神戸市垂水区・歌敷山は、明石海峡を雄大に見下ろす高台にある文教の薫り高い街である。山陽電鉄・霞ヶ丘駅より歩いてすぐの住宅地に、その小さな一軒家「絵葉書資料館」は存在する。明治後期から昭和にかけての東西の絵はがきを収集・展示する小さな博物館だが、絵はがき以外にもレトロ作品が収蔵され、たとえば明治時代の「滑稽新聞」や雑誌「少女時代」の現物を手にとって読むことができる。
本書は、同館の所有する膨大な絵葉書から、神戸・六甲ならびに近隣の地区を対象に、明治・大正・昭和に撮影された風景と人々をとらえた作品をピックアップしたものである。
・まだグラフ雑誌の存在しなかった1920年頃まで、観光名所、時事、女優等をデザインした絵葉書は「物言わぬ歴史の証言者」(館長挨拶)でもあり、いまとなっては、過ぎ去った時代の街と人の姿を探るのに欠かせないツールとなっている、
・神戸は居留地・海岸通(高速道路の高架がないから、絵になる!)、元町・栄町、神戸港、北野、灘・摩耶・六甲・有馬だけでなく、湊川・新開地、兵庫・和田岬、須磨・舞子まで。阪神地区(西宮、宝塚、伊丹、三田)、明石、加古川、高砂、姫路、但馬地方まで広く網羅されている。
・彩色絵葉書はテキストと併せて、当時の風俗を知る手がかりでもある。三ノ宮駅(現在の元町駅の東付近にあった)の周囲ものどかな住宅街であったとわかる。
・交通機関(市電、省線鉄道、私鉄、バス)の写真(絵葉書ではない)は附録の感覚だな。

通りを歩く人々、遠くまで見通せる街並みに、ポツンとそびえたつ大丸、そごう等の高層百貨店、優雅な六甲山ホテル、宝塚の植物園、のどかな移情閣の周辺道路(舞子)、明石の錦江橋など、現在では失われた光景、継承されたものなど、興味をもって鑑賞することができた。

絵葉書で見るタイムスリップ 明治・大正・昭和
絵葉書資料館・2019年10月発行
2021年6月26日読了
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絵葉書で見るタイムスリップ 神戸市ほか兵庫県編VOL.1  –明治・大正・昭和-  絵葉書資料館
株式会社 タイムロマン 絵葉書資料館
絵葉書資料館 タイムロマン
2019-10-01