2012年頃の東京と仙台を舞台に、特殊能力を手にした兄と、その弟の物語が展開します。
冒頭から期待させてくれるのですが、何かを成し遂げようとする半ばで物語は終わります。
目に見えない絆、受け継がれた「何か」、流れに抗う"意思"が本作品の主題なんでしょうか?

現代日本の閉塞感と庶民の諦観、小さな希望が現れた奇跡への、何も考えない大衆の"ベクトル"の恐さ。永遠に変わることのない「日本人の習性」が見事に描かれています。

「消灯ですよー」 第一部のラストでも効果的に使用される、この何気ない言葉が印象に残りました。

魔王
著者:伊坂幸太郎、講談社、2005年10月発行
2006年4月12日読了