2006年3月の米国防総省の報告書に「中国がアメリカを攻撃する能力を持った」と明記され、太平洋における米軍"トランスフォーメーション"が、明らかに中国軍を意識して編成されていること、すでに南米、中央アジア、中東、アフリカ大陸で米中の「冷戦」が始まったことが、著者の豊富な人脈からの情報と重要人物へのインタビューによって示されます。
しかし、この新「冷戦」は米ソ間のそれと異なり、イデオロギーではなく国益を巡る争いであることが大きな違いである、と。何より看過できないのは、日本はアメリカによって積極的に「護られない」ことです。たとえ尖閣諸島が中国軍によって占領されても、日本が積極的に奪回を試みない限り、米国は動かない。この冷徹な「近い将来」が本書に記されます。
北朝鮮・韓国はもちろん、政治的・軍事的圧力により、すでに東南アジア諸国は「親中国」と成り果てたこと。日本・米国と共同歩調をとれる民主主義国家はオーストラリ、ニュージーランド、台湾を残すのみとは……。

先日2006年の11月に米国で行われた中間選挙では、勢いに乗る民主党が勝ちました。ヒラリークリントン上院議員をはじめ決して魅力的な政策があるわけでなく「イラク戦争は失敗」の1点だけが争点となり、この結果です。(それでも、どこぞの国の「郵政民営化」選挙ショーよりマシですが。)
ブッシュ政権中枢、具体的にはチェイニー副大統領に代表される保守強行派路線の事実上の敗退であり、その「顔」ラムズフェルド氏は更迭されることが決まりました。
さて2008年の大統領選挙で民主党政権が誕生するとしましょう。クリントン大統領時代の「日本は素通り、中国は戦略的パートナー」世界が再現するわけで、これは我々日本人にとってはありがたくない状況です。中国は徹底した「日本陥れ」キャンペーンを世界に対して行うでしょうし、弱々しい日本の政財界に対する「親中国化、見返り付き取り込み」戦略を実行することでしょう。そのうち国会ではなく、テレビ番組で国民への刷り込みを謀る先生が現れるやもしれません。「冷たいアメリカではなく、母なる中国と同盟を結ぼう」なんて具合で。気をつけないと。

米中冷戦の始まりを知らない日本人
著者:日高義樹、徳間書店・2006年6月発行
2006年11月12日読了