幕末より文明の窓口として発展を遂げてきた函館・新潟・横浜・神戸・長崎。本書は、それら5つの都市の建築物、街並み、風俗を「モボ・モガ」をキーワードに蒐集した「モボ・モガを探せ!プロジェクト」の写真展覧会の内容を再構成した一冊である。
・函館、「谷タネさんの肖像」では昭和一桁の生々しい時代風景が垣間見られ、写真がここまで保管されていたことは実にありがたい(p24~)。
・横浜。外国人居留地、港の風景も良好ながら、ツェッペリン伯号を撮影した迫力ある写真が特筆ものだ(p71、76)。
・神戸の写真からは、横溢する活気を感じさせてくれる。海水浴にスキーに、六甲山でのスケート、バイク仲間。いまは廃墟となった真矢観光ホテルの在りし日の姿は貴重だ(p111、122)。
・1935年の16ミリフィルム『須磨から神戸港』(の写真)は感激ものだ(p133)。
「いかにして他者との関係性を築いて物語を構築するか、あるいは関わりの中から生まれる新たな意味こそが、アートなのだ」(p42)
モダンボーイ、モダンガールが都市を闊歩した1920年代は写真技術、複製技術が発達し、グラフ雑誌が興隆をみせた時期だ。写真館のみならず個人の写真家も増え、その一部は16ミリフィルムで動画の撮影に挑んだ。これら貴重な写真とフィルムが世紀を超えて大々的に蘇ることの意義は極めて大きいだろう。
一個人の写真が、時代を超越してアートに昇華する。継承される時代の記憶こそ貴重なるものだ。同様の展覧会が開催されることを切に望む。
In Search of Modern Boy-Modern Girl in 5 Port Cities
開港5都市モボ・モガを探せ! 函館・新潟・横浜・神戸・長崎
編者:モボ・モガを探せ!実行委員会、BankART1929・2012年5月発行