男ひとり旅の美学

33の国と地域、南極を含む七大陸を踏破! 海外旅行歴28回の「旅の恥は書き捨て」です。愛車BMW M3と読書感想文も。

2021年05月

3WAYブックシェルフ型スピーカー、SANSUI SZ-7L(コンポAZ7Lのセット品)。1995年4月から25年以上愛用してきたのだが、ウーハーコーンに小さな破れが現われたかと思うと崩れるように拡がり、リッチな再生音の中に「ビビリ」が混ざるようになった。これではまともに聴けません。
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寿命です。これまでどうもありがとう。

新しいスピーカーには、少し変わった形状の「ギターアコースティックスピーカー」、ONKYOのD-TK10をセレクトしました。
ウーハーは10cm径と小型だけど、キャビネットがマホガニーでできていて、箱そのものが鳴って音を響かせる仕組みらしい(通常のスピーカーは箱鳴りを抑制する)。

で、届きました。実はアニメ『tari tari』に登場した機種だったので、前から気になっていたのです。
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サイズはこんなにも小さい。
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で、これも新しいスピーカーケーブルZONOTONE 6NSP-Granster 5500αで接続します。
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いざ、聴かん!
「SONGS」より葉加瀬太郎『ロンディーノ』……うっとりとし、それでいて目の覚めるような響き!
「QUARTET Ⅲ」より加古隆『パリは燃えているか』……鍵盤を敲き切った空気音が聞こえてくる!(ようだ)。
「My Lost City」より久石譲『MY LOST CITY』……これは神様へのオマージュか!
「神様になった日」よりMANYO/麻枝准『夏凪ぎ -episode 2 piano ver.-』……ピアノとバイオリンが心地良く響いて、感無量です!
坂本真綾『卒業写真』……ああっ、しびれる歌声です!
早見沙織/東山奈央『ダイヤモンドの純度』……美しくも哀しい切なさ。ハーモニーの余韻が素晴らしい!
水樹奈々/Raychell『WOW WAR TONGHIT~時には起こせよムーヴメント~』……こういうのもいけそう!
楽器のみならずヴォーカルも想像以上の艶やかさ。買ってよかった!

で、このスピーカーを何でドライブしているのか? アキュフェーズのアンプ? ラックスマンの真空管パワーアンプ?
実は8年前に買った安価なレシーバー、ONKYO CR-N755だったりします(笑)。
今度はこっちを買い替えないと。マランツのプリメインがいいかなぁ?
新しい、選ぶ楽しみが出きました♪



僕は、本編にも登場する野上弥生子の長編『迷路』に続けて読み始めたのだが、力強く、趣のある女性文学の系譜が脈々と受け継がれていることを実感するとともに、意志を貫く人生こそが生きるに値すると学ばされたように思う。登場人物の多彩な点も本書の魅力だ。
・「眼の光はあくまで強い。強いのに澄んでいる」(『義憤』)。九州の貧しい漁村から激しい向学心を持って上京、女学校4年へ編入し、翌年には級長となるノエ。お嬢様育ちの平塚らいてう等と違って、伊藤ノエの、これはなんという生い立ちだろう! 彼女の執念に取りつかれたような努力はページから満ち溢れ、村山由佳さんの筆により、圧倒する「嵐」となって目の前に奔流した。
・『見えない檻』のラスト。意に添わぬ嫁入りのために故郷へ帰る当日の朝、「目の前が一面、絣の紺色で覆われた」(p142)って、辻潤のドラマティックな行動は素晴らしい! この瞬間がノエの最高の幸福の瞬間だったんだろうと思う。
・辻野枝、辻潤、大杉栄、堀保子、神近市子。三角関係ならぬ五角関係は『裏切り』『女ふたり』に修羅場となって現れる。「貧乏くさいなりをした小柄な女」野枝と「間の抜けた顔の案山子女」市子を前に、言い訳ならぬ自由恋愛理論を振りかざす大杉に対し、二人は醒めた視線を送るのだ。男と女の思考はかくも異なるのか(p372~374)。強烈な個性は強烈な個性とひかれあう。大杉とノエ。夫も捨てて子供も棄てて大杉のもとへ走った彼女の、さらなる精神的な高みへの飛躍はこうして始まった。
・「あたりをはばかって自分の意見さえ口にできないような、口にすればたちまち弾圧をうけるような、そんな世の中であっていいはずがない」(『行方不明』)には共感。
・陸軍憲兵。彼らはまさしく体制の犬。不幸な時代の事件とはいえ、あまりにも理不尽な国家の犯罪行為には怒りに震えざるをえない。「本来は国家権力の暴走を見張るべき新聞が、軍人どもの極悪非道な行為を庇い立てできるという、その神経がまったくわからない」(『終章 終わらない夏』)とはその通りだし、現代のマスコミはどうであろうか? せめて彼ら三人の魂に安らぎあらんことを。

伊藤野枝も大杉栄も一般に「アナキスト」と評されるが、この是非を含む言葉よりも、僕は「自由人」の称号を彼女たちに与えて称えたい。

風よ あらしよ
著者:村山由佳、集英社・2020年9月発行
2021年5月22日読了
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風よ あらしよ
村山 由佳
集英社
2020-09-25


『少女の友』『少女の国』『主婦之友』『婦女界』などの少女雑誌・婦人雑誌に掲載された高畠華宵の全盛期(1924~1931年頃)の表紙画・挿画を素材に、大正~昭和ヒト桁世代の女学生、町娘、モダン・ガールのおしゃれ事情、すなわち服飾・小物、ヘアスタイル、美容・メイク術、マナー、悩み事を俯瞰する一冊となっている。
・和服、洋服、帽子、バッグ、シューズのカタチ、色、柄、素材など、シーズンごとに流行は目まぐるしく変遷する。そして当時から雑誌媒体とデパートが女性ファッションの発信源であったことがわかる。
・和服と洋服が混在していたのもこの時代の特色だ。明治時代の日本髪は束髪に変わり、断髪に着物も先端的だ。パラソルを掲げてアスファルト道を颯爽と歩くキモノ女性(p29)……いいなぁ。
・「モダンガールの資格十カ条」(p18)が面白い。お汁粉よりもジンジャエールと各種カクテル、蓄音機はジャズ、ヴォーグなど外国の流行雑誌、ダンスホール、土曜日曜夜の銀ブラ。そして男を上手に操る、か。
・昭和初期には二重瞼が歓迎され、すでに整形手術(!)も行われていたという(p76)。女性の美への執念、おそるべし!
・「乙女のための抒情詩」(p108~)には女学生のポエムが多数掲載され、華宵の挿画とあいまって素晴らしい作品群となっている。僕は『月夜の円舞曲』が気に入った。
・大正期より注目されるに至った職業婦人のトピックが興味深い。丸の内オフィス街の通勤者の約一割が女性だったとは知らなかった(p116)。

高畠華宵の作品はどれも魅力的で、彼にインスピレーションを授かった女学生たちの瑞々しい感性もまた素晴らしい。
情勢が落ち着いたら弥生美術館を覗いてみようかな。

華宵のおしゃれ教室 麗し乙女のロマンチック・バイブル
弥生美術館・松本品子編、河出書房新社・2007年12月発行

僕は静止画中心だが、SONY ZV-1ホワイトのルックスに惹かれて、つい買ってしまった。
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・液晶モニタの開閉だけで電源on/offできるのは楽チン。
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・ホワイトボディに青のZeissロゴも映え、所有する満足感も高し。
・1インチセンサの写りは、小型ボディを思えば十分(大型テレビで観賞さえしなければ)。
・動画ボタンが別れており、スチル⇒動画⇒スチルなど、思うがままに撮影できる。面倒なモード切り替えは不要。大型内蔵マイクも十分な感触。ただし4K動画撮影時間は5分と短いな。
・愛機α7SⅢ(SEL35F14GM装着)、α6000(SEL20F28装着)と大きさを比較してみる。
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ポケッタブルでこんなに軽くて、瞳AFを含めて簡単に撮影できるのは本当に素晴らしい。今度、動画にもチャレンジしてみようかな?

いわゆるアカ学生だった菅野省三は東京帝國大学を2年で放逐された。豚箱めぐりの末に「お辞儀」をしての出所。1931年をピークとする世界恐慌のなか、大学を追われた知識人にまともな就職口などなく、いまは実家の伝手で、阿藤子爵家のしがない写字生としての毎日を送っている。狂信的な軍部の引き起こした二・二六事件を契機に、急速にファッショ化の度合いを強める日本社会。独伊への接近と、イベリア半島での激しい内戦に次の世界大戦の予感をはらみつつも、まだこの安定した社会が続くと信じ、それを変革しようとする意識は、もう省三にはない。言論の自由が奪われつつあるなか、彼は故郷の図書館を根城とし、ある歴史研究の計画を立てようとしていた。
有力政党政治家を父に持つ垂水家の令嬢、多津枝は省三の幼馴染。亡きイギリス人が父であった万里子はとぼけた感覚が周りと違っている。大学時代の仲間で新聞記者の木津に、研究室にこもる小田、桜田門外で水戸藩士に殺害された井伊大老の孫であり、俗世間から距離を置いて能に執着する老伯爵。妖艶な阿藤子爵夫人。登場人物の豊かさとその人物造形、そして激動の昭和10年代の舞台と相まって、まさに大河ドラマというにふさわしい作品だ。
・華族とブルジョア社会の描写を基本としつつ、江戸から引き継がれた旧態依然とした南九州の商家=省三の実家のありようや、つつましい生活を送る木津=下層中産階級の生活など、昭和初期の目の前に展開されるような描写は物語に深みを与える。
・外に女を作った木津を恨みつつ、それでも愛を失わず、元気に生まれてくるであろう息子のことを楽しみに病院からの駅までの田舎道を歩く木津の身重の妻、せつ。それだけに『夕雲』のラストは哀しすぎて、思わず目をそむけた(上p267)。看護師となり、左翼活動に身を投じた彼女の最期は壮絶だ(下『崖』)。
・実用化は戦後とはいえ、小説に描かれるほどテレビジョンの概念が浸透していたのは意外だ。上流階級に限られるが東京でメルセデス・ベンツやアルファ・ロメオを乗り回す描写といい、朝食のオーブントースターといい、想像以上に現代の生活基盤が浸透していたことがわかる。
・妖艶な阿藤子爵夫人の過去と息子、忠文の秘密。万里子の省三への思い。スタンダール『赤と黒』の逸話と絡み合って、特に下巻は興味深い展開を見せる。
・増田家の松子夫人のキャラクターは愛らしくて憎めない。物事を深く考えない頭や、鯖のような丸い眼に、ぽちゃぽちゃした手。いつも何かを口にし、丸々と太ったその姿は、しかし、下層階級を戦場に追いやって、自らは軽井沢に避難する無責任な特権階級の姿でもある。
・省三の実家は大分の造り酒屋であり、政治勢力を二分する伊東家との確執は伝統にまで昇華された。だが若い世代=慎吾と省三に育まれた緩やかな友情は、慎吾に悲劇的な進路を選択させる。
・序盤で女学校一年生だった万里子も二十を超え、結婚話を次々と断る日々。その胸の奥底に秘めた想いは、ある日突然の奔流となって彼女の頬を涙で濡らす。多津枝の深謀も効果を発揮し、シナ事変=日本の侵略戦争下の世相をしり目に、無事に結ばれる省三と万里子。だが新婚夫婦にも非人道的な赤紙は容赦ない。「生活のすべての消滅」(下p387)
・後半1/4は戦争文学の体裁となり、日本軍がいかにえげつない行為を中国大陸で働いたかが克明に描かれる。暴行、掠奪は思いのまま。役に立たなくなった現地人使役人は銃殺。小さな老婆を蹴り飛ばし、穴に隠れた若い女性に手りゅう弾を放り投げるなんて……。
・昭和10年代=1935年からの10年間。それは戦前のモダン都市文化が最高潮に花開くと同時に、日本版ファシズム=軍国主義によって日本精神が徐々に歪められ、蝕まれてゆく時代でもあった。その中にあって古来の精神=本当の日本文化に忠実であろうとする江島宗道老人伯爵の姿はすがすがしく映る。

良心的兵役拒否、あるいは脱走者には銃殺の運命が待っている。「なんのためにおきた戦争で、誰のためにたたかうのか、理由のわからない戦争で死んで行くのを悲しみ、いっそ腹がたち、めちゃくちゃに絶望しそうだ」(下p367)。この、慎吾のノートに残された言葉こそ、為政者を含む特権階級から庶民に強いられた戦争の本質を表している。
日本の勝利は狂信的な軍部と特権階級をますます増長させる。一方で敗戦は庶民を極限まで虐げ、他国軍隊による蹂躙が予想されるが、日本の新生が期待できる。戦地で葛藤する省三の選んだ道は……。せめて、せめて、残された万里子と二人の息子、真一に小さな幸あらんことを願う。

迷路(上)(下)
著者:野上弥生子、岩波書店・2006年11月発行
2021年5月1日読了
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迷路 上 (岩波文庫 緑 49-2)
野上 彌生子
岩波書店
1984-05-16


迷路 下 改版 (岩波文庫 緑 49-3)
野上 彌生子
岩波書店
1984-05-16





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