男ひとり旅の美学

33の国と地域、南極を含む七大陸を踏破! 海外旅行歴28回の「旅の恥は書き捨て」です。愛車BMW M3と読書感想文も。

2018年01月

■岡山城へ

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・雪の中の烏城(岡山城)って、風情があるかも。


2018年1月28日(日)、9時起床。10時にホテルをチェックアウトして表へ出る。「いざ岡山へ」って、なんと、雪が降っている!

マフラーに小雪を散らしながら、商店街(アーケードはありがたい!)経由で倉敷駅へ。
10時27分に倉敷駅発の山陽線に乗る。満席なので15分の立ちんぼはやむを得ない。10時45分に岡山到着。
雪はますます勢いを増す。コンビニで傘を買う。590円なり。

トラム(路面電車)で3駅、11時過ぎに城下停留所へ到着。
このトラム、竹久夢二仕様なんだな。
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城下停留所から歩くこと10分、岡山城へ到着。
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居城跡(区画が残されている)を見て、栄華な時代を思いつつ、城門を抜けると天守閣だ。
岡山城と後楽園、それに竹久夢二郷土美術館の共通チケットを購入(1,000円)。トラムの乗車券もついてくるのか。

それにしても外国人が多い。
岡山城天守閣6階展望台では、9人中、日本人は僕だけという状態に……。
係員に訊くと、特に香港と台湾からの客が多いそうな。

ああ、しかし、城の内部はコンクリート造りの様子がむき出しで、展示物は日本語only。もう少し外国人観光客に気を使うべきだろう(どうしても姫路城と比べてしまう)。

■後楽園

名庭園もほんのり雪化粧。これはこれで良いものだ。
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きび団子と抹茶で休憩です。
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■竹久夢二郷土美術館


後楽園正門出口から歩くこと5分、13時過ぎに竹久夢二郷土美術館に到着。期待大。
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詩画に親しんだ夢二の作品が、ほど良いバランスで展示されている。

『星まつ里』が最高だ。
 "庭石に ぬれてちる灯や 星祭"って、良いセンスだ。
『ベルリンの公園』も気に入った。
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『立田姫』も良いなぁ。これは色紙を買ってしまった。
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第6展示室と銘打って、カフェとミュージアムショップが併設されている。ここでクリアファイル等の土産を買い、ついでにライチにした。
"art cafe 夢二"の内部は実に心地好い。
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ハッシュドビーフライスを注文した(1700円)。美味だ。
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14時に美術館を出る。少し南下して歩き、出石町を見るが、何もないぞ。
そのまま天満屋まで歩き、自分への土産としてWEDGWOODマグカップを購入。
トラムに乗車して岡山駅へ到着。
ポストに桃太郎か。
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廣栄堂のきび団子を買い、新幹線のホームへ。

500系のぞみに乗るのは久しぶりだ。
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こだま742号は定刻15時46分に発ち、ビールを飲んだら西明石だ。16時32分。

ああっ、傘を車内に置き忘れてしまった……これが「善意の傘」として駅に並べられるのだな。
まぁいいや。冬の倉敷・岡山で雪とアートを堪能した休日となったから。満足。


最後まで拙文にお付き合いくださり、ありがとうございました。


突発的に倉敷の大原美術館へ行きたくなり、一泊二日の小旅行を敢行した。
トートバッグひとつの旅が始まる。

【参考データ】
2018/1/27(土)
 新幹線ひかり461号 西明石10:50(10:30)発~岡山11:22着
 JR山陽線 岡山10:29発~倉敷10:45着

2018/1/28(日)
 JR山陽線 倉敷10:27発~倉敷10:45岡山着
 新幹線こだま742号 岡山15:46発~西明石16:32着

宿泊先:倉敷国際ホテル


■2018年1月27日(土) 倉敷美観地区

昨夜の雪の影響なのか、JR神戸線も新幹線も遅れている。
結局、20分遅れのひかり461号に乗車することとなった。こういう場合、自由席特急券はフレキシブルで便利だ。
10時50分に西明石を発ち、車窓を眺めつつ旅先のWEBをチェックしていたら、あっという間に岡山に到着した。11時22分だ。
そのままJR山陽線に乗る。三原行き4両編成は満員だ。
車窓はこれといって特徴のない、寂れた地方都市といった光景。
10時45分に倉敷へ到着。

観光地は少し離れているので、商店街を経由して向かう。うん、アーケードの下は地元愛に満ちており、良い感じだ。

倉敷美観地区には20数年前に車で訪れたことがある。記憶のイメージと違い、意外にコンパクトだと気づく。
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倉敷デニムストリートで「デニム・バーガー」を試す。うん、美味だ。調子に乗って二つも食べてしまった。
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ソファーもデニム再生品なんだな。
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星野仙一氏。合掌
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この壁面は良いな。
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倉敷アイビー・スクエア。蔦が印象的だ。
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廣栄堂本展で休憩です。
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■大原美術館


14時過ぎより西日本を代表する美術の殿堂へ入館。内部は撮影禁止なんだな。
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お気に入りを何点か。
・児島虎二郎『和服を着たベルギーの少女』
・エル・グレコ『受胎告知』(1603年)
 この一作のために特別の部屋が設けられている。構図、表情、閃光、鳩の効果。これがずっと日本にあるというのはスゴイってことか。
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・レオナール・フジタ『舞踏会の前』(1925年)
 乳白色の中に、際立つ目の力!

・ピカソ『鳥籠』(1925)
 インパクト大。天才の片鱗を少しでも理解できたらなぁ。
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・松本竣介『都会』(1940年)
 不安定の中の慌ただしい動。センスの良さを感じる。個人を飲み込んでしまう路地の深さよ。
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・上田暁子『とある熱を通り抜ける』(2012年)
 16人の少女の連続した躍動が見もの。連動する影の表現も上手い。右足の赤もポイントか。
 一人だけ表情のある少女。リアルな存在は彼女のみで、他は彼女自身の駆け抜ける幻影か。
 傑作。


しかし、児島虎二郎の作品群に出くわし、ただただ圧倒されたことを明記しておこう。大判にして精緻な絵画の数々、その数14点。絶妙な光の操り方。色彩の空間とでも言おうか、和と洋、自然と人間の存在がこのようなハーモニーを生み出すとは。。。
『朝顔』と『祭の夜』がとても気に入り、結局『朝顔』の複製絵画を購入してしまった。
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旧大原邸の内部には入れなかった。なるほど、結婚式で貸し切りか。拍手。
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16時45分に大原美術館を退出。2時間30分もいたことになる。満足。


■倉敷国際ホテル


美観地区に隣接する好位置にある。
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ロビーに、児島虎二郎の作品『紺衣の女』が展示されていた。

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夕食は倉敷ラーメン「升屋」で。
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夜の美観地区は……たいしたことないな。
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岡山クラフトビール「独歩」と「倉敷麦酒」を飲んで、続きます。


迫力ある大判グラフィック写真による80ページもの特集「アラブは、美しい」は圧巻です。
2017年11月オープンの「ルーヴル・アブダビ」(6ページ)をはじめ、政治・歴史、アラブ連盟に加盟する22の国と地域、アラビア語の特徴(難しい!)、イスラム建築、旧市街と現代建築、息をつく絶景、等々。
が、なんといっても2千年の昔から連綿と築かれ、現在も進化し続けるアラブ・カルチャーの記事が圧巻です。
(コーラン写本、工芸品、墓石群と出土品、世界中のアラブ・ミュージアム。)

個人的には、アルモーメン・アブドーラさんと松田嘉子さんの語る「アラブ人らしさ」(p86)に興味を惹かれました。
(私事ですが、昔マレーシアで出会ったイラン人技師の人懐っこさに感心した経験を思い出しました。)

まさに完全保存版。おかげで、2月のドバイ旅行の修正を余儀なくされました。(ルーヴル・アブダビ!)



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彼女(ジュゴン)が人魚姫のモデルなんですね。


■鳥羽水族館へ


7時起床、あいにくの雨だ。
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「鳥羽国際ホテル 潮路亭」の朝食は見目よし、味よし、量もよしで、満足度高し。
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10時前にチェックアウト。また泊まりたいです。

宿のバスで鳥羽駅へ。コインロッカーに荷物を預け、タクシーで鳥羽水族館へ向かいます。

10時28分に到着。入館料は2,500円。
さぁ、「生き物たちが元気をくれる、感動の世界へ」(ちらしより)

階段を昇ると大きな水槽が現われる。中は色とりどりの魚たち、それに亀だ!
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中は広いぞ。
・11:00 セイウチ パフォーマンス笑(ショー)
・12:00 ペンギン散歩タイム
・13:00 アシカショー
の鑑賞を見据えながら、「順路のない水族館」を巡り巡った。


・11時 セイウチ パフォーマンス笑(ショー)
いやぁ、観客を巻き込んでの掛け合いがとても面白かったぞ。
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・彼女(ジュゴン)が人魚姫のモデルなんですね。名前はセレナちゃん(と言っても30歳越え。体重379キロ)。
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・アザラシも良いなぁ。
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・12時 ペンギン散歩タイム
大行進! かわいいもんだ。
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・ジャングルワールドは熱帯雨林を再現。ピラニアの群れは初めて見た。
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・電気うなぎは今夜、何の夢を見る?
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・日本近海にもサメはいるんですよね。
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・13時 アシカショー
あれ、一匹だけ?
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昼食は管内のレストラン「花さんご」にてカキフライ丼を食す。
これで伊勢海老、鮑、牡蠣を制覇したことになるぞ。
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・タカアシガニ
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・伊勢海老とウツボ、どちらが強いんでしょうね。
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・イカって、こんな泳ぎをするのか。
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・奇跡の森。カメレオン。パッとしないな。
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ここは良かったぞ!

■赤福~餅は、ええじゃないか♪


雨足はまだまだ強い。タクシーで鳥羽駅へ。

あれ? 朝、あんなに積まれていた赤福餅が売り切れだ。ぬかった!

15時31分、近鉄特急・伊勢志摩ライナーは出発。
デラックス席は、まぁこんなもんか。
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ビールを飲み飲みしていたら、いつの間にか鶴橋に到着。17時16分。
JR大阪環状線は混んでいる。

大阪駅の売店で、無事に赤福餅を購入できた。心置きなく、新快速で家路へ。

最後まで拙文にお付き合いくださり、ありがとうございました。






初詣はどこへ行こうかな? 小学校の修学旅行以来の伊勢神宮にしよう! ついでに人魚姫のモデル(ジュゴン)も観に行こう、というわけで平成30年最初の一泊二日の旅です。


【参考データ】
2018/1/7(日)
JR神戸線、大阪環状線経由
近鉄特急・伊勢志摩ライナー(普通席) 鶴橋9:13発~伊勢市10:54着

2018/1/8(月)
近鉄特急・伊勢志摩ライナー(デラックス席) 鳥羽15:31発~鶴橋17:16
JR大阪環状線、神戸線

宿泊先:鳥羽国際ホテル 潮路亭(1泊)



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伊勢神宮・内宮


■2018年1月7日(日) 伊勢市へ


5時45分起床、バスとJRを乗り継いで大阪駅へ。
あれ、新快速電車が途中で停車? 人身事故? 困るんですけど。

結局30分遅れで大阪駅へ到着。早めの電車に飛び乗って正解だった!
環状線に乗って鶴橋駅へ。ああ、JRと近鉄は目の前で連結されているんだな。乗り継ぎが楽ちんだ。
9時13分、近鉄特急・伊勢志摩ライナーはスムーズに発車。2時間弱の列車旅が始まる。
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……う~ん。車窓はいまひとつ。こりゃ読書に限るな。

定刻通り9時54分に伊勢市駅へ到着。

コインロッカーが満室なのは予想通り。駅を出て左手にある一時荷物預かり所へ向かう。一個500円なのは良いが、17時までに引き取らないといけない。いま思えば、+1000円で旅館・ホテルへの当日配達サービスを選択しておけばよかったと思う。


■伊勢神宮・外宮


11時15分、伊勢神宮・外宮へ向けて出発。外宮参道は良い感じ。店には後で寄ってみよう(と思うも、時間がなかったので寄れず、少し後悔)。
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で、なんだ、あの長蛇の行列は?
ほほう、外宮から内宮へ出向くシャトルバスの並び行列か。タクシーで行くつもりだから関係ないや。
実は2時間後にはこの苦行に参加することになるのだが。で、この苦行こそ大正解だとわかる!(後述)

外宮に到着。なるほど、正式には「豊受大新宮」というのか。
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まだ正月気分だからなのか、人の多いこと。
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第一鳥居を抜け、表参道をひたすら歩く。おっ、たまゆらが写ってる(違うか?)
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「内宮の天照大神の食事を司る神様」の神殿、「御正宮」へ到着。
内部は撮影禁止ときた。
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お賽銭だと? 大奮発して100円を放り投げた。もちろん多大なる御利益あるんだろうな?
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うん、神社は良いな。
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階段を昇りに上って「多賀宮」へ。御正殿が公的なお願いを聴いてくれる神殿なら、こちらは個人的なお願いを聴いてくれるという。
お賽銭100円。よろしくお願いします。
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参道を戻り、第二鳥居、第一鳥居で礼儀正しく一礼して、さて、内宮へ向かうことにするか。時刻は12時10分だ。
タクシー乗り場へ……来ない。おとなしくシャトルバス乗り場へ。バスチケットを購入し、おとなしく並ぶ。

バス会社が総力挙げてシャトルバスを運行してくれている。そんなに待たなくても大丈夫かな……?
結局、立ちんぼで40分も待たされ、ぼろいバスに押し込まれた形。

12時50分、内宮へ向けて出発。
で、途中の交通は「シャトルバス専用道路」に「シャトルバス専用車線」がきちんと用意され、渋滞知らずの運行が実現されていた。このあたり、素晴らしい。逆にそれ以外のタクシー、自家用車は恐ろしい渋滞に巻き込まれていた……。

結局、シャトルバスに乗って正解。感謝しないとね。


■伊勢神宮・内宮


13時15分、内宮へ到着。
宇治橋を見る。なんだ、この人混みは……。
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とりあえず昼食にしよう。「おかげ横丁」に入る。ここも人混みだ。
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適当な食堂へ。
伊勢名物「伊勢うどん」(そのまま)は醤油だれが効いて、実に美味だった。
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時刻は14時。さぁ、内宮へ!

宇治橋。こっちは右側通行なんだな。
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お神酒。
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手水場。左手、右手、口をすすぎ、左手、勺を洗う、と。
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第一鳥居
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御手洗場
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第二鳥居を抜け、神楽殿を見て……
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天照大御神の鎮座まします「皇大神宮・御正宮」へ到着。さすがに真正面からの参拝はあきらめ、右の方へ。

二拝二拍手一拝。お賽銭100円。
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うん、良い感じだ。「唯一神明造」というらしい。
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お伊勢さん、よかったな。

シャトルバスにて外宮へ戻り、16時に伊勢市駅へ到着。預け荷物を受け取り、鳥羽駅へ向かう。

16時37分伊勢市駅発、16時54分に鳥羽駅に到着。
なんと、普通電車は二両編成か。


■鳥羽国際ホテル 潮路亭


鳥羽駅1番出口の階段を下りると、各ホテルのシャトルバスが10台以上。
今夜のお宿のバスに乗車します。10分ほどで「鳥羽国際ホテル 潮路亭」に到着。

ここはロビーでお茶をいただきながらチェックインするんだ。

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伊勢の地ビール「神都麦酒」を3本も飲んでしまった。
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ここはこじんまりしたホテルで、部屋も清潔。温泉完備で食事も満点。
気に入ったぞ。

温泉はぬるくていただけない。逆に露天風呂は熱くて……とても、気持ち良い……。

夕食は「味覚」にした。伊勢海老が実に美味だった。アワビは、もう少し大きくしてくれても……。
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満腹で眠くなったところで、続きます。


僕の初の海外体験は1993年の韓国出張でした。これで海外の魅力に開眼し、はじめての海外旅行先にニューヨークを選び、一人で行ってきたのが懐かしいです。
1994年9月だから、まだテロに遭い倒壊する前の世界貿易センタービルは健在で、屋上にも上ってきました。
過去のホームページ(1999年頃)に掲載した旅行記を公開します。文章がとっても変ですが、そこは御愛嬌です。


[旅の恥は書き捨て]

壱.New Yorkの巻


何かに”BIG CHALLENGE!”したくなるような、極めてエネルギッシュな街です。まだ一度も訪れていないならば、ぜひ飛んでください。できれば、航空券のみ手配して、後はその日の気分でブラつく(IT'S DAYDREAM TRIP!)のが良いでしょう。
以下、自分の感想など参考までに。

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■The Metropolitan Museum of Art メトロポリタン美術館
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芸術にはトンと疎くても、まずはここへ足を運ぶ、と。New Yorkの定番。

巨大なCentral Parkのすぐそばにあるため、ジョギング中のオネーサンなんかが階段に座っていたりする。(思いがけず嬉しかったりする)
神戸市立博物館とは比べものにならない展示量。ゆったりとしたスペース
古今東西の武具も豊富。我国の戦国時代の甲冑は、欧米の子供に大人気。西洋の甲冑は特に豊富。じっくり鑑賞できた。
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美術品と言えば油絵。それこそ全作品の鑑賞は不可能ですが、見応えありました。やはり西洋ものでは、キリストの生誕を題材とした宗教画が圧倒的。
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「ソクラテスの死」
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インドの神「Krishna」

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ところ変われば品変わる。なるほどと思った。タイ、中国、インドネシア。東洋諸国のBuddha像は、基本的に同じ。だけど体格と装飾はみな違っていた。やはり”民族柄”が表れるのか? ビルマの王冠付きのbuddhaなんて初めて見た。

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アフリカ、中南米の神々なんて、初めてお目にかかったゾ。

太平洋諸国の文化は、我々のとはイササカ異なるようで。神像でも人像でも、異様にアレが強調されていた。参考までに、南太平洋の船(CROCODILE)などを。

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「NO FLASH」の貼紙を無視してバシバシフラッシュをたくのは、ご存じ我らが同胞。Don't FLASH! 案内の職員がとがめても、「エイゴ、ワカンナ~イ」ってか? 日本語で大きな声でキャーキャー笑うのもヤメテくれ。
う~ん。こうやって日本人の評価は悪くなるばかり、と。
あと、大和撫子3~4人のグループで、全員ジーンズにポロシャツ、バックパックの姿はヤメテくれ。横一列で歩くな~。
(注:2018年の時点だと、中国人観光客の姿ですね。)


ちょうど昼食時。MUSEUAM正面玄関前の階段から車道までの一帯を人間が群れていて、屋台が20mおき位に並んでいた。ホットドッグもハンバーガもあったが、せっかくだから別のものを食べようと。みると、オジサンや子供たちが美味そうに食べている。あれはなんぞや?
プレッツェルなるものを初めて口にしたが、一口で「もう、たくさんです」な味だった(泣)。


■Statue of Liberty 自由の女神

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やはり、NEW YORKと言えばここでしょう。USAの「顔」ですから。

女神像の鎮座する”Liberty Is.”へはフェリーで渡ります。約12分。景色が極めてグー!

女神像の中を上へ。”どうせなら冠までイケイケ”コースと、”時間が惜しいが、とりあえずは中へ”コースとがあります。前者は冠まで歩き、後者は像の台座(つまり女神の足下)の展示館巡りとなります。どうせなら、時間を裂いてもSUMMITへ!

長~いらせん階段が待ってます。最初は順調、やがて渋滞に巻き込まれます。
一方通行です ^^; 。しかも途中で急に細くなる! さらに頭が上の階段でこすれる! 体の大きなアメリカ人が、なぜこんな小さな階段にしたのか、いまもってわかりません。
それでもはりぼての中を歩くのは、なかなか楽しかったりします。
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5分の間に5m進む、長~い苦痛が報われる時がきます。やっと冠(展望台)です。

おい! 何でこんなに狭いんだ? 展望台は畳1枚分の広さです。とにかく、下界を見下ろしませう。年代物の窓枠がグーです。

下り階段は順調です。台座には女神像の歴史、アメリカ移民の歴史を展示したAmerican Museum of Immigration アメリカ移民博物館があります。せっかくです。ぜひ一巡を。

Liberty Is.からEllis Is.へはフェリーで約15分。ここにはEllis Island Immigration Museumがあり、この島が移民の受け入れ口だった頃の資料が建物ごと展示されています。
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中には各州の人口の推移、世界各地からの移民の歴史、あなたの祖先は?コーナーなどがあり、外には移民者の氏名の刻まれたプレートが光っています。我々日本人にはなじみが薄いものの、熱心に解説を読み、祖先探し(computerが置いてある)を家族でワイワイやっているアメリカ人を見る。嗚呼、歴史とは? 民族とは? なんて考えたりします。


■Manhattan walk


World Trade Center Building(Manhattanで最も高層の建造物)の売り物、屋上の展望台にはぜひ上りましょう。またしても行列を待つものの、専用エレベータで一気に最上階へ。さらにエスカレータで屋上へ。
ここから眼下を見下ろせば、この島を一望できます。意外に島の小さいことに気づいたり、アッパータウンの高層建築物の群れと、チャイナタウン、ソーホーあたりの違いなどがわかります。
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World Trade Center Buildingの2階には、TKTSがあります。ミュージカルの当日券がここで安く購入できます(約半額。cashのみ)。ただ、良い座席は期待できません。

小学校ではいろんな人種の子供たちが仲良く遊んでいました。

よく、NEW YORKの地下鉄は汚く、危ないと言われてきたが、実際に乗ってみるとそうでもなかったりする。各地下ホームには監視員らしき人物がいて、一定のエリアを見張っている。つまり、そこにいれば一応は安心と。これではオモシロクないので監視エリア外のホームの端まで行った。危険なし、と。おまけにホームも清潔。車両も、階段も ”beautiful”。
もしかして、悪い面が誇張されてきたのでは?

そう思いきや、甘かった。上記はあくまでアッパータウンでの話。China townの地下ホームは別世界。空き缶ゴロゴロ、ゴミうじゃうじゃ。しかも落書き天国ときた。この世に清掃人はいないってか? おまけに照明はうす暗く、不安になったりする。まあ、無事だったが。

地下鉄と言えば、こんなことも。南へ下る車両の中へ、大きな声を出す男が乗り込んできた。手にビラを持ち、胸のゼッケン(?)には”STOP the AIDS”。乗客一人一人に箱をさし回しながら寄付を募り歩く黒人。コインを入れる老婦人、無視する白人エリート風ビジネスマン。こんな光景、日本ではお目にかかれませんよね?

China townでは、ベトナム独特の三角帽を頭に乗せた人が多かった。もしかして、元難民? 一人、その帽子を被った異常に背の低い男を見た。戦争時、薬でやられた後遺症かも。それなら、自分をこんな目に遭わせた”敵”の国民となって暮らすのは、無情としか言いようがない。

UN本部ビルの前では、3人のグループがUN反対のデモをやっていた。警官はウヨウヨいたが、別に排除するそぶりも無かった。
米軍のハイチ侵攻の翌日、broadwayでは、米国を非難するビラを配る「個人」を何組も見かけた。<br>
自発的に、まず一人で行動を起こす。ここにAmerican Democracyの力強さを感じた。まず主張し、非難ではなく議論をもって話を詰める。ナァナァではなく、互いに議論しつくした上で、妥協しあう。
なるほど。我々の見習うべき点であり、うらやましく思う。

それにしても、世界各地のあらゆるものが入り混ざり、次々と新しいstyle(文化)が生まれるようです。歩くだけで体が活性化させられます。 本当!


■United Nations
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United Nations本部ビルはManhattan島の東の端、East Riv.に面した位置にあります。
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ちょうど、あの独特なクライスラービルを東へ500mばかり歩けばぶつかります。
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胸を張って進んだ正面GATEでは、武装警官が歓迎してくれました。「あっちだ、あっち!」 はいナ、北側の観光客用GATEから入ります。

個人で見学できる範囲は限られているので、ガイド付きツアーを利用すべき。20分おきに出発しますが、順番を待つこと約10分。15人のpartyで出発。英語ガイドでした。なお、日本語ガイド付きツアーもあると、リーフレットに書いてました。。。

ツアーでは総会議場、安全保障理事会議場、経済社会理事会議場などを見て回り、UNの存在意義などについて職員より説明を受けます。質疑、写真撮影もOK。但し、総会/理事会開催中は、その議場には入れてもらえません。

なお、外交官食堂は平日の昼食に限って一般客も利用可能です(11:30~14:00)。

ここでしか買えず、ここでしか出せない切手が地下のUN中央郵便局(及び土産物売場)で販売されています。これまた専用のハガキに貼り、ぜひ故郷に送りましょう。

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■MUSICAL! AMERICAN DREAM!

マチネ(昼の部)もやってますが、やはり夜でしょう、Musicalは。開幕までの間、欧米人はおおむね着飾ってアルコール片手に歓談してます(離れて見ていても、ゴージャス)。

服装に注意。カジュアルジャケットで非常に浮きました ^_^。(ま、このときは、まわりが年輩の人が多かったもんで) できれば、スーツ又はしっかりとしたジャケットを着用したいですね。

観劇券は、ツアー予約すれば通常2万円(ディナー付)。TKTSでは当日券が3千円~5千円。金がないならTKTS。タイムズスクエアのTKTSは夕刻異常に混むので、都合がつけば前述のWorld Trade Center Building 2階へ。


■MISS SAIGON [THE BROADWAY THEATRE]

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我国でも演っていましたが、いかんせん日本人ではねぇ。その点、こちらは白系、黒系米国人に加え、ベトナム系アメリカ人が出演。限りなく現実に近い劇になっています。
英語なんですが、ポイント的に比較的わかりやすいセリフのせいで、役者の感情がビンビン伝えられます。演出も素晴らしく、感情移入すればしめたもの。必ず泣けます。ハンカチ必携。


[あらすじ・勝手に注釈バージョン]
サイゴンの歓楽街。進駐してきた米国兵は、今日も娼婦と一日を終えます。娼婦仲間で"Miss Saigon"に選ばれたベトナム人少女 Kimは、米国青年Chrisと深い仲に。しかし、Chrisには婚約者=本国で待つEllenがいたのです。
(キム=ベトナム女性。本編の主人公)
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植民地支配を脱した、理想の新ベトナム建国に燃える青年Thuy。幼なじみのKimに言い寄ります。しかし彼女は言うのです。「あなたとは一緒になれないのよ。なぜなら」登場したのはChrisの息子。青年の去りゆく姿が、印象的でした。やがてKimの家で対決する二人の青年 - 国家を巡って、またKimを巡ってお互い譲れません。そしてベトナム人は、Kimの前から姿を消します。

後日、ベトナム軍将校としてThuyは現れます。自信に満ちた表情。軍服には多くの勲章。Kimに再度言い寄ります。長い問答の末、愛憎から子供を殺そうとする青年を、彼女は撃ちます。命を落とすシーンの青年将校の表情-これは実際に劇場で確かめて下さい。
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敗北必至の米国軍。有名なヘリコプターのシーン。超大国がアジアの小国、いや、ゲリラに敗れた-救いを求めて基地に詰め寄る群衆。彼らを見捨てて、米国は去ります。この国に大きな傷跡を残して。
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もう一つの大きな傷跡 - 米国に渡ったKim。彼女は、Chrisに婚約者(アメリカ人)がいることを初めて知ります。

彼女は悩みます。そして息子を前に、彼女はこう歌うのです。

AS LONG AS YOU CAN HAVE YOUR CHANCE
I SWEAR I'LL GIVE MY LIFE FOR YOU
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最後の瞬間がきました。Chrisと彼の妻に手を引かれ、Kimの元を離れる「わが息子」。そして彼女の選んだ道は……。
巷(ちまた)で論議の沸騰したKimの生きかた……。
ぜひ、劇場で確かめて下さい。彼女たちの人生を。そして、あなたの人生を。


(PS1)
Chrisの元上官の黒人兵(下士官?)は人権活動家に転じます。彼は訴えます。いま、ベトナムで難民となった子供たちを救えるのは、われわれ米国をおいて他にない、と。この時機、米国はいまだ黒人差別の渦中にあったにもかかわらず、勇敢に、です。
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(PS2)
共産色バリバリのベトナム。巨大なホー・チ・ミンの黄金像。指導者崇拝のデカ・ダンス。まるで北朝鮮を彷彿させる、異様な世界観。でも、55年前の日本を外から見たら、きっと同じように映ったに違いない。
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■LES MISERABLES 嗚呼、無情 [IMPERIAL THEATRE]

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ビクトル・ユゴーの大作。1830年の重々しい労役シーンから始まります。
貴族、民衆、それぞれの目標。それぞれの恋。それぞれの人生。コミカルなシーンも交え、大きなスケールで話が進みます。

圧巻は二つ。一つは戦闘シーンです。蜂起した民衆と貴族軍との間で戦われますが、やがて力つきた民衆は全滅します。子供の死にゆくさまが悲しいシーンです。
もう一つ。ジャン・バルジャンに命を救われた貴族。自分たちの社会と彼ら(民衆)の社会。彼は悩みます。解決策として彼が選んだ行動は、非常に哲学的なものでした。

「あっ」と思った演出。垂れ幕に映し出されたキャプションが印象的でした。「第1章  AD1830」等

すみません。セリフがよくわからず、詳しく書けないのです ^^;。(語学力の無さが悔やまれる)


■CRAZY FOR YOU [SHUBERT THEATRE]

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前2作とはうって変わり、肩の力を抜いて楽しめる上品なコメディです。都会で成功を夢見るも田舎に帰ってきた青年と、農業に明け暮れるPOWERFULな娘さん。田舎の陽気な”アメリカン・ライフ”。青年は、ある企画を村のみんなに提案します。そして成功-こんな物語です。
重ねてすみません。セリフが…… ^^;。でも、爆笑シーンは楽しめました。

(見た本数は少ないけど)個人的には、Miss Saigonがベストでした。もう一度見たいですねぇ。


(PS3)
夜の街とロシア人女性
「時間がない」 あわててタクシーに乗り込んだら、極上の美人が閉じかけのドアをこじ開けた。「ブロードウェイ?」「そうだけど」ニッコリされたから、こちらも笑顔を返すしかない。「乗り合いタクシーでも、まぁ、いいか」
金髪・青い目・白い肌。良いですね~。
「どこからきたの?」「日本から。きみは?」「ロシアよ」流暢な相手の英語に、カタコトでぎこちなく会話を続けた。……が。
「そこで止めて」あれ?「ありがとう」バタン
「男は利用されっぱなし。ここはああいうのが多いよ。
 New York is New York, ha ha ha ha!」
同じような光景を何度も見てきたんだろうなぁ、タクシーの運転手氏。

夜、ホテルからブロードウェイ劇場へ向かうまでの出来事。ちなみに、ここのタクシーは高額紙幣を渡すと「いま、ちょうどツリがない」とか何とか言ってボラレます。予め1ドル札を多数用意のこと!
b_way


長文ご拝読、ありがとうございました!



昔の拙い文章は赤面ものですね。どうもありがとうございました。


現代世界の成り立ちを追究すると、19世紀後半の帝国主義の時代にたどり着く。過去の土壌の中に、われわれが生きている世界の根源をたどる試みである(p1)。

・グローバルなシステムを形成する二つの世界、すなわち先進的世界と従属的世界(p25)の結合のありようが、豊かな支配者=貧しき非支配者から成る19世紀の世界を特徴づける。格差の拡大は、たとえば18世紀には欧州を凌駕していた中華帝国を後進国に追いやった。
・自由主義的立憲政治や民主主義を目指す制度的発展は、精神的道徳的改善を示す(p44)。
・19世紀最大の劇的な革新技術、すなわち強力な蒸気機関に牽引される鉄道と電信技術のもたらしたものを概観すると、確かに、前世紀とは隔世の感がある(p40)。
・帝国の時代の世界経済の特質。それは地理的基盤が拡大するとともに、英国独占だった商品経済は世紀を超えて多元化し、一方で金融・商船事業はますます英国のみが突出するに至った。まるで現在の米国の軍事力を見るようだ。技術革命と、それにともなう経営手法への科学的方法の採用、そして政治の漸進的民主化に伴う社会の変革がみられるなど、先進的世界の変化はすさまじいものがある(p72)。
・資本主義が存続して作り出すのは生産物ではない。貨幣である(p57)。
・帝国主義とは、競合・敵対する工業国家間の自然発生的副産物であり、一部の歴史家を惹き付けてきた「インド航路防衛のための」戦略的なものではないと明言する(p94~96)。
・この帝国主義の時代に、内政面では貴族の保守主義、あるいはブルジョワジーによる19世紀的な自由主義から、大衆を基盤とする国家像への変遷が見られた。そのための「伝統」の創生であり、各種記念日や戴冠式などの国家的行事がそれを支える構図。第四章「民主政治」では、支配体制への議会制民主主義の取り込みが完成する様相が記される。

内容は充実なるも、いかんせん、訳文が読みづらい。もう少し工夫してほしかった。

THE AGE OF EMPIRE 1875-1914 Ⅰ
帝国の時代1875-1914 Ⅰ
著者:E.J.Hobsbawm、野口健彦、野口照子(訳)、みすず書房・1993年1月発行
2018年1月14日読了
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帝国の時代 1――1875-1914
E.J.ホブズボーム
みすず書房
1993-01-09





原田マハさんの『たゆたえども沈まず』を読んで、ゴッホが気になっていた。
『郵便配達人ジョゼフ・ルーラン』が神戸にやってくるというではないか。これは観に行かないと!
(2018/1/6)

お気に入りを何点か。

■Washington Allston ワシントン・オールストン
『Moonlight 月光』(1819年)
月明かりに照射される幻想的な光景。影の向きに着目。この絵だけで一つの世界として構成されているような感覚を抱かせてくれる。

■Eugene Louis Boudin ルジェーヌ・ルイ・ブーダン
『Venice, Santa Maria della Salute from San Giorgio ヴェネツィア、サン・ジョルジョ島から見たサンタ・マイア・デッラ・サルーテ聖堂』
大気の表現が見事。コントラストに頼らず、あくまでも自然によりそったような。

■Vincent van Gogh フィンセント・ファン・ゴッホ
『Postman Joseph Roulin 郵便配達人ジョゼフ・ルーラン』
本展で最も印象的な作品。あごひげ、手の甲の年季の入った感触、そして制服の”誇り”といったものに着目したい。
冒険と文化的な刺激を求めて19世紀後半のヨーロッパを訪問したボストン人たちに、印象派とポスト印象派の作品はとりわけインパクトを与えたという。

■Attributed to Torii School 鳥居派
『Theater Signboard Depicting Scenes from the Play "Nishikigi Sakae Komachi" 絵看板 錦木栄小町』
活き活きと描かれた役者たち。いわゆる商業美術だが、数多く展示されていた日本美術、中国美術の中で特に興味を惹かれた作品が、実はこれだったりする。

芸術に触れるのは小さな非日常。空間とともに楽しむのが吉だな。

『ボストン美術館の至宝』展
神戸市立博物館は2月4日まで。
名古屋会場では2018年7月1日まで開催
http://boston2017-18.jp/

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帝国意識、それは肌の色に代表される「民族・人種差別意識」、他国支配を当然視する「大国主義的ナショナリズム」を軸とする。本書は、そのイギリス帝国に見られる特徴を多様なアングルから探る。

■イギリスの帝国意識(木畑洋一)
帝国意識の二つの要素、すなわち民族・人種差別意識と大国ナショナリズムを概観し、これらが結合したところに生じる「文明化の使命」感をイギリスと日本にみる。アジアの皇民化政策もこの一環であり、帝国支配正当化の機能を果たし続けた。第二次世界大戦後、植民地の早期独立または敗戦によって帝国が消滅し、それから数十年を経てもなお、両国に帝国意識が残存している様相が明らかにされる(p21)。

■コロニアル・ナショナリズムと「帝国意識」(山本正)
イギリスの植民地とされるアイルランドにも、北米植民地に対し、帝国の統治側であるという意識の存在したことが論ぜられる。なるほど、後発の植民者でありながら優位を占めるプロテスタントにとっては、アイルランドは白人移住地であり、イングランドとの一体性をもって他の帝国の支配者であるという二面性の意識が見られたことは興味深い。

■東インド会社とヘイリーベリー校(浅田實)
東インド会社によるインドのイギリス化(p118)。インド高等文官を輩出する教育機関、そして会社存続の意思として設立されたヘイリーベリー校の特質が論ぜられる。
ムガール帝国からの地方諸侯の離反と並立。これが18世紀以降、イギリス政府の思惑とは別に東インド会社が現地権力を興隆させてゆく要因の一つであり、会社社員によるあり余る富の収奪のはじまりであったという(p99)。まるで満洲を食い物にした関東軍の様相だな。

■ニューラディカルの帝国意識とアフリカ(竹内幸雄)
自由主義を前提とし、人道主義・博愛主義の流れが存在する帝国主義の諸形態(p123)が、イギリス流の帝国主義といえるのか? その是非の検証として、「帝国主義論」のホブソン、「西アフリカの旅」を著したメアリー・キングズリー、ベルギー王レオポルドの私有地「コンゴでの犯罪」を糾弾した若きジャーナリスト、モレル。本論はリベラルの先を行くニューラディカルの3人の活動を取り上げる。
ホブソンは民主主義と帝国主義の相容れないことを明確にする。またモレルらはドイツ、ベルギーら後発の過激な帝国主義を非難しつつも、先発の「健全な」イギリス「商業」帝国主義を擁護する立場にあることは、その時代に生きた人物の限界と言えようか。

■メアリ・ホールの植民地幻想(井野瀬久美惠)
1903年の旅行記「ある女性の旅-ケープからカイロへ」を中心に、白人女性のアフリカひとり人旅を検証する。
ケープ植民地、ベチュアナランド、南ローデシア。そして北ローデシアからドイツ領東アフリカ、ウガンダ・ケニアを経由してスーダン、エジプトを行く壮大な旅(p154)。女性ひとりとは誇張で、実際には40人近い現地人を引き連れての大名旅行だが、それでも、旅程中の部分的な短距離とはいえ、白人男性のエスコートもトマス・クック社のアレンジもなしに彼の地を行くというのは、当時としては(現代でも)画期的だったのだろう。
だがしかし、それはアフリカに植民地を有する大英帝国に裏打ちされた「安全性」であったことが結論付けられる(p164)。
礼儀正しい現地部族民の酋長も、すなわち帝国政策への協力者であり、その意味で、未踏の地を女性一人で踏破したことの幻想性が明らかとなる(p172)。

■植民地エリートの帝国意識とその克服(秋田茂)
帝都ロンドンへの留学とジェントルマンの真似事、南アフリカにおけるイギリス的生活者から反帝国主義者への変遷。世紀転換期のガンディーのイギリス帝国観を明らかにする。

他に、「シェイクスピアとロックが見た在英国人(平田雅博)」「生活文化の『イギリス化』と『大英帝国』の成立(川北稔)」「白人移民社会の形成と帝国意識(北川勝彦)」「イギリスの戦争と帝国意識(佐々木雄太)」「自治領化とコモンウェルス(旦裕介)」を収録。

大英帝国と帝国意識 支配の深層を探る
編著者:木畑洋一、ミネルヴァ書房・1998年12月発行
2017年12月30日読了
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近代ミステリーの原点、シャーリック・ホームズもの最後の長編小説。
危機を予告する暗号手紙を解読したホームズとワトソン。するとその場へ報じられたのは、地方の名士の惨殺事件だ。現場となったバールストン村へと出向く第一部では、ホームズの冷静な頭脳が意外な結論を導き出す。それにしてもバーカー氏とダグラス氏の友情は見事だ。
第二部はダグラス氏の手記によるアメリカでの物語。胸を突くようなどんでん返しが魅力的な、これだけで一つの探偵ものとなっている。
・溶鉱炉の白熱の炎を吐く鉱山、鉄の結束「自由民団」に半ば支配された谷あいの村、自由の国で司法組織の機能しない恐怖の谷。20年前のある出来事が、ロンドンの惨劇に結びつく。
・見えない強敵、モリアーティ教授。二人の天才の盤上での頭脳戦はすさまじい。

仲間をかばう「優しいうそ」、そして運命を自覚して抗い続けた男の潔さは美しい。ホームズとワトソンにとって辛い結末ではあるが、「決着」に向けての決意は揺るがない。

THE VALLEY OF FEAR
恐怖の谷
著者:Sir Arthur Conan Doule、延原謙(訳)、新潮社・1953年8月発行
2017年12月24日再読了
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恐怖の谷 (新潮文庫)
コナン・ドイル
新潮社
1953-08-07


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