗ってみたいけれど、できるかしら」的な表情が気に入った。
「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」(1876年)
以前のパリ旅行の際にオルセー美術館に展示されておらず、観ることができなかったのだ。
これは別格の美しさ。眼前1メートルの距離で鑑賞できて満足だ。
ワルツ、ポルカを踊る無数の人々。魅力的なポーズの友人たち。
空は描かれていないのに、空間の広がりと強烈な光のあふれ出る様子が、人生の幸福感と合わせて画面いっぱいに表れている。
光と影を濃いブルーで表す技法といい、左奥で「私はもうあなたと踊らないわ」と失望の表情を隠さない女性と焦る男の姿といい、いや、素晴らしいものを見せてもらったぞ。
「田舎のダンス」(1883年)
僕はこちらのほうが好きだ。
この素晴らしい表情のモデルは、後にルノワール夫人となるアリーヌだ。実は本作のモデルはシュザンヌで内定していたのが、アリーヌが嫉妬して強引にモデルになったとか。
踊る男の衣服が、現在のジャケパンスタイルになっている。われらの衣服の源流を観るようで面白い。
テーブルには飲みかけの酒、床に落とした帽子……酔って踊るは人生の楽しみそのものってことだな。
「都会のダンス」(1883年)
上流階級の舞踊を表現しているが、ルノワールが思いを寄せたサーカス団の踊子、シュザンヌがモデルだ。で、ルノワール氏はシュザンヌとアリーヌとを両てんびんにかけていたのか……。
他にピカソ「白い帽子の女性」、ジャン・ペロー「夜会」等を含め、103点の作品が展示されていた。
美術館2階のカフェSalon de The RONDでベーグルサンドセットをランチとした。
13時15分に退場。うん、「人生の幸福」を実感できた。芸術はこうでなくっちゃ!
■秋葉原はすごい熱気
ほぼ15年ぶりの秋葉原は大きく変わっている。これは「文化都市への進化」だと信じたい。
ここではクロムクロ展を見た。まぁまぁだな。
16時11分に秋葉原駅から東京駅へ向かう。ギリギリじゃないか。
16時50分に東京駅よりのぞみ51号に乗車。
実は、人生初のグリーン車だったりする。実に快適なシートだ。
大玉ほたてと大漁ウニ弁当(1,700円)には満足だ。
定刻の19時56分に西明石へ到着
ルノワール展は8月22日まで。米空母も現物を見てみたい。もう一度行きたいな。
駄文にお付き合いくださり、ありがとうございました。
2016年07月
2016年6月 横須賀軍艦めぐりとルノワール的な東京の旅 その2 [男ひとり旅の美学]
東郷平八郎と戦艦三笠
■天気晴朗なれども波高し
記念艦三笠。ワクワク感がたまらないな。
戦闘指揮艦橋、東郷平八郎の立ち位置から前方を視る。うん、天気晴朗なれども波高し(?)だ。
内部は旧式の軍艦そのもので、2010年にポーツマス港で観た英軍艦ヴィクトリー号のような構造だった。
プライバシーなしのハンモック寝床&男だけの甲板生活。
Z旗ビールが美味い!
■浦賀の渡し船……に乗れず……。
京急横須賀中央駅から浦賀駅へ。18時15分着。タクシーで西叶神社へ。
有名な「渡し船」に乗りたかったのに、営業時間終了。ガックシ。
浦賀港。ここに黒船がやってきたんだな。
■銀座精養軒
バスで浦賀駅へ、京急で横須賀中央駅に戻り、どぶ板商店街を散策。
横須賀海軍カレーへ向かうと……ラストオーダー終了。またまたガックシ。
汐入駅から銀座へ向かう。なんと直通なんだな。21時3分に東銀座駅到着。
いつもの松屋8階、銀座精養軒で夕食だ。ビールと赤ワインが美味い。
ホテルにチェックイン。
ホテルユニゾ銀座一丁目は、予想より良いところ。欧米人宿泊客の多いのも納得できる。
う~ん。今回の旅は時間配分が甘かったかな?
続きます。
2016年6月 横須賀軍艦めぐりとルノワール的な東京の旅 その1 [男ひとり旅の美学]
いつかは訪問したかった汐入の町、そして横須賀軍港を見ることにした。
ついでに、ルノワールの初来日の傑作を鑑賞するのだ。
ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」は安心の大きさ
【参考データ】
2016/6/18土
新幹線新神戸7:36発のぞみ110号、10:04新横浜着
地下鉄ブルーライン経由、東急汐入11:06着
東急汐入20:02~(直行)~東銀座21:03着
2016/6/19日
新幹線東京16:50発のぞみ51号/こだま761号~西明石19:56着
東京宿泊先:ホテルユニゾ銀座一丁目(1泊)
2016年6月18日(土)
梅雨の合間、晴れて良かった。トートバッグひとつの旅が始まる。
久しぶりの新横浜駅を経由し、11時過ぎに京急汐入駅へ到着。あのトンネルを見ることができた。
5分ばかり歩いて、YOKOSUKA軍港めぐりの窓口に到着。乗船料1,400円。
12時の便を予約しておいたが、実は座席に余裕はあったみたいだ。
11時35分に並ぶ。すでに50人以上の行列だ。
で、目の前に停泊する巨艦は、艦船番号183か。……排水量2万トン、戦後最大の護衛艦「いずも」じゃないか! ちょうど艦載ヘリコプターが回転翼の回転点検を行っているみたいで、エンジンの心地よい大爆音が船着き場まで響いてくる。
うん、さいさき良いぞ。
今回の旅のテーマは次の三つだ。
・歴史ある艦「三笠」をこの目で見る。
・神戸と異なる「米軍色入り港町文化」を歩いて肌で感じる。
・ルノワールの傑作「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の姿を脳裏に焼き付ける。
■YOKOSUKA軍港めぐりは楽し♪
12時より乗船開始。2階の端ではないが、右側の席を確保。停泊中の艦船が良く見えるポジションだ。
陽射しが強い。帽子を被ってくるべきだった。
横須賀本港と長浦港を一巡し、米海軍と海上自衛隊の艦船を見渡すのだ。
・海自の潜水艦3隻。1隻は蒼龍タイプだ。
・米空母ロナルド・レーガンは出動中? まぁ、代わりに大型イージス艦を見ることができた。
・試験艦「あすか」は間近で見ると大きい。目立った武装はないんだな
・米軍艦のシルエットは海自の10年先を占うものだ。これは強襲揚陸艦。
・港の沖合に浮かぶは艦船の消磁設備。詳細は教えてくれなかった。
・海洋観測艦「わかさ」「しょうなん」、掃海母艦「うらが」
・潜水艦救難母艦「ちよだ」の格納庫には潜水艇が覗いている。
・左手に吾妻島。1940年代の日本海軍によって開削された水路を3隻のタグボートが疾走中。出港する艦艇があるということだな。で、この吾妻島に何が貯蔵されているかは「軍事機密」とのことで、被爆を考えるとあまり近づきたくないなぁ。
・ミサイル護衛艦「はたかぜ」って、まだ現役だったのか!
・護衛艦「むらさめ」はレーダーを回して出港準備中。
・ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」は安心の大きさ。
1853年にペリーが浦賀に来航し、以降、関係の深い横須賀。その米海軍基地には2万人を超える関係者が居住しているのか。
汐入埠頭とヴェルニー公園の間にスターバックスがある。ラテとドーナツで休憩。客に海自隊員の多いのは新鮮な感覚。
13:30に再出発。
おお、埠頭から「いずも」が姿を消している。港めぐりの船員が言っていたように、見ることができてラッキーだったんだな。
■横須賀DOBUITA通り。
スカジャンのイメージだが、期待していたのと少し違うなぁ。
有名店TSUNAMIで10分並ぶ。傘が用意されているのはありがたい。
Yokosuka Navy Bergerヨコスカネイビーバーガー(ジョージ・ワシントン・バーガー)をいただく。ボリューム大だ。
ここは、たまゆら~もあぐれっしぶ~に出ていたので来てみたかった。ついでに進次郎も。
無事に腹ごしらえの済んだところで、三笠公園へ向けて散歩開始。
続きます。
女だけの町(クランフォード) エリザベス・ギャスケル [読書記]
1830年代のマンチェスター近郊のとある小さな町には、なぜか淑女ばかりが集っている。元牧師の姉妹、小商いで財を設けた隠居様、貴族を縁戚に持つ老女様、個性豊かな顔ぶれではあるが善良な人々。そんな社会を余所者の視点で活写したメアリー・スミスの語りはユーモアと愛情に満ち溢れ、穏やかな読書を体感できた。当時の社会生活を思い描かせてくれる描写も魅力的だ。
なお、主人公のメアリー・スミスはp311にやっと本名が明かされる20代の独身女性で、著者ギャスケル夫人の化身でもある。
・カードパーティの最中、ディケンズとジョンソン博士を巡っての、ミス・デボラ・ジェンキンズのブラウン大尉に対するヒステリックな対応に微笑んでいたら、次の章で悲劇が待ち受けていようとは。だがこれも世の中のひとつの事象にすぎない。
・ジェンキンズ姉妹の若き日、弟のピーターが父との諍いによって家を飛び出し、海軍へ入隊した話。母の亡くなった翌日に、ピーターからの心づくしの贈りものが届き……(p136)。本書前半のベストエピソード。新幹線の座席で、思わず涙をぬぐってしまった。
・「過ぎし昔のの恋物語」~「独身老年訪問記」の章、時を置いて最終章で語られるミス・マチルダ・ジェンキンズのロマンスは哀しくもあるが、とても美しい人生の記憶の一ページ。
「破産」~「事ある時の友」は、本作品のテーマが凝縮されたエピソード。主人公の泣き崩れるシーンは辛く、だが晴れ晴れしい(p313)。良い人間関係とは、当人の心がけ次第であることが明白だな。
「めでたく帰る」~「クランフォードに平和到来」は、350ページに渡って綴られてきた多様な人物譚の集大成。そして、インドで亡くなったと思われていたピーターの消息が、ある人物のつながりから偶然に知れることとなり……。
平和と思い遣り、そして「好き」でいることの貴さ。殺人も許容されない敵意もなく、人間の幸福がここまで見事に描かれた物語は他になかなかない。ヴィクトリア朝カントリータウンの面白く暖かい物語に、心満たされる読後感を得た。
CRANFORD
女だけの町(クランフォード)
著者:Elizabeth Gaskell、小池滋(訳)、岩波書店・1986年8月発行
2016年7月2日読了