1900~1902年の風景写真、漱石にかかわった人物の写真(!)に肖像画、デパートの製品カタログ、当時の建築物と社会風俗の品々など、ワット氏の収集した膨大な資料に小解説が添えられ、稲垣足穂氏、恒松郁生氏の協力もあり、漱石留学時代のロンドンを追体験できる興味深い一冊となっている。
・ちょうど漱石の時代に、紳士の服装がシルクハット+フロックコートからソフト帽+スーツに変わり、乗合馬車を駆逐する勢いで自動車が広まりつつあったのか。そして1901年委テラコッタの外観を持つハロッズ百貨店が新装開店している。
・トラファルガー広場の噴水の彫刻が、現在のものと違っている。1900年当時はこんなだったのだな。
・200年を超える民主主義によって培われた公衆道徳の良さに漱石は驚いている。明治のことを想えばわかるような気がする。
・『味の素』で有名な池田菊苗氏とのロンドンでの邂逅が、ふさぎかけていた漱石の精神を活発に働かせたことがわかる。これを機会に漱石は系統だった、重みのある読書・研究にいそしむようになる。
交通機関を別として。ロンドンの街並みは100年前とほとんど変わらないという。ならば現地へ出向いて漱石の足跡を追体験して愉しむも良し、新たな発見に喜ぶも良し、だな。

漱石のロンドン風景
著者:出口保夫、アンドリュー・ワット、研究社出版・1985年8月発行
2020年12月29日読了
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漱石のロンドン風景 (中公文庫)
ワット,アンドリュー
中央公論社
1995-05T