2001年から2009年に発表された珠玉のエッセイ集。感性がビシビシと刺激される一冊だ。
過去を歴史として捉えること。その手段の一つが書物であるが、現在は、文字と書物が物質であった時代を超えてゆく転換期(p16)であり、やがて電子化されたデータを眺めるだけの時代がやってくる。長い目でみると、読書の意味付けも変わってゆくのかもしれない。図書館化する世界。それでも「人生には検索できないことがますます多い」(p25)。かたくなに印刷物をめくる手が、新しい発見をもたらすであろうことを期待せずにはいられない。
「希望を捨てずに、何でも書いておくことが大切」(p75)には勇気づけられた。
感性の道(p248)。文章も映像も音声もデータ化された時代の後に来るもの、それを著者はアナログ的な創造性であるとみている。すなわち、感性に直接訴える「ひとの手」による仕事の喜び。生涯芸術志向時代はもう来ているのかもしれない。
すべてがデータ化される時代には、感性こそが問われるのだ。