慶応時代に遡る外国人居留地の誕生から、モダンでハイカラな神戸の歴史は始まった。外国人によって「発見」・開拓された六甲山と海港に挟まれた風土は、自然と異国情緒豊かな都市文化を生み、それが生活に深く浸透し、150年の時を重ねてこんにちの神戸を育んできた。
本書はデザインの観点から、著者の膨大なコレクションをもとに40のテーマに沿って神戸の特徴を探る一冊となっている。
・欧米人だけでなく華僑、ユダヤ人、トルコ人、インド人など多様な人種と隣接する毎日。明治の曙からトア・ロードには英語と中国語が飛び交い、当たり前のように異国人の衣食住文化と接してきたコスモポリタンな神戸市民にとって、ミナトの船から次々と出現する新しい「舶来モノ」に興味を示すのは当たり前。洋風建築デザインの商館が林立した海岸沿いの街を闊歩し、東洋一とうたわれたオリエンタル・ホテルで舌鼓を打ち、世界中の商船の船員と盃を交わし……。いつしか進取の精神が育まれてゆく。
・世紀末のアール・ヌーヴォーから1920年代のアール・デコへ。当時のポストカードやパンフレットに描かれた神戸のデザインは、どれも美しい。旧居留地や、すずらん灯のともる元町商店街には英語看板が立ち並び、景観にもハイカラさが目立つ。
・滋賀と並んで、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの遺産の多いのも神戸の特徴か(34章)。

著者は警鐘を鳴らす。現在の神戸は、イメージ先行的な「神戸ブランド」に胡坐をかき「ミニ東京」への道を歩んでいないか、と。そうだ、文化はわれわれが誠意をもって育み、次代に継承していかねばならないのだな。「暮らしの中での自然な異国情緒」(p117)という神戸らしさを大切にしよう。

神戸レトロ コレクションの旅 デザインにみるモダン神戸
著者:石戸信也、神戸新聞総合出版センター・2008年11月発行
2020年7月24日読了
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