工業生産のみならず、教育も思想も、そして芸術さえもが中央集権化した時代――20世紀。ジュール・ヴェルヌの描く、もう一つの1963年のフランスがここにある。
1863年に脱稿するも出版の日の目を見ず、ヴェルヌ没後86年たって発見された作品。
さすがSFの父、ヴェルヌ。当時としては驚異的な洞察力で、今日のモータリゼーション、電灯に代表される科学技術の発展のみならず、「それがもたたらす影響」を鋭く描いている。(さすがに原子力と世界大戦には想像力が至らなかった様子。)
もはや芸術家は存在せず、銀行家と科学技術者が闊歩する世界。19世紀の偉大な作家は忘れ去られ(ユゴーやデュマが絶版!)、大学高校の人文学科が廃止となった世界。
人間は科学技術のために働く存在であり、家族はバラバラに生活し、誰もそれを不思議と思わない世界……。
文学に生きることを決意した主人公のミシェル(ヴェルヌの実の息子と同名だ)の運命は、より悲惨な方向へ……。
それにしても、この作品が書かれたのは1863年。EDO ERAの日本は文久三年。隔世の感があるなぁ。

PARIS AU XXe SIECLE
二十世紀のパリ
著者:ジュール・ヴェルヌ、榊原晃三、集英社・1995年3月発行
2007年1月27日読了