2002年に一方的に宣言された、アメリカのことだけを考えた米国の新戦略=ブッシュ・ドクトリン。そして、国連での手続きをボイコットして強行された2003年のイラク戦争。史上最強の軍事力を背景に遂行される"21世紀初頭のアメリカの行動"が、中東諸国と世界にどのような影響を与え、必然的に失敗するであろうことが解説されます。

軍事力に裏打ちされた"帝国主義への誘惑"。かつて19世紀の欧州が推進した「啓蒙主義」政策は、その歴史的な拡張志向と合わさり、21世紀の米国によって本格的に推進されつつあること、しかし一国の価値観を押しつけるには力不足であり、米国の孤立する可能性すら現実味を帯びる、と。
一方で、テロ組織はアラブ・イスラム諸国の理解を得られず衰退の道をたどること、現在の頻発するテロは、その最期の足掻きであることが解説されます。

金融・仲介サービス業等で成功したカタール等を除き、中東の社会・経済状態は深刻です。エジプトですら食料輸入率が80%を超え、食料・水不足に悩まされている……。
皮肉にも、医療技術の発達(死亡率減少)が急激な人口増加をもたらし、それが一人当たりGDPを年々悪化させました。たとえばサウジアラビアの場合、石油で潤う豪勢な生活を楽しむ8000人の王族以外は、衛生的な住居の確保すら困難なほど貧窮しているという……。サウジからイラクへ米軍基地の移転が完了した暁には、サウジの独裁政治体制も、転覆させられるのは間違いありませんね。

それにしても、上空5,000mの無人偵察機から発射・誘導される対戦車ミサイルと、ステルス爆撃機B2による"大量破壊兵器"の投射による地上殲滅戦……。従来の戦車戦等が急速に時代遅れにされる感じがします。

アメリカのグローバル化戦略
著者:福島清彦、講談社・2003年7月発行
2006年9月4日読了