祖母が入院していた、そして最期の夜を過ごした兵庫県の吉川病院では、外国人従業員の多いことに驚いた。車椅子に乗るもまだ元気の残っていた祖母を見舞うとき、そこで働く東南アジア系の女性を幾人も見かけた。看護に付くのではなく、食事の準備と配膳が主な仕事のようだった。いまでもそうだろう。
ハッキリ言って下働き。
顔つきからして出身地はフィリピンだろうか? インドネシアだろうか? 一時的な出稼ぎではあるのだろうけれど、その待遇は? 地位は? 社会保障は? 手厚く報われているとは思えないなぁ。
史上例を見ないほどに贅沢になった21世紀ニッポン。3K職に就く日本人は少なく、代わりに需要を満たすのは外国人である。冷徹な現実ではあるが、後ろめたい気持ちもある。
さてさてさて、本書では「となりの外国人」にスポットを当てつつ、現代日本の抱える様々な「外国人」問題が取り上げられます。
少子高齢化する日本と移民受け入れ問題、日本のフィールドで活躍する外国人スポーツ選手とタレント、外資系企業の経営者、世界中から非難を浴びても開き直った難民政策、合法的な、そしてイリーガルな外国人労働者、等々。
英字新聞編集部の筆によるだけに、抑えられた記述とされていますが、その内容は怒りすら憶える深刻なものでした。
たとえば、中小企業を救うべく政・官・財トライアングルの思惑が一致して制度化された「外国人技能研修制度」ですが、その実態は「文句を言わない安価な労働者の提供手段」でしかなく、実際に酷たらしく搾取される"研修生"の実態が静かに、しかし熱く暴かれています。
「彼らは研修生であり、労働者に非ず!」との法の建前から、タダ同然でいくらでも働かせる中国人、インドネシア人。パスポートも取り上げられ、所定の給料の8割も「必要経費」としてピンハネされ、日本人の嫌がる残業を押しつけられて! これでは反日感情が高まるのも無理ありませんネ。
ヘンな国、困った国ニッポン ドキュメント外国人
編著者:デイリー・ヨミウリ、中公新書クラレ、2002年10月発行
2006年3月22日読了
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