「イラク侵攻反対」を掲げた朝日新聞記者として、クウェートからイラクへ侵攻した米海兵隊の一中隊と寝起きを共にし、見て、聞いて、感じたことが率直に記録されます。
自分は、「どうせ大新聞社のエリート記者による"米軍ヨイショ"のオンパレードだろ? 最初は格好つけて否定しても、いずれそうなるんだから」との先入観を抱いてページを開いたのですが、やがて訂正せざるを得なくなりました。
たとえ社命で派遣されたとはいえ、中立であるべきジャーナリストの使命感を強固に保ちつつ、自分の命を守ってくれ、運命をともにする「米兵」へ感情移入し、肩入れする情念に悩む姿が惜しげもなく開陳されます。「米軍のプロパガンダ機関」となりうる危険を承知で、報道の使命をどのように護るのか……。
(著者も明記している通り、積極的に戦争を支持した読売新聞と産経新聞の従軍が認められず、表だって非難していた朝日新聞が海兵隊への従軍を認められたことは、興味深いものがあります。すなわち米軍の世論調査の手段として。)

しかし、米軍側の視点で著述されるのは、どのように意識していてもやむを得ないのでしょう。米国の一方的な理屈で強行され、「理不尽に侵攻され、無慈悲に財産を奪われ、無碍に命を奪われた」イラク人、我々と変わらない一般民衆の苦悩が公平に報道されないことも、この世に米国に対抗できる勢力が存在しない以上、やむを得ないのでしょうか?

イラク戦争従軍記
著者:野嶋剛、朝日新聞社・2003年6月発行
2006年10月7日読了