事実に即して広く世界を見渡す(p4)。
本書は、視点を近隣諸国から遠くに置き、そこから見えてくる世界の実相と日本外交のあるべき姿をとらえようとする一冊であり、長年の著者の実績・実体験と相まって興味深く読ませてくれる。
停滞・沈下した平成の30年間を嘆いても仕方がない。いま、われわれにできることは何か。「日本ならではの国際貢献」とは何であるか。その実績と今後の指針が本書にはある。
・グルジア(ジョージア)、アルメニア、ウクライナ、タジキスタン。エジプト、ウガンダ、南スーダン、ザンビア、マラウイ。ブラジル、コロンビア、南太平洋諸国。そして東南アジア諸国。JICA理事長、あるいは国連大使として著者がなしえた信頼醸成と「その国の必要」に基づく「上から目線ではない」支援は、確実に日本への好感度を高めつつ、現地の人材を育成するものであり、長期的・国家的視点からどれほど有益であるかが本書から伝わってくる。
・日々、センセーショナルな、あるいは大国関係のニュースに翻弄されがちだが、小国に目を向けることで見えてくること、その重要性も理解できた。
・途上国支援で地道に実績を築き上げてきた日本。「信頼で世界をつなぐ」(JICAのヴィジョン)その姿に対し、強引ともいえる中国の「開発支援」の遣り口にどう対処するのか、あるいは、けん制するのか。難しいが克服すべき課題であるとわかる。
・「非西洋から近代化した歴史」と「西洋とは異なる途上国へのアプローチ」(p250)が日本外交の強みであり、民主主義的な国際協調体制を深化させる努力が求められる、か。

17章「『ソフト・パワー』の作り方」では、国民皆保険制度を議題とする国際会議での日本のリーダシップと著者の一日の行動が例示される。古くからの実績、確固たる組織と国際レベルの人材、財務の裏付け、トップの関与など「汗をかき、資金を出す」日本が努力によって作り出した『ソフト・パワー』の底力には感銘を受けた。勇ましい掛け声、自己顕示欲のための「血と汗」などいらない。これまでの日本らしい地道な貢献が世界中で評価されていることは実に誇らしいし、この路線を維持・拡大するべきだと思う。

世界地図を読み直す 協力と均衡の地政学
著者:北岡伸一、新潮社・2019年5月発行
2020年3月7日読了

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