横浜の開港より遅れること9年、それでも急激にハイカラな街として神戸が発展した理由は何か。それは居留地の外に設定された「雑居地」の存在に他ならない。本書は、欧米人と日本人が日常的にコンタクトし、その中で育まれていった「神戸のコーヒー」の歴史を味わうコンパクトな一冊となっている。
・ブラジル産でもコロンビア産でもなく、神戸にもたらされた最初のコーヒーは英領インド産だったとは意外だ(p12)。
・日本茶店とコーヒーの深い関係。同じ舶来品だから抵抗なく受け入れられたというわけだ(p14)。あと、日本茶を好んで飲んでいたアメリカ人が、日清・日露の戦争で手に入らなくなった影響によりコーヒー党に変わったことから、戦後の日本でもコーヒーが流行するに違いないと踏んだ先人がいたんだな(p74)。
・1927年の元町。大丸百貨店開業、すずらん通り、映画産業の隆盛にコーヒー店の相次ぐ開業……。さぞ活気にみちみちていたんだろうな。
・終戦後、そして阪神淡路大震災からの復興。神戸とコーヒーの深い関係は続く。
にしむら珈琲店、神戸凮月堂、フロインドリーブ、ユーハイム、ゴンチャロフ、伊藤グリル、オリエンタル・ホテル。元町、三宮、新開地、垂水の喫茶店とカフェの数々。ああ、歴史を識(し)ると、店巡りが楽しみになってくるぞ。
神戸とコーヒー 港からはじまる物語
監修:UCCコーヒー博物館、神戸新聞総合出版センター・2017年10月発行
2018年3月17日読了