乙女の本棚シリーズの最新作は、待望のマツオヒロミさん! 一ページ目から受ける鮮烈な印象といったら……文豪の妖艶な文章が目の前に浮き上がるように迫る凄みがある。描き下ろしイラストは実に29点。これだけでも価値ある画集としても本書を楽しめる。
・浅草十二階の下の猥雑さ、パノラマ写真、深川の八幡。大正の東京で懶惰な生活を繰り返す若い男が求めるのは「現実をかけ離れた野蛮な夢幻的な空気」(p10)だ。その探求の行き着く先が女装であった。「秘密」を持ち歩く深夜の浅草の街。男は犯罪に付随して居る美しいロマンチックの匂い(p29)に次第に陶酔する。
・「……Arrested at last.……」 かつて上海行きの船中で弄んで捨て去った女に再会し、再びのランデヴーへ。すごく妖艶な女の表情は、マツオヒロミさんならでは(p46)。
・「夢の中の女」「秘密の女」Love Adventureの面白さ(p68)。子供時代に経験したような謎の世界に夢中になると、男には次なる欲が出る。
・「秘密」を暴くこと。それは夢の終わりを告げることである。

圧倒的な筆力に魅惑的な画力のコラボレーションは、実に99年の時を経て作品に新しい色彩をまとわせた。久しぶりに読書の興奮を味わえた一冊となった。

乙女の本棚
秘密
著者:谷崎潤一郎、マツオヒロミ、立東舎・2020年9月発行
2020年10月23日読了
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秘密 (立東舎 乙女の本棚)
マツオ ヒロミ
立東舎
2020-09-25