「南北問題」なる概念は、植民地体制の崩れた戦後になって先進国、特に西側にとっての新しい経済体制を構築する中で提唱された。経済発展を競り合う西側と東側、援助されるように見えながら、その実、置き去りにされた第三世界。非人道的なIMF、OPECとNIESの登場による「南南問題」の発展、と問題が多岐に渡って提起されます。

アフリカ諸国の貧困からの脱却、これは解決不可能なように思えます。一次産品に依存する産業構造は変わることは無い。「より弱い」立場の国民を抑圧する非民主的な国家元首とその政府官僚。時の為政者にとって、獲得した権力を手放すことはありえないし、その政権と結託した多国籍企業は、ひたすら利潤を目指すのみ。見て見ぬふりをする似非人権主義者(自己満足の権化!)の存在……。

南側の諸国では、いまでも「国民国家」より「民族・部族」の紐帯が強いように思えます。
そもそも、西欧式の国民国家を無理に維持する必要性はどこにあるのか? 特に旧宗主国の残した幾何学的な国境(無理な線引き!)を維持するために人命が失われ、モノカルチャー経済から抜け出すのにも困難な現実を顧みると、思い切って数カ国・地域による連邦制を目指すべきではないのか?
すぐには無理でも、国家間統合へと進む世界の趨勢を考えると、決して無理な話ではないはず。

南北・南南問題
著者:室井義雄、山川出版社・1997年7月発行
2006年5月3日読了