男ひとり旅の美学

33の国と地域、南極を含む七大陸を踏破! 海外旅行歴28回の「旅の恥は書き捨て」です。愛車BMW M3と読書感想文も。

2021年09月

最近はまっています、かげきしょうじょ!!
ジャケット/歌詞カードのイラストは斉木先生の描き下ろし。学園で戯れる7人の姿が実に良いです。
DISK1は劇伴集。軽快なリズムの『紅華歌劇団』からはじまり、『桜の下の邂逅』、心に刺さる『その涙は?』、コケティッシュな『安道先生と予科生』等、マーチからバラード、ホラー調まで44曲。『彩子』『暁也』など個人テーマ曲も。個人的には『未来のオトメ達』に一票です。
DISK2はボーカル曲メイン。校歌『桜吹雪舞うなかに』(バリエーション8曲!)は7人の個性が垣間見られて面白いですし、『彼の地へ』『My Sunset』(フルバージョン)『試練の時』も良いです。
『溢れる想い』はさらさと愛のハーモニーが素晴らしく、未発表曲のままなんてもったいない!

でも、しかし……、七海ひろきさんが熱唱される『愛を乞う歌』がすべてを持っていきます! 諏訪部順一さんver.もすごいです。本当にぜひ、ぜひ一聴を!

「宝塚」の斉藤恒芳さんが手がけられた楽曲はどれも素晴らしく「紅華ワールド」に存分に浸ることができます。まさに、さらさたち紅華乙女の「強く、正しく、美しい」歌と劇伴曲の集大成! しばらくはリピート再生決定です。

平凡な「中くらいの身分の生活」の幸福を説く父親に反発し、「世界を見なくてはどうしても気がすまない」ロビンソン・クロイツナーエル氏、略してクルーソー氏は「今の事情がどうの、先の結果がどうの、そういったことはいっさいお構いなしに」ロンドン行きの船に飛び乗った。1651年9月1日のことである。最初の航海は成功し、アフリカ沿岸での奴隷生活と逃亡、ブラジルでのプランテーション経営を経て、数年後、冒険家気どりの若者は再度アフリカへ向かい、難破する。
十数名の乗組員のうち生存者はただ一名、打ち上げられた海岸は、調べれば絶海の孤島、大型肉食獣や土人の姿は確認されず、ロビンソンは知恵を絞って一人で生き抜く生活を余儀なくされる。
・必要は発明の母。数か月をかけて住まいと簡易要塞を構築したのはもちろん、手斧を一人で研ぐための丸砥石を足で回す器械など、サバイバルのための創意工夫力を存分に発揮し、ロビンソンは無人島で暮らすための道具一切合切を自力で製作する。その様子は爽快ですらある。
・17世紀中庸のイギリス人なら宗教ベッタリかと思っていたが、実は違った。ロビンソンの独白(=著者の意思)によれば、地震こそ神の御業と考えはしたものの、平穏な生活の中で神を恐れることも感謝することもなく、遭難に遭って九死に一生を得た後も、何か「力」の存在をのみ感じる人物がそこにいる。そんな彼も魂のよりどころを求め「生きる喜びをすべて圧殺する罪の重荷から救われんこと」をひたすら神に祈るようになる。
・島に棲みついて15年。砂浜で「別の人間の裸足の跡」を発見したロビンソンの驚愕と混乱はいかほどに大きかったであろうか。そして18年目には「その海岸一帯に髑髏や手足やその他の人間の骨が散らばっているのを見た時の」恐怖を味わうのである(p905)。
・人の心は大きく揺れるもの。別の島からやってきた10人近くの土人の人食い儀式を目の当たりにし、また新たなヨーロッパの難破船を認めると、それまでの穏やかな生活に不安が生じ、島を出たいとの渇望が生じる。神への感謝との矛盾。この世のことわりを知ること=神に近づくことは罪悪なのだろうか。
・孤島に足を踏み入れて24年、「私の愛すべき蛮人フライデイ」(p940)との出会いは、ロビンソンの生活を一変させた。そして孤島からの脱出行がはじまる。
・35年間の孤島生活を終え、リスボンを経由してイギリスへの陸路の帰路、スペイン・フランス国境の雪の峠で300匹もの狼の襲撃を撃退する様子はまぁ、余興といったことろか。

「波乱多き生涯の、いわば摂理の織りなす禍福の人生模様」(p1016)は平穏の中での終焉を迎える……はずもなかった。新たな冒険生活への意欲! 数百年にわたって読み継がれてきた古典はやはり味わい深く、冒険ものの原点であることを再確認した。

THE LIFE AND STRANGE SURPRISING ADVENTURES OF ROBINSON CRUSOE
ロビンソン・クルーソー
著者:DANIEL DEFOR、平井正穂(訳)、集英社・1991年4月発行
集英社ギャラリー[世界の文学2] イギリスⅠ所収

旧版の単行本『スギハラ・ダラー』の帯に「これらの事実がこの小説を生んだ」と記された五つの事実が記されている。「①金融恐慌とテロを繋ぐ悪魔の連立方程式が存在する。②近未来を確実に言い当てる錬金術が、金融界に実在する。③世界の異変を傍受する『エシュロン』が機能していない。④杉原千畝は凄腕のインテリジェンス・オフィサーだった。⑤グローバリゼーションの起点はスギハラと神戸だった」……。
ナチス・ドイツの圧力に屈せずに離任の最後のときまでユダヤ人に命のビザを発行し続けた慈愛の人、チウネ・スギハラ。本書はそんな伝説とは一線を画す、戦前日本屈指の情報士官としての杉原千畝の側面に光を当て、二人の金融・先物取引の大物の半生を追う。
・ヒットラーとスターリンの歯牙にかけられたポーランドの古都クラコフからの脱出に成功したユダヤ少年アンドレイ・フリスクと、彼が神戸で邂逅した孤児の松山雷児。同じくクラコフから逃れた「亜麻色の髪の美少女」ソフィー。時代に翻弄されても覚悟を決めて生きてゆく男二人は神戸からアメリカ、上海へと渡り、運命を切り開き始める。
・「ジャンクフードを三食食べて暮らす未開」なアメリカ人と「漆にかぶれて股間のボールが二倍に膨れた」イギリス人(p161)。マイケルとスティーブンの秘匿電話でのやり取りは絶妙だが、小麦相場のちょっとした値動きから、シリアと北朝鮮、さらにはビルマの不穏な核取引を見つけ出すとは、英米の諜報能力の凄さには脱帽しかない(第七章)。そして「敵」の秘密会合場所、セイロン島へ乗り込んだスティーブンは、思いもかけない人物をそこに見出す。
・トア・ロードの写真館、老舗のベーカリーに銭湯、そして神戸新聞。地元民としてはこれらのキーワードがうれしい限り。
・「この世の中は不条理や」「俺に金さえあれば〇〇ーを救えたはずや。……」(p338)。ああ、人の行動原理は本当に尊い。
・「崇高な民主主義の理念を圧政で虐げられている人々に押し広げてゆく」(p343)かつて強烈な国際的非難を浴びたネオコンだが、この思想は永遠のものだろうし、いまこそ実行に移すべきものだ。

非情。三人の少年少女の旅路の結末を一言で表せばこうなる。そしてこれが運命の本質であり、希望への細い道でもある。
「第九章 ブナの森のモーゼ」そして最終章「第十章 ソフィー・リング」は、アンドレイと雷児の生涯を吹き飛ばすほどの力をもって物語を締めくくってくれる。巻末の佐藤優さんの解説(「事後預言の手法」に騙されない!)と併せて、ワールド・インテリジェンスの世界を存分にに楽しめた。
やはり、手嶋龍一さんはすごい。一級の作品はこうあるべし。

スギハラ・サバイバル
著者:手嶋龍一、小学館・2021年1月発行
2021年9月2日読了
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