男ひとり旅の美学

33の国と地域、南極を含む七大陸を踏破! 海外旅行歴28回の「旅の恥は書き捨て」です。愛車BMW M3と読書感想文も。

2019年03月

僕も恥ずかしながら中学英語で海外旅行をしている身なので、本誌の特集は実にありがたい。
・タクシードライバー伊藤彰教さんの事例(p24)にあるように、一般的な話ではなく、自分のエピソードを混ぜると会話が続く。これは僕もロンドンのパブで経験した。特に失敗談と、〇〇は日本では~~だと話すと話も弾む。
・大坂なおみ、大谷翔平、錦織圭。「名選手の英語スピーチ講座」は大いに参考になる(p28)。"I"ではなく、相手あってのスピーチなんだな。
・TOEICスコアアップを果たしたビジネスパーソン500人のアンケートによる「最高の英語テキスト・英会話スクール」(p48)は必読。効果のあった/失敗した勉強法、役立ったテキスト、信頼している著者、等々。
・無理にネイティブに合わせて早く話しても無駄。「Do you speak English?」と馬鹿にされること請け合い(ロンドンで経験した)。それよりもゆっくりと丁寧に話し、かつ、ティモシー・ラングリーさんの言われる通り(p56)、「イントネーションとか、目に入ってくる情報」や「ボディランゲージや態度が大事」だと思う。
・「『ポケトーク』のみで会話は成立するか」(p62)は、やはりというか予想通りの結果。翻訳アプリを含めて、自分の英語力を補佐するツールとして扱うのが正解かな。

個人的には、積極的に、かつ丁寧に話しかければ何とかなると思う。ネイティブな英米人も、自分の英語レベルに合わせてスローかつベーシックな語彙を用いた会話に調整してくれるし、会話も弾む。(インド、ケニア等で体験した。)
中学英語でペラペラ喋るのは理想だが、丁寧にさえ話せば会話は続く。興味ある分野の語彙を増やせるよう努力しよう。
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休日の朝、急に会社に呼び出されて、雇い主からこう言われたらどうするだろう。
「今夜ニューヨークを発ってサンフランシスコへ向かい、そのまま世界を一周してくれないか」(p106)
30分の抗弁の後、鉄の意志を持った雇用主に折れて、文芸者であるエリザベス・ビズランド嬢はあわただしく出発する。まったく面識のない新聞記者のネリー・ブライ嬢がニューヨークから東へ向けて出発した、その日の出来事である。まぁ、ヴェルヌの「八十日間世界一周」のフォッグ卿の付き人、ジャン=パスパルトゥー氏も同じようなシチュエーションではあったのだが。
本書は、最新の交通機関=文明の利器の象徴である蒸気船、蒸気鉄道を利用して、一人は東回り、もう一人は西回りの経路により、1889年に八十日以内での世界一周に挑戦した二人のアメリカ人女性の旅路を克明に追う。
それにしてもだ。ネリー・ブライもエリザベス・ビズランドも、なんてアグレッシブで知的で魅力的な女性なんだ!
・ネリー・ブライの何がすごいって、トランクも着替えの服も持たず、ドレス一着(出発当日に誂えた!)とコートと帽子、荷物といえば手提げかばん一つ。たったこれだけの装備で世界一周旅行に飛び出したところだ。そして土産はシンガポールで御者から購入した「猿」ときた。当時の世論も度肝を抜かれている。
・男社会のアメリカ新聞業界で、腕一つで自分の地位を確保したネリー・ブライ。かたや雑誌コラムを担当し「自分の仕事を持った知的な生き方を、自身の力でつかみとろう」(p93)としていたエリザベス。二人のある意味貪欲な生き方は、同時代の女性を大いに勇気づけただろう。
・ジュール・ヴェルヌ(毎朝五時起床)の自宅で、世界一高名な作家と会見する栄誉を旅行者は与えられた。「自分の目でたしかめたものを小説に書く」(p195)姿勢をはじめ、老作家に感銘を受けるネリー・ブライ。「この世には、苦労を重ねず達成できることなど、なにひとつありはしない」(p199)
・エリザベスが横浜を散策する様子も興味深い(p230~)。
・ネリー・ブライによる日本人と中国人の評価は、まぁ妥当か(p386)。
・圧倒されるほど荒涼とした土地、アデンの描写が素晴らしい(14章)。
・ああ、太平洋航路の悪天候が、二人の最後の勝敗を決めてしまうのか。世知辛いぞ。
・"レースの勝者"の栄冠は驚くべきものとなった。到着地=出発地に足を踏み下ろした瞬間から、数万の群衆の歓声に囲まれ、花火は上がり、軍艦は祝砲を放ち、ニューヨーク市長の出迎えを受ける。大統領でさえこれほどの歓待は期待できないだろう(16章)。

だがしかし、"レースの勝者"の人生はたった1年で暗転する。社を追われ、講演旅行は打ち切られ、マスコミから酷評され、求愛者とてなく、病身に日銭を稼ぐ身となり、金満家と結婚し、国外逃亡し、最終的には雑誌のコラムニストとなる。一方で"レースの敗者"は訪問したイギリスで上流階級に仲間入りし、午後のサロンを愉しみ、幸せな結婚を成し遂げる。
それでも僕は、辛辣な運命と対峙してでも、歴史に永遠に名を残した"レースの勝者"に強いエールを送りたい。

Eighty Days : Nellie Bly and Elizabeth Bisland's history-making race around the world
ヴェルヌの「八十日間世界一周に挑む」 4万5千キロを競ったふたりの女性記者
著者:Mathew Goodman、金原瑞人・井上里(訳)、柏書房・2013年11月発行

'Kashmiris have been seeing conflict every day.We have never seen peace.'と記事にある。
私事だが、2007年夏にSrinagar、Kangan、Sonamargを個人でまわった際、ちょうど地震の痕跡が残されているところを通過した。
「(2005年の)地震は大変でしたね」と声を掛けたら、「はは、地震なんて、戦争に比べたらどうってことない」との返事が返ってきたことを鮮明に憶えている。スリナガル市内でも、たえず軍警察の小銃が市民を威嚇していた。インド側にしろ、パキスタン側にしろ、カシミールの住人にとって戦争は隣にあるってことだ。
そしてインド、パキスタンともに核兵器保有国である。

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The Guardian Weekly 8 MARCH 2019の特集は「Line of fire : India, Pakistan and the forever war in Kashmir」なので買ってみた。恥ずかしい英語力でさくっと読んでみる。
・インド軍による爆撃の2週間前、両国はかつてないほどの緊張をはらんでいた。
・2月26日にインド軍がパキスタン側カシミールを爆撃。27日はパキスタン空軍機がLine of controlを越境してインド空軍機と交戦し、これを撃墜。28日にインド軍パイロットを解放。3月1日~2日にかけて銃撃戦、インド政府によると6人の民間人と2人のパキスタン軍人が死亡した。
・スリナガルに住むムスリム系住人は、軍事行動こそ長年にわたる流血の惨事に終止符を打つことが出来ると信じている。
・インドのモディ首相のムスリム敵対政策が、パキスタンとの対話を困難にしている。
・2014年から2018年にかけて、カシミール地域での衝突による軍関係者、民間人の死者がどれだけ増加したか。数字は本誌の通りだが、明らかに悪化している。2018年は100人近くの民間人が犠牲になったのか。

1947年、イギリスの帝国主義的支配から分離独立して70年以上。世界がこれだけ進歩・一体化したのに、カシミール地区の人々にとって'Our last hope is war'なんて悲しすぎる。
パキスタン空軍機がインド空軍機を撃墜したことで「少し」注目されたカシミ-ル情勢。解決に至るのはいつの日なのか。

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1928年(昭和三年)発行の日本郵船『渡欧案内』と『欧州大陸旅行日程』を買ってみた。
当時の金満家が鼻高々に「ちょっと欧州迄」と言い放つ気分? いや、貧乏新進芸術家が身一つでパリへ渡る気分で眺めてみる。
B6サイズは携帯には便利だが、文字と地図が見にくい。やはりA4サイズくらいはないとなぁ。
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・ベデカーやマレー以外にまともな旅行案内書のなかった時代、邦文のガイドブックなど皆無。『渡欧案内』には乗船経路、使用船舶その航海日程と距離、乗船運賃、旅券、旅の服装・携帯品、乗客のための内地鉄道無料乗車券、寄港地案内、注意事項、保険案内等が細かく書かれ、旅行者にとっては必携品だったろう。
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・記述の半分を占めるは「寄港地案内」だ。上海、香港、シンガポール(マレー半島のゴム栽培は見る価値ありとある)、マラッカ、ペナン島、コロンボ、アラビア海、アデン、紅海、スエズ運河(カイロ観光)、ポートサイード、地中海、ナポリ、カプリ島、マルセーユ、ジブラルタルとビスケー湾、そしてロンドン。博物館などの観光地、ホテル案内、食事、歴史、気候、風習、現地通貨、郵便電信料金など、いま読んでも実に興味深い内容となっている。
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・巻末の航路図はみていて楽しい。
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・『欧州大陸旅行日程』は、ロンドンまたはマルセーユで下船した旅客が欧州各国を歴訪するための30日~150日での漫遊(と書いてある)日程について、合わせて8つのプランを示している。例えば30日間の場合だとロンドン発、ブリュッセル~ハーグ~アムステルダム~ベルリン~ローザンヌ~ミラノ~ヴェニス~フロレンス~ネープルス~ローマ~ミラノ~ベルン~ジュネーブ~パリと周り、ロンドンへ戻って船で帰国する。この場合の旅費は一等28ポンド、二等19ポンドとあるが、これだけじゃ心もとない。汽車の具体的な時間などは駅で訊けってことか。

当時は神戸からマルセーユまで42日、ロンドンまで50日かかる時代だ。豪華客船での優雅な船旅は、さぞかし良かったんだろうなぁ(一等船客、二等船客に限られる。貧乏新進芸術家なら三等・船底で地獄の旅か……)。

"HARRODS, A Selection from Harrods General Catalogue 1929"を買ってみた。1985年の復刻版だけど。
当時の新興中産階級になった気分でパラパラと眺めてみる。当時はパリとマンチェスターにも支店があったんだな。
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・宝石・宝飾(腕時計も含む)、置時計、銀器、食器、メガネ、光学機器、写真機・映写機・写真用品、絵画と道具、写真スタジオ、ピアノなどの楽器、蓄音機、ラジオ、文具、ファンシーグッズ、子供のおもちゃ、テーブルウェア、物置、大型の園芸用品、ミシン、ベビーカー、ソファー、チェストなどの大型家具、カーペット、ハウスリネン、香水、小型電気機器、食品、等々。なんでもありの世界。
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・さすがにファッション部門は充実しているが、ほとんどオーダーメイドのようだ。ランジェリーとコルセットのページは目の保養になる。興味深いのは、「レディ」「ナース制服」「メイド制服」とはっきり分かれていることだ。ヘアドレッシングサロンもある。
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・トランクとバッグは明確に分かれていたんだな。
・スポーツ&ゲーム用品では、ビリヤード台、ボートやショットガンまで販売されていたのか。
・自転車、自動二輪車……ハイヤーサービスもある。さすがに車は売っていないみたいだ。
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・建築&装飾部門って、浴槽、部屋の内装、…エステートオフィスなんてのもあるぞ。
・キリスト教関連の各種グッズも専門の部門として販売されているのが興味深い。
・鉄道と蒸気船の予約オフィス。世界中へのチケットを扱うとあるが、半ページの記載のみ。
・"FUNERAL DEPARTMENT"には霊柩車の写真あり。「外国ででも葬式をあげる」とある。
・極めつけは"World Wide Service"って、世界中のどこにでもハロッズのサービスを届けるとある。スゴイ規模なんだな。
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ロンドンのハロッズには2010年、2014年の訪英時に立ち寄ったが、まさか高級品を買うわけにもゆかず、結局は「Harrods手提げバッグ」を土産に買って帰っただけとなった。今度は他の何かを買って帰ろうと思う。

1913年のロンドン。イギリス人貴族男性と財産家の日本人女性の結婚式から物語は始まる。何不自由ない長い新婚旅行-フランス、エジプト、エンパイア・ルートを航海して日本まで-は幸せ一色であったが、ある事件を境にほころびが生じ……。
日英同盟の時代にありながら、それまで日本の「美しさ」を西欧に紹介してきた『蝶々夫人』『お菊さん』や小泉八雲の作品と違って、本作には「奇妙な黄色な顔をした小男達」「絵画の研究に来て、何もせずに暮らして居る様な背の低い黄色い人々」(p5)など、なかなか辛辣な表現が多く現れる。長崎芸者のNUDEには「不細工な、形の崩れた胎児」のようで「泥人形そっくり」 と手厳しい(p92)。日英同盟に与しない外交官作家による、あからさまに否定的な日本人の描写ってところか。
・主人公バアリントン大尉と藤波浅子の結婚式および披露宴の様子は興味深いし、企画・運営したエヴァリントン夫人のキャラもたっている。
・「(長崎では)凡ての旅館が娼家であり、あらゆる茶屋、料理屋が密会の場所なのである」(p80)「東京には何の尊厳もなかった。…蜘蛛のように電線を張った電柱が酔漢の様に突っ立っている雑然とした市である」(p171)って、ひどいぞ。
・新婚旅行先の日本で、友人の英国外交官レツギイの宿舎を訪問するバアリントン夫妻。通された居間で、暖炉と火鉢の間、ただ1枚の座布団の真ん中に日本の娘がただ一人。青玉色の着物に孔雀を縁取った銀色の帯。小柄な体躯と細く美しい手指。その夢幻的な態度と慇懃な米国式英語。Smith八重子嬢の登場シーンは印象的だ(p143)。
・バアリントン夫妻は八重子とレツギイとともに吉原へ見物に出向く。引手茶屋へ赴く娼婦たち=花魁の行列の描写はなかなかのものだ(p181)。「東は東、西は西だね!」(p185)とはキップリングの真似かな?
・日本に残された混血児=ユーラシアンの半ば放逐された運命とはいえ、第二の主人公ともいえる若きSmith八重子の性格と半生は壮絶だ(第15章)。
・和製英語「ハイカラ」の説明が面白い。訳すことのできぬほど深い、種々の意味のある語か(p167)。
・悲しいかな、1921年のイギリス人も「JAPジャップ」「ウサギ小屋」という言葉を使っていたんだとわかる(p300,321)。
・バアリントン大尉の災難。「公衆の目前に恬として恥じるところもなく広告さるる売春の事実を疑い、…彼女らの醜業によって贅沢に生活してゆく豚のような」(p183)人々に憎悪と軽蔑を抱く。「こんな賤しい残酷な職業をして財産を築き上げる畜生ども」(p185)を鞭打ちたいとも思う。だが英国貴族は知らなかったのだ。皮肉にも愛妻、浅子の実家、藤波家の職業こそ……。
・知らなくてよい秘密を知ることの功罪。無智でいることが幸福だと友人レツギイは諭す。それに対しバアリントンは「不正直」だと言い放つ(p359)。一方で、浅子は夫のことを「不誠実」と嘆く(p373)。この絶望的な思考の差よ。男と女、家と家との接合がいかに難しいか、まして国際結婚となれば、だ。

ときは1914年、グレート・ウォーの号砲は放たれた。バアリントン大尉は祖国へ帰る。残された藤波浅子は英国人気質と日本的束縛とに絡められ……。
ラスト、「それが最上のプロパガンダだ」の言葉には救われる。
1921年にイギリスで出版され大ベストセラーとなった本作は、現代かな遣いで翻訳・出版する価値が十分にあると思う。

なお、大阪大学の橋本順光准教授による「英国外交官の黄禍論小説:アシュトン=ガトキンの『キモノ』(1921)と裕仁親王の訪英」も興味深いので、urlを置きます。
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/61371/mgsl057_001.pdf

Kimono
きもの
著者:John Paris、若柳長清(訳)、京文社・1923年8月発行
2019年3月13日読了
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ジヨン・パリス
京文社
1923-01-01

レトロ感と現代性の両立。いや、華々しくて嬉しくなります。個人的には『売場迷宮』がお気に入り。
・20世紀初頭、海外との交易が盛んな日本のとある地方都市が舞台とある。神戸を思い浮かべながら読み進めます。
・華美なイラストと心地よいコミックが絡み合い、デパートを色づけてゆく。
・千紅会ポスターもなかなか。
和装と洋装の混淆した大正レトロ・昭和モダンの華やかな香りは最高です。続刊を待ち望みます。
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「3時間で行ける安らぎの非日常」 冒頭のグルメ特集で食欲をそそられ、次は故宮博物院の底知れぬ魅力と現代アートシーンを伝える誌面で芸術欲が刺激され、気が付けば、台湾新幹線を活用した旅の計画をはじめる自分がいる……。実にパワフルな特集です。

・安くてうまいは当たり前。究極の素材を生かした中華料理、海鮮居酒屋、火鍋、台湾茶、等々、台北では「一芸美食歩き」を愉しみたい。
・「歴史を学べる美食空間」 日本統治時代の建築物を大事に使ってくれているのは台湾くらいなもの。できれば台南にまで足を延ばして見物したい。
・他に、台湾式温泉、台湾アートの最前線、台湾の絶景、などなど。できれば、もう少し高級ホテルを紹介してほしかった。

ここ10年で急激に進化した台湾の観光シーン。関空からは2時間代で渡航できるのも大きな魅力。
僕は20年以上前に一度訪問したが、大陸とは違っていた。旧日本統治時代の文化が継承され、当地本来の文化と融合し、大陸にはない文化がはぐくまれた地、台湾。本誌を手にもって訪れるべし。
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自分、親、近しいものが死んでからでは遅い。僕も父の葬儀の後、何度も役所へ足を運んだことを記憶している。本書のようなガイドブックがあればなにかと安心だ。
・「あなたも、老親も、家族を失ったときの手続き」 役所への届け出はもちろんのこと、NHK、クレジットカード年会費など、契約解除しないとドンドン取られる金、金、金。「いま」その内容を把握するのが肝心だ。
・「死んだら必要な書類36」は期限(死後7日、1か月、2年、5年等)、書式記入例、手続き先など、スゴク助かりそうだ。
・死後の銀行口座の凍結だけではない。「銀行と面倒くさいことになる前にいまやっておくべきこと」の内容は衝撃だった。銀行が親の認知症を判定し、勝手に預金を封鎖するって、どうすれば良いのか。
・相続や生前贈与の細かい規則。知らなかったら罰則」って……。参考になる。「遺贈寄付」って良いなぁ。
・病気に関する「『ちょっと変だな』あなたはすでにこの病気です」「ここがその始まりだった。そして最期はこうなる」はコワイけど、気を付けよう。
老親のことだけではない。自分のこともきちんとしておかないと。
手軽に読めるムックなるも、内容は重要事項のオンパレードだ。イザというときのために、今できることをやっておこう。
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明治から戦前昭和までの間に、旅行手段(徒歩から鉄道)も旅行先(空間的な広がり)も大きく変化した。
本書は、明治・大正・昭和に日本で発行された旅行案内書を約600点におよぶカラー写真と解説文で紹介し、急速に変貌する近代日本の姿を浮かび上がらせる。眺めるだけでも楽しい一冊となっている。
・江戸時代中期より明治初期に各種発行された、徒歩旅行を前提とした道中記と名所図会。とりわけ図絵の豊富な名所図会は日本独特のスタイルとなる(p10)。たしかに、文章+地図のベデカーやマレーよりは楽しいかも。
・寛永4年(1851年:ロンドン万博の年)に発行された『淡路国名所図会』が昭和9年(1934年)になっても再版されていたのは驚きだ(p24)。
・江戸期の風景が残る日本橋。天秤棒を担ぐ物売りと洋装の人物、馬車が併存するなど、明治初期の名所図会の図版は楽しい(p24)。
・明治期の鉄道旅行案内書(鉄道路線図)を追ってゆくと、特に明治20年代に急速に路線の拡大したことがわかる。官設鉄道よりも私設鉄道のほうが多かったようだ(第3章)。
・大正期に鉄道院・鉄道省より発行された外国人向けの『An Official Guide to Eastern Asia』は日本、満州・朝鮮・シベリア、支那を紹介するものだが、完成度の高さがうかがえる。復刻版を販売してほしいくらいだ(第4章)。

個人的には「海上旅行と外地・植民地・外国の旅行案内書」のパートを興味深く読めた。
旅行案内書は実に多岐にわたるが、その系譜と内容の変遷をたどると、日本が急速に近代化する過程と、世界の距離が近くなる過程が輻輳する様相がよくわかる。歴史縦断的な旅行を追体験できた気分。

近代日本の旅行案内書図録
著者:荒山正彦、創元社・2018年5月発行
2019年3月7日読了
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近代日本の旅行案内書図録
荒山 正彦
創元社
2018-05-25


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