しきみさんの挿画が素晴らしく、谷崎の可憐な文章を読みたいのにページを繰る手が動かない。こんな理由でなかなか読書が進まないのは初めてだ。
・磊々(らいらい)、磑多(がいがい)、潺湲(せんかん)などの形容詞を多用し、場の雰囲気をさらに盛り上げる谷崎の手腕と幻想的なイラスト。その二つを見事に融合させる巧みな編集が、本書の魅力でもある。
・しきみさんのイラスト! たとえばp23の「彼の女」なんて、その魅力に吸い込まれそうだし、魔術師の「男性的の高雅と智慧と活発」「女性的の柔媚と繊細」(p60)があまねく表象された造形なんて惚れ惚れさせられる。実に良い。
・「人間界の女王になるより、魔の王国の奴隷」になる方が、はるかに幸福なこと(p65)。良いぞ。そして「私」と「彼の女」の選択は……。

圧倒的な筆力に魅惑的な画力のコラボレーションは、実に103年の時を経て作品に新しい色彩をまとわせた。存分に読書の興奮を味わえた一冊となった。

乙女の本棚
魔術師
著者:谷崎潤一郎、しきみ、立東舎・2020年12月発行
2020年12月13日読了
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魔術師 (立東舎 乙女の本棚)
しきみ
立東舎
2020-12-10