1851年の第一回ロンドン万国博覧会から1970年大阪万博まで、絵画や写真などの資料を通じて歴史を、その開催意義の変遷を振り返る一冊となっている。
・オランダからの「別段風説書」なる文書を通じて「エケレス国都府」での1851年万国博覧会の開催3か月後には、その様子が江戸幕府に伝えられていたのは驚きだ。鎖国といっても、特にアヘン戦争後は熱心に世界の情報収集に努めていたことがわかる。そして博覧会を通じ、日本は世界へのデビューを飾ることになる。
・19世紀後半~20世紀初頭のパリ、ウィーン、フィラデルフィア、シカゴの各万博への日本政府の力の入れようがありありと伝わってくる。これが欧州にジャポニスムを、アメリカに日本旋風を巻き超すのだから実におもしろい。
・個人的には、1910年にロンドンで開催された民間人主催の「日英博覧会」が興味深い。列強入りを果たし、世界最強国との唯一の軍事同盟を締結した日本にとっては最高の晴れ舞台だっただろう(p48)。
・1871年の京都博覧会で外国人向けに披露された「都踊り」が、現在まで続く春の風物詩になるのか。イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ紙に掲載された「都踊り」の図絵はとても興味深い(p51)。
・1895年の第四回内国勧業博覧会では美術館、工芸館などとともに平安神宮が創祀された。これらが文教地区、岡崎につながるのだな。併せて神戸の和田岬に水族館が作られたそうな(p64)。これは見てみたかった。
産業成果物=製品の展示から、文化芸術、そして民族に至るまで、博覧会は多様な姿をみせてきた。今後は都市、地球環境、未来への展望をどう見つめるかが問われているように思う。
2025年の大阪・関西万国博覧会が楽しみになってきたぞ。
博覧会の世紀 1851-1970
著者:橋爪紳也、乃村工藝社、青幻舎・2021年2月発行