いつのころからか天より降り出した桜の花弁、アマザクラ。数少ないアマザクラの降る町である九重町で、私、神屋敷ツバサは幼馴染である環木ヒヨリの秘密を知っていた。疎遠となっていた彼女との関係は、高校2年の初夏、紫々吹ルカの転校してきたことによって少しずつ、少しずつ変わってゆく。
・第Ⅰ章「空と君の秘密」の丁寧な進行には好感が持てる。そしてバイク少女のいきなりの問いかけ「アマザクラの秘密を知ってるな?」から、物語は大きく動き出す。
・カラオケボックスでの心の探り合い、過去のメールに発見するキーワード「峰山」、絶妙なタイミングでのルカからの電話。第Ⅱ章「花屑抱きしめて」の終盤から、物語は俄然盛り上がる。
・愛里。そう、大切な人のためなら、人は何でもできるんだな。
・フライさんの挿画がなんともいえない味を醸し出しています。ライトノベルの醍醐味。(ただしp192のイラストは? 3年前の出来事なら、中学校の制服のはずだが……。)

そして友情は、世界の色を塗り替える(第Ⅵ章「101個目の願い事」)。その色が「希望」につながれば、なお良いな。
ヒトを知り、痛みを知り、こころが谺(コダマ)する瞬間、少女は強くなる。ベタな展開といえなくもないが、心地良い読後感を得られた。

サクラの降る町
著者:小川晴央、イラスト:フライ、京都アニメーション・2020年5月発行